ENW Lab. ENWラボ
「種にこだわる」~F1種と固定種・在来種(エアルーム)~
~このシリーズでは、日々の生活で実践できる「食」にまつわるアクションをご紹介します~
野菜を買うとき、どんなことを気にするでしょうか? 産地? 農薬使用の有無? 値段や大きさ?
「種」にもこだわっている、という人は、もしかすると100人に1人もいないかもしれませんが、どんな種から育った野菜なのかを意識すると、野菜を見る目が変わってきます。
・・・・・・・・・・・・・・・
【アクション No.1】種の現状や問題について調べてみる
【アクション No.2】固定種(在来種)の野菜を食べてみる
【アクション No.3】固定種(在来種)の野菜を育ててみる
【アクション No.4】近所のお店に固定種(在来種)の種を扱ってくれるように働きかける
【アクション No.5】自分の住む地域で育てられてきた固定種(在来種)について調べてみる
【アクション No.6】自分の住む地域で固定種(在来種)の種を採り継いできた人を探し、話を聞いてみる
【アクション No.7】自分の住む地域で途絶えそうになった固定種(在来種)を育てて守っていく
【アクション No.8】固定種(在来種)の種の交換会に参加する(あるいは開催する)
・・・・・・・・・・・・・・・
【アクション No.1】種の現状や問題について調べてみる
お店で販売されている野菜のラベルなどに「在来種(固定種)」という表記を見かけたことはありますか? スーパーで積み上がった野菜の出荷用段ボールに「F1」と書かれていることもあります(一般的なスーパーで出回っている野菜のほとんどはF1種です)。
F1種とは、人為的につくられた一代限りの雑種のことです。系統の異なる野菜を掛け合わせると、一代目のときだけに現れる「雑種強勢」という現象により、生育が旺盛になったり収量が増加したりします。
どうしてこれほどF1種が主流になったかというと、大規模生産を行う上で効率がいいからです。人工的に開発したF1種は、形や大きさ、見た目などの揃った野菜を画一的に生産でき、収穫時期も揃うという特徴があります。輸送時に傷みにくいように、野菜の皮をごつくする、といった流通の都合による操作も可能です。
一見、農業生産の進歩に思えるかもしれませんが、F1種をつくる際、突然変異でおしべが正常に機能しなくなり、本来なら子孫を残せない種をかけ合わせるなど、不自然な手法で開発された野菜を食べ続けて大丈夫なのか、と疑問を呈する声もあります。
毎日のように食べる野菜がどのような種から育っているのか、普段はほとんど気にしないかもしれませんが、改めて調べてみるといろいろな発見があり、野菜を見る目も変わってきます。種の問題や固定種(在来種)の基本的なことを知るには、『タネが危ない』(野口勲 著)という本がおすすめです。『自然栽培 vol.4 ~タネの秘密』や『古来種野菜を食べてください。』(高橋一也 著)にも種のことがわかりやすく書かれています。「よみがえりのレシピ」という映画には、在来種の野菜を大事にし、その味を引き出す料理人や、山形県内の在来作物の研究や保護活動を行ってきた教授、在来野菜を自家採種して代々育ててきた農家さんたちが登場し、畑や作物の美しい映像を楽しみながら学ぶことができます。
【アクション No.2】固定種(在来種)の野菜を食べてみる
大量に生産し、大量に流通させるにはF1種はたしかに便利かもしれませんが、農家の方たちが自分で育てた野菜の中から選りすぐって何世代も種を採り継いできた固定種(在来種)のほうが味が濃くて風味がいい、という意見をよく見聞きします。
論より試食。固定種(在来種)の野菜を食べたことのない方は、一度試してみてはどうでしょうか? 一般的なスーパーや八百屋などでは、F1種の野菜がほとんどなので、まずは、固定種(在来種)の野菜を扱っているお店を探す必要があります。たとえば、東京や横浜に店舗のある「ナチュラルハーモニー」では、固定種(在来種)の野菜を積極的に取り扱っていて、商品に固定種・自家採種・F1の表記がされています。固定種(在来種)の野菜を宅配してもらうことも可能で、たとえば、「旅する八百屋 青果ミコト屋」(横浜)、「warmerwarmer.net」(東京)、「大和ファーム」(山梨県)、「ナチュラル・ハーモニックピュアリィ」(熊本)などがあります。他にも買えるところはいろいろありますので、探してみると、ご自宅の近隣でも買えるところが見つかるかもしれません。
【アクション No.3】固定種(在来種)の野菜を育ててみる
固定種(在来種)は家庭菜園に向いているとも言われています。
固定種(在来種)の野菜は、F1種と違って生育にばらつきがあります。自宅で食べるには、一度に収穫する必要がなく、長期間にわたって収穫できるので、このことがむしろメリットになります。また、遺伝的な多様性があるため、病虫害が発生しても全滅しにくいとも言われています。
固定種(在来種)とF1種の野菜の育ち方や風味などを比較してみるのも面白いかもしれません。
【アクション No.4】近所のお店に固定種(在来種)の種を扱ってくれるように働きかける
固定種(在来種)の種は、「野口のタネ」(野口種苗研究所)、「たねの森」、「光郷城 畑懐」などで購入することができます。
大手のホームセンターなどでは、F1の種が圧倒的に多いですが、よく探すと固定種(在来種)も見つかります。「~交配」と書かれているのはF1種ですが、値段や品番などが書かれた表示に「固定」などと表記されていることがあります。固定種(在来種)の野菜を広めていくためには、お店に固定種(在来種)の種の扱いを増やしてくれるようにリクエストしてみるのもいいかもしれません。
【アクション No.5】自分の住む地域で育てられてきた固定種(在来種)について調べてみる
恵泉女学園大学教授の藤田智教授によると、1980年には1214種あった日本の伝統野菜(固定種、在来種)が、2002年にはその半分以下に減少したそうです。
固定種(在来種)の野菜は、誰かが育てて種を採り継いでいかないと、失われてしまうおそれがあります。育てる人が少なくなり、今まさに消えかかっている種もあることでしょう。自分の住む地域で育てられてきた固定種(在来種)の野菜を調べてみると面白いかもしれません。「地域の入れ物」というウェブサイトで、都道府県別の伝統野菜を一覧で紹介してくれていて、参考になります。
【アクション No.6】自分の住む地域で固定種(在来種)の種を採り継いできた人を探し、話を聞いてみる
そうした情報を調べてみるだけにとどまらず、実際に育てている人を探し、話を聞いてみるもの面白そうです。
F1種が市場を席捲するなか、種を代々採り継いできたのはなぜなのか、どういう想いで在来野菜を育ててきたのかなど、直接話を伺うことで、種を採り継いでいくとはどういうことなのかについて、理解が深まります。
【アクション No.7】自分の住む地域で途絶えそうになった固定種(在来種)を育てて守っていく
最近では、固定種(在来種)の大切さが見直され、それらを守ったり広めていったり、といった動きが全国各地で見られます。自分の住む地域で絶えかけた固定種(在来種)を見つけて自分でも育て、種を採り継いで守っていけば、F1種を育てるのとはまた違ったやりがいを感じられるのではないでしょうか。
自分の住む地域で昔から育てられてきたの在来種(固定種)を育てていくほかに、気候のよく似た別の地域で育てられてきた在来種(固定種)を育ててみるのも面白いかもしれません。
【アクション No.8】固定種(在来種)の種の交換会に参加する(あるいは開催する)
固定種(在来種)を守っていくためには、自分一人だけでなく、いろんな人と協力したり情報交換したりすることも大事です。固定種(在来種)の種を交換したり種についておしゃべりや意見交換を行ったりする会があちこちで開かれているので、参加してみると学びがあるかもしれません。「たねの森」のウェブサイトでは、全国各地で開催される種の交換会の予定が掲載されています。
もし近隣で開かれていなければ、自分で主催してみるのはいかがでしょう? きっと、種を大事にする仲間にたくさん出会えることでしょう。
【ライター紹介】
硲 允(Makoto Hazama)
https://hazamamakoto.blogspot.com/