Interview: ありのままの海を伝え、人と自然の共存をめざす

2021 / 7 / 11 | 執筆者:岡山 奈央 Nao Okayama

 

大神さん

大江さん

お話:一般社団法人ふくおかFUN
代表理事 大神弘太朗さん
法人営業・広報チーム 大江由美さん

聞き手:岡山 奈央

 

はじめに

近年、地球温暖化​による海水温の上昇や、海洋プラスチックごみなどが海洋資源に与える影響が懸念されています。一方で、それらが企業活動や日々の消費活動とどのようにつながっているか、なかなか実感がわかない、という人は意外と多いように感じます。都会に暮らしていると、海に行く機会もあまりなく、まして、海の中でどのような世界が繰り広げられているのか、すっかり忘れて日々の暮らしに追われてしまっている。そんな人も多いのではないでしょうか。私たち人間を含む、すべての生き物を支えてくれている海について、その豊かさ、素晴らしさを改めて知ることが、自然との共存を考えていく第一歩になるはずです。

今回は、ダイバーとして海に潜り、地域の人々を巻き込みながら、海のありのままの姿を伝え続ける活動をされている一般社団法人ふくおかFUNのお二人にお話を伺いました。

 

インタビュー

ふくおかFUNさんは、プロのダイバーとして海の生態調査等を行うだけでなく、行政や教育機関、漁業関係者等の多様な主体と連携して水中世界の発信、イベントを行うなど、さまざまな活動をされていますね。そもそも、このような活動をはじめられたきっかけは何だったのでしょうか。

大学生の時にダイビングと出会い、西表島を訪れたんです。そこで、人々が豊かな自然を残していこうと前向きに取り組む姿を目の当たりにしました。西表島に行ったからこそ知ることができたその世界は、私の価値観を大きく変えました。以降、「自然伝承」を理念に掲げ、生まれ育った福岡の海の美しさ、素晴らしさをもっとたくさんの人に知ってもらいたくて、7年前に一般社団法人として「ふくおかFUN」を立ち上げました。

代表の大神さんは、地元の小中学校や専門学校で講師として海や自然のことについてお話されているほか、地元福岡の美術工作教室とも連携して、子どもたちに身近な海に生息している生物の水中写真や映像を見てもらい、絵を描いてもらうイベントも開催するなど、さまざまなユニークなイベントも開催されていますね。若い世代を対象にした活動が多いことについてはどのような理由があるのでしょうか。

自然を伝承し、自然と共存していくためには、子どもたちに海の実態を知ってもらうことがまずは一番重要だと考えているからです。ダイバーであることの強みを活かして、子どもたちにシュノーケルを教え、一緒に海のなかを見てもらうイベントにも取り組んでいます。美しい魚たち、そして、海に漂うごみの存在にも気づいてもらう。そこで初めて、自分ごととして考えることができるようになるのだと思います。海のごみ拾いは、海をきれいにする目的もありますが、拾っても拾っても新たに出てくるごみが、まさに自分たちの日々の生活から生み出されているということに気づいてもらうことが大切です。また、最近では、九州大学と連携して岩場の海藻が消滅する“磯焼け”の課題解決に向けた潜水調査も行っています。イベントだけでなく、活動の根幹ともいえる潜水調査・撮影を大学の皆さんとともに行えることは、自然を伝承していくうえでも大変重要な事ですし、嬉しく感じています。

小学校での出張授業の様子

 

ふくおかFUNさんの活動には、SDGsの視点も取り入れられていますね。

私たちはいつも現場で仕事をしていますが、SDGsについて感じるのは、ゴール14(海の豊かさを守ろう)だけを見ているのではダメだということです。ゴール12(つくる責任、つかう責任)をはじめとした様々なゴールにもつながっている。つまり日々の自分たちの暮らしとつながっているということを若い世代の人たちに自分ごととして考えてもらうきっかけにしたいと考えていますし、大人にもサプライチェーン全体、ライフサイクル全体で考えてもらいたいと思います。

ふくおかFUNさんが環境に関する取り組みをされる中で、最も重視している点は何でしょうか。

産業の発達が自然に大きなマイナスの影響を及ぼしていることは事実です。そして、自然について伝えるとき、汚染が人類にもたらす負の影響など、どうしてもネガティブな側面のみを切り取って伝えることになりがちです。でも、私たちは自然が人間にもたらしてくれるプラスの面についても、発信していきたいと考えています。それが、マイナスの影響について考える大切な一歩になると思うし、変えていきたいと思う原動力にもなるはずだから。今では海中できれいな写真を撮ることができる性能の良いカメラもあるし、それをオンラインで発信してたくさんの人に届けることもできる時代。テクノロジーの進歩のおかげでできることもたくさんあるので、ぜひ積極的に活用して自然のありのままの美しさをできるだけ多くの人たちに発信していきたいです。そして、それを見て共感してくれた人たち、企業、行政、学術機関などと連携して社会を変えていきたいと考えています。

ここ半年で、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)をはじめとする自然資本、生物多様性に関する議論が産業界でも活発になってきていますね。ビジネスによるネガティブなインパクトを減らすためには、企業単体ではなく、さまざまな主体(アクター)による連携が不可欠かと思いますが、ふくおかFUNさんは、今後どのような形の連携が必要だと思われますか?

現在、環境課題解決に向けて様々なタスクフォースが形成されていることと思います。現場と企業、行政、学術機関等との垣根を超えた情報共有、さらにそうした情報を様々なセクターに届けるために上手く情報をデザイン(翻訳)していくことが必要だと考えます。現場(地域社会)と向き合っている我々だけでは広い社会全体を捉え、議論し、社会に発信していくことは非常に難しいため、ぜひエコネットワークスさんのような立ち位置の企業にはそうした役割を担っていただけると嬉しいです。

また、さまざまなNPO等との連携も有効だと思います。日本では特にNPOは”強い意見を言うひとたち”という固定観念を持っている方もいる気がします。以前、研修でドイツのNPOを訪問した際、ドイツでは社会におけるNPOの位置づけが随分日本と違うなと感じました。企業とNPOの双方が自己開示できる環境がまだまだ整っていない結果、深い意見交換ができず「批判のみで終わってしまう」というケースも多いのではと感じています。本気で課題解決をめざすのであれば、本来はここがスタートライン。これまで課題解決に真剣に向き合ってこなかった企業はそこから変わればいいだけです。企業が変わろうと決意したら、そのタイミングで、現場を知るNPO等の組織と生産的な議論を行うことで、社会はより良い方向に進むと確信しています。考え、議論した後は「行動」あるのみですね。

企業でのサステナビリティに関する講演

おわりに

キラキラとした笑顔がとても素敵な大神さんと大江さん。海のことをよく知っているお二人なので海の話がメインになるかと思っていましたが、話が進むにつれ、SDGsや消費者とのつながり、企業のサプライチェーンなど社会全体について話題は広がっていき、お二人の知見の深さ、広さ、そしてプロフェッショナルな姿勢に驚かされました。そもそもなぜ自然を守る必要があるのか、なぜ自然と共存する必要があるのか。企業がSDGsやESGに取り組む際にも、そうしたつながりをまず腹落ちさせることはとても重要です。「人間も自然の一部であること」は、常に自然と共に過ごしているふくおかFUNさんのような方たちと連携することで、少しずつ実感できてくることかもしれません。彼らのような人たちと連携し、私たちが普段気づくことができていない”自然から享受している価値の可視化”をすることで、事業においてもこれまでとは違った視点でさまざまなアイデアを実現させていくことができるのではないかと思います。

水中写真(コケギンポ)

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