【波を起こす】LGBTs×気候変動 地球環境と社会課題の解決を目指して

2025 / 11 / 5 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

田附さんプロフィール写真

エコネットワークス(ENW)は2024年、「Foster Team Sustainability together, everywhere.」というパーパスを定めました。この一文には、「一人から始まる思いを起点に意思のある仲間同士がつながり、社会に変化の波を起こしていきたい」という思いが込められています。

そこで、ENWラボでは、個人の関心や違和感を起点に、周りの人たちと共に社会課題の解決に取り組んでいるENWパートナー*を紹介する連載「波を起こす」をスタートすることに。第3回は、LGBTs環境活動家として様々なプロジェクトにチャレンジしてきた一般社団法人LGPT-JAPAN代表理事の田附亮さんにお話を聞きました。

* ENWの業務で関わりのある方。雇用契約者、業務委託契約者の両方を含む


執筆:木村麻紀
湘南在住。ENWでは企業のサステナビリティコミュニケーションの支援と、ENW内部の学びや交流に関する企画、ファシリテーションを行う。


当事者との懸け橋となって、共に課題解決を目指す

―田附さんは、LGBTsの当事者として企業や自治体などで研修や講演などを行っています。さらに、環境活動家としてビーチクリーンや海洋プラスチックに関するワークショップの開催、気候市民会議1のファシリテーションなど、多彩な活動をされているのが印象的です。どのようにして、ここまでの活動の形を作り上げたのですか。LGBTs関連の活動を始めたきっかけから教えてください。

活動を始めようとしていた当時、このままではLGBTsが「当事者=弱者」「弱者だから取り組むべき問題」として社会に受け止められてしまうのではないか、という危機感というか、不安感のようなものを抱いていました。また、車いす利用者が駅員に向かって「なぜまだバリアフリーじゃないんだ」と怒声を浴びせる光景を目にしたことがあったのですが、「こういうことが重なると、助けを求めたくても言いづらい当事者が出てくるのではないか」と感じることもありました。そこで、私自身は「声なき弱者」として黙っているのでもなく、声高に権利を叫ぶのでもなく、生きづらさを抱えている当事者と社会の架け橋として、一緒に課題解決を目指したいと思い、団体を立ち上げたのです。2017年から非営利型一般社団法人LGBT-JAPANという形で運営しています。

企業で研修を行っている様子

企業で研修を行っている様子

僕たちのアプローチはこれまで、メディアをはじめ社会からなかなか理解されませんでした。LGBTsを知ってもらうためではなく、当事者に向けて訴えかけたいと言っても全然取り上げてもらえず、共感も得られませんでした。最近になってようやく「そういう活動も必要だ」と評価されるようになりました。僕が成し遂げたわけではないですが、やっと社会が変わってきたと感じています。10年かかりましたね。

1. 気候市民会議:地域の気候変動対策を市民目線で議論、提案するために全国各地で開催されている会議

「海の中にお邪魔して」得た視点

―田附さんはレインボーパレードなどLGBTsの権利擁護を全面に打ち出した動きとは一線を画す形で、LGBTs当事者へ働きかけ、問題解決の道を探る活動を続けてきたのですね。そこに環境の要素が加わっていくことになります。何かきっかけがあったのですか。

実は、19歳のときに追い詰められてグランドキャニオンに向かい、死を考えました。でも、あの圧倒的な自然と対面したら「自分はなんてちっぽけな存在なんだろう、こんなことで死んでなんかいられない」と思ったのです。ただ、どうすれば当事者やそれ以外の人たちに、あのときに感じた自然への思いや考えが伝わるのか、その後何年も悶々としました。2007年ごろのことです。

その後、大住力さんの本に出合いました。大住さんはオリエンタルランドで働いた後、現在は難病を抱える子どもやその家族のための活動を沖縄で行っている方です。いつかお会いしたいと思っていたのですが、2021年にご縁があり沖縄に会いに行きました。そのときにダイビングをしたのですが、海の中で魚たちを見ていて「あれ? 人間ってマイノリティじゃないか」と実感したのです。海の中に「お邪魔する」ような感覚が芽生え、立ち位置を変えるだけで視点が広がることを実感しました。

その体験と、大住さんとの対話を通じ、「自然環境」が鍵になるのではないかというヒントを得ました。社会課題という枠組みの中で、通常は一緒に語られることのない「LGBTs」と「環境」を掛け合わせたら何かできるのではないかと思いました。LGBTsのコミュニティの中には、「将来世代のために」と謳っている団体が多いように思いますが、現在、危機的な状況にある環境のことを考えなければ、将来世代などと言っていられません。そう思っていろいろと調べていたら、SGDsウェディングケーキモデルに行きつきました。自然環境を土台に、その上に人権や多様性などの社会課題の解決があるという考え方にふれ、「これだ」と思いましたね。

SGDsウェディングケーキの図

SGDsウェディングケーキモデルの図( Illustration by Azote for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University, CC BY-ND 3.0)

―そこからは、行動がどんどん加速していったのでしょうか。

2021年から、LGBTs仲間と共に「Picking Up Japan」というごみ拾いの活動を始めました。その後、気候変動や海洋環境保護についてさらに勉強しようと、2022年に神奈川県藤沢市でプラスチックフリーのエコストアパパラギを運営する、ダイバーで環境活動家の武本匡弘さんの講座に参加しました。武本さんにも思いを伝えたところ共感してもらい、「僕らの周りには(そのような考え方で活動している人は)いないので頑張って!」と励まされ、嬉しかったです。研修では、武本さんが言っていた、まず知ること、ベストではなくベターを目指すことが大事だという考え方と、「思いがあれば誰でも環境活動家と名乗ってよい」という言葉に勇気づけられました。僕も知識、経験はまだまだですが「LGBTs環境活動家」という日本で初の肩書きを名乗らせていただくことになりました。

環境活動家養成講座修了時の写真

「環境活動家養成コース」修了時の写真

環境活動家養成コース受講後「LGBTs×気候変動」と題したワークショップを実施。その際に、石けんとバスソルトを作りました。

「環境活動家養成コース」受講後「LGBTs×気候変動」と題したワークショップを実施。その際に、石けんとバスソルトを作りました。

最近は、気候変動をテーマに活動することが多くなってきています。2025年4月には、ENWでご一緒している曽我美穂さんのお誘いで、クライメート・リアリティ・プロジェクト(CRP)という気候変動対策に取り組む世界的なイニシアティブの研修に参加し、気候危機の状況を伝えるリーダーの一人になりました。

―そうなんですね。LGBTs×気候変動という形でテーマが融合していったのは田附さんご自身の変容でもあると思えるのですが、他の仲間の皆さんの意識にも変化は生まれましたか。

反対はされないけれども……という感じでしょうか。もちろん、仲間たちは以前よりは意識するようになって、例えば水筒を持ち歩くようになったりしましたが、そこにとどまっている気がします。ごみ拾いに来てくれた人もいましたが、やはりLGBTs当事者としての自分のことで精一杯なのだと思います。

―これまでに田附さんの活動に参加した方々に、変化は見られましたか?

講師として登壇したLGBTs関連の企業研修で環境活動も紹介したところ、参加者の方々から新たな視点や関心が生まれ、さらに学びを深めたいという声をいただきました。その結果、追加研修として「LGBTs×気候変動」についてお話しする機会につながりました。さらに、興味を深めてくださったご担当者さまや従業員の方々は、休日に大磯海岸でのごみ拾いにも参加してくださいました。今後は、僕がご縁のある複数の企業を招いた「ごみ拾い×ビジネス交流会」といった企画も開催してみたいと考えています。

ライフテーマを組織で活かす

―今後はどのようにLGBTs×気候変動活動の波を広げたいと考えていますか。

実は、今夏からインバウンド旅行業のベンチャー企業にフルタイムで就職しました。ガイドが旅行客を案内することを通じて地域が潤うことを目指すという会社のモットーに共感して、入社を決めました。日本文化を体験できる店舗の立ち上げなどを担う、新しい部署でのリーダー的な立場で仕事をしています。

会社からは、ENWなどで携わってきたコンプライアンスやハラスメント対応も含めて長期的に携わってほしいと言っていただき、これまでの経験を活かせそうで楽しみです。社内のカルチャーもフラットで働きやすいため、今の業務に加え、同社の環境・社会への取り組みにも積極的に関わり、5年後にBコープ2取得チームを社内で作るぐらいの勢いで取り組んでいきたいです。

LGBTsに関する講演や気候市民会議のファシリテーションなどのLGBTs環境活動家としての取り組みは、週末などを中心に続けていきます。ENWもそうですが、自分が大切に思う組織、テーマとはこれからもずっとつながっていきたいですね。

これからは自分の経験を大きな組織に落とし込むことを通じて、望む社会を実現していきたいです。

2. Bコープ:米国の非営利団体B Labによる国際認証制度。厳格な評価のもと、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる。

─LGBTs×気候変動というライフテーマを見つけたこれまでの人生の旅を経て、新しい組織で自らのライフテーマを広げるチャレンジの一歩を踏み出した田附さん。ここからどのように波が広がっていくのか、楽しみです。どうもありがとうございました。

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