コロンビアの先進企業から学ぶSDGsゴール16への取り組み

2020 / 10 / 3 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

南米コロンビアでは、2016年までに約50年以上続いた内戦の被害者のエンパワメント、及び影響を受けた地域の復興に向けて、企業が熱心に取り組んでいます。特に住民の信頼関係の強化やリーダー育成といったアプローチに力を入れています。南米諸国で事業を展開する多国籍企業のグルーポ・エネルヒア・ボゴタ社の”Energy for Peace(平和のためのエネルギー)”というプロジェクトを紹介します。


執筆:鈴木 真代
南米コロンビア在住のサステナビリティ・コンサルタント/ライター/翻訳家


FORTUNE誌も注目するEnergy for Peaceプロジェクト

グルーポ・エネルヒア・ボゴタ社は、1896年にコロンビアの首都ボゴタで創業し、ペルー、ブラジル、グアテマラで送電や天然ガス事業を展開する多国籍企業です。社員は約2,300名、売上高は約14.6億米ドル(2020年9月21日現在)です。

Energy for Peaceプロジェクトについては、米国FORTUNE誌の「世界を変える企業2020」(12位)の受賞に際しても評価され、またコロンビア国内のグローバルコンパクトの「SDGのゴール16のグッドプラクティス」に選出されるなど、国内外でも高い評価を受けています。

本プロジェクトは、最も紛争の影響を受けた3つの県(ウイラ県、トリマ県、バジェ・デル・カウカ県)を通過する送電網を建設して生活に必要なエネルギーを供給しながら、さらに周辺地域の復興と住民のエンパワメントを行うというものです。具体的には、地雷除去とエネルギーインフラ構築による「社会基盤の構築と強化」、リーダー育成事業を通じた「制度運営の強化」、能力開発研修と起業を促進する「所得の創出」を通じて、「治安の回復と平和な文化の創造」に取り組みます。2017年にスタートし、これまでに16,000人の住民が電力供給により生活水準が向上し、80名の教師・社会活動家にリーダーシップ研修を、55名の自治体職員と300名の社会活動家に組織マネジメント研修を、509名の住民に雇用機会を(地雷除去、環境保護などの業務を含む)提供しました。

Energy for Peaceプロジェクトの事例から私たちが学ぶ点は2つあります。

  1. 脆弱層のニーズを捉え、ソーシャル・キャピタルの構築に取り組む
  2. 長期でコミットし、短期では「定量的な目標値に対する進捗」を公表する

1.脆弱層のニーズを捉え、ソーシャル・キャピタルの構築に取り組む

本プロジェクトの担当者であるセバスチャン・ガジョ氏は、以下のように語ります。

企業が地域のコミュニティと一緒に平和を構築していくためには、人々が自分たちの土地や地域について理解し、何が必要か知る能力が重要です。そのためには、能力開発の必要があるのです。

脆弱層が抱える構造的な問題を解決するためには、コミュニティの人々の能力開発を進めることが重要です。加えて本プロジェクトでは、ソーシャル・キャピタル(人間同士のつながり、信頼関係、ネットワーク)の構築にも尽力しています。対話・交流・意思決定を推進するリーダー育成や、汚職を防止する政策を運用する自治体職員を対象とした研修や、農業の生産性を高める研修、起業支援を実施しています。また「平和のための森林」という環境保護活動を通じ、紛争による環境破壊を理解した上で、歴史を繰り返さないための環境活動も実施しています。このような活動を通じ、企業としてコミュニティとの信頼関係を醸成しているのです。

2.長期でコミットし、短期では「定量的な目標値に対する進捗」を公表する

社会貢献型の事業は、半年や1年などの短期間で成果を出すことは難しく、コミュニティの再構築が必要な紛争影響地域ではより困難です。

本プロジェクトでは、25年後の未来も、企業としてコミュニティへ貢献し続けることを断言し、長期で大きな成果を出すことを目指しています。成果を測る指標は、「リーダー研修を受けた受講者数」「新規で雇用を得た住民数」「恩恵を受けた先住民族コミュニティ数」「生活インフラが改善した住民数」など、あらゆる視点でのインパクトに着目し、目標に対する実績を定期的に集計し公表しています(報告書参照)。こうしたプロジェクトの成果をコミュニティとも共有することで、さらなるアクションに影響を与えるという好循環を生み出しています。

まとめ

本プロジェクトのように地域のリーダーを育成していく仕組みを企業がリードすることは、地域的な民主主義を推進する上でも、企業が持つノウハウを生かせる領域としても、ニーズが存在することを示しています。SDGsに貢献するテクノロジーが注目されがちですが、こうしたソフト面に注目したSDGsビジネスについても再考してみてはいかがでしょうか。

(本記事は、国連グローバル・コンパクトのローカル・ネットワークPacto Global Colombia主催のSDGsアワード2020の受賞スピーチを元に作成しました)

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