小さな組織の“中計”策定プロジェクト 計画完成に至らずとも得られたこと

2022 / 3 / 8 | 執筆者:近藤 圭子 Keiko Kondo

事業の数年先を見通す「中期経営計画」。新型コロナで先を見通しにくくなった2020年は、計画策定を延期する企業が続出したそうです。しかし、エコネットワークス(ENW)ではなぜかその2020年に、「中計策定プロジェクト¹」なる取り組みを開始。ENWラボの記事でも取り組みの様子をご紹介しました。開始から1年半。実のところ、いわゆる「中計」はまだできあがっていません。それでいいのか?大丈夫なのか?と思ってしまいますが、関わる人は「だからこそ得られたことがある」と口々に言います。どういうことなのでしょうか。
¹中計は中期経営計画の意味。セッションはすべてオンラインで行われました。


執筆;近藤 圭子
ライター。インクルーシブな地域を作る人と組織を、書くことを通してサポートしています。


今だからこそビジョンの共有を。自律分散型組織へのチャレンジも

そもそもなぜ今、中計策定が必要だったのか。昨年掲載した記事で、代表の野澤 健さんはこう話しています。

野澤:誰にとっても先行きがわからないコロナ禍を目の前に、組織として少しでも先の方向性を示すことで、パートナー²が安心して働けるようにしたいと思いました。そしてこんな時代だからこそ、最初から組織のあるべき姿が決まっていて、上から一方的に中長期的な方向性を示すということではなく、ともに働くパートナーそれぞれが「どんな組織にしたいか」を自分ごととして一緒に考えていけたらと考えたんです。
²パートナー:ENWの仕事をする人。雇用契約者、業務委託契約者の両方を含む。

さらに「中計づくりを通して、どんなことを実現したいと考えていましたか?」との問いに対し、

野澤:実現したかったのは、計画というよりは、もう少し大きな方向性やビジョンかもしれないですね。進む道をかっちり決めるというよりは、大きな方向性を浮かび上がらせ、それぞれがそこに向かって、多様な道をドリフトしながら進んで行くようなイメージというか…

先の見通しが一層立てづらくなったからこそ、ビジョンを一緒に考えたい――。このときから、整えられた計画を立てることより、未来を話し合うことに重きが置かれていたように見えます。

中計策定プロジェクトのフェーズ1は2020年9月から12月にかけて、全9回のダイアログとして行われました。

筆者自身も数回参加しましたが、フェーズ1で得られたことの一つは、ENWとパートナーのつながり方の変化ではないかと思えます。“仕事の受発注の関係”から、”ENWという場をともに作る関係”に変わっていったのです。フェーズ1の議論に参加したのは、必ずしもENWとの関わりが濃い人ばかりではありませんでした。ENWと雇用契約を結び、フルタイムに近い形で働く人もいれば、業務委託契約で単発のプロジェクトごとにお仕事をする人も。「ENWに関わる人なら誰でもウェルカム!」とした結果、お互いの関心や問題意識を共有し関係性を耕すことから始める必要がありました。

これはある意味、“面倒な”プロセスだったかもしれません。それでもオープンにしたことで、お互いの遠慮が取れて、「私もこの場を作って良いんだ」という気づきがあったように感じます。自分で考えて動く一人ひとりの集合体、自律分散型組織へのチャレンジでした。

中期経営計画策定プロジェクトの目標。現状、プロセス目標、成果目標、ビジョンが置かれている

プロセス目標として問題意識の共有と課題の明確化、成果目標として中期経営ビジョン・計画書の策定を置いた

“組織”、“事業”、“文化”の3テーマで議論したフェーズ2

続いて、2021年5月から12月にかけて行われたフェーズ2。フェーズ1での議論を踏まえ、組織、事業、文化の3つのテーマで展開することに。そしてここからは、「マネジメント主導でない形を模索したい」と3テーマをリードする担当を募集しました。

3テーマ合わせて15回のセッションが行われ、16人が参加。うち14名は2回以上参加しています。一方、このような議論の場は「一度休むと置いてきぼり……」となりがちですが、参加しやすさを高めるために、当日の動画と議事録は後日すべて共有されました。さらに参加者のうち一人が感想を交えたレポートを書いて、パートナー限定のサイトにアップ。なんとなくでも雰囲気を伝えていくための工夫になっていたかと思います。

さて、このフェーズ2の成果はどのようなものだったのか。上記の図で示したように、当初は中期ビジョンや計画書の策定が「成果目標」として挙げられていましたが、フェーズ2では必ずしもそれにこだわらず、メンバー間の意識合わせと納得感が重視されました。何が生まれるかも含めてその場の流れに任せた結果、当初の成果目標として掲げていた中計の策定には至っていません。

カルチャー、本質、組織、文化、クライアント、言語、浸透などの言葉が、会話に登場した頻度に応じた文字サイズで表示されている

「文化」セッションで話された言葉のテキストマイニング

計画完成を急がなかったから得られたこと。より底力のあるチームになれるかも

一見、残念な結果のように思えるこのプロジェクト。ここまで読んで心配になった方もいらっしゃるかもしれません。「エコネットワークスは、とてつもなくのんびりしている会社なのでは。仕事を頼んで大丈夫か?」と。しかし、じっくりと中計の議論を進める一方で、事業はかなりのスピードで動いており、2021年9月期は当初予定を大幅に超える売上を記録したのだとか。何よりリピート率が高いことが、クライアントの皆さまのお役に立っていることを示しているのだと思います。(昨期の成果はこちらもご参照ください:ステークホルダーミーティング

業務で忙しいなか、時間を費やしてまで中計の議論をした意味は何だったのでしょうか。今、仕事をする上で「会えないこと」のデメリットがやはり大きいように思います。ENWはコロナ前からリモートワークが前提で全員が離れた地域に住んでいますが、年に数回集まる時間を大切にしていました。海外に住むパートナーとも、直接会える機会があれば会っていたと聞いています。しかしそれが難しくなり、一人ひとりが不安な気持ちを抱えこむなど足元が揺らいでいるのが今。中計の議論として継続的にセッションを設けることで、生活を支える一つの要素“仕事”において「自分は何をするのか」を確認し、揺らぐ足元を見直す機会となったのではないでしょうか。実際、日常的な仕事において「この仕事の本質は何か?」と考える姿勢を得たという声もあるそうです。

キャンプで焚き火するイメージ写真

夏の終わりには「たき火」と称した番外編セッションも。たき火を囲んで語り合うように、おいしいものをつまみながら、それぞれの想いを表現する時間でした

フェーズ2の終わりの方には、参加者から「出てくる意見が多様になったと思いませんか?」との問いかけも見られました。かねてから「個」を重視すると言ってきたエコネットワークスですが、「個」である自分をより出せる場になってきたのかもしれません。

変化は、強いリーダーシップによるものではなく、発酵するかのようにゆるやかに生まれました。たしかに歩みはゆっくりです。でももう少し醸したら、ENWはより底力のあるチームになっていくのではないか――。そんな予感がします。

関わる皆が、走りながら立ち止まる。先が見えない時代のしなやかな組織へ

時代の転換点にいる今、これまでの延長線では未来を描くことはできません。中計の議論、ときにモヤモヤとする議論を通じて思うのは、先が見えないからこそ、異なる意見を出し合いチューニングしていくことが大事だということです。そして、ビジョンが見えてきたら、実現に向けた道筋(=計画)をともに作ること。さらには作って終わりではなく、立ち止まり話し合い考えること。セッションの中で「民主主義」という言葉が何度も聞かれたことは、「自分はどうしたいのか³」「どう考えるのか」が問われ続けるこのプロセスを象徴しているかのようです。
³「自分はどうしたいのか」は「どんな仕事をしたいのか」だけでなく「どんな働き方・休み方をしたいのか」も含んでいます。オンとオフをわけずにホリスティックに話すところにエコネットワークスらしさを感じます。

しかし、時間がかかるプロセスとはいえ、気候変動などの課題を思えばのんびりしているわけにもいきません。事業を通じたクライアント支援は走りつつ、一方では立ち止まって考える。このあり方はまだまだ続いていきます。今後は、たとえば「エコネットワークスのミッションで掲げる“波を起こす”とはどんな波なのか」のように横断的なテーマで議論が展開されていきます。並行して、より具体的な個別プロジェクトも進めるとのこと。今回のようにウェブ記事としてご報告する機会もありそうです。今後が気になる方は、よろしければまたご覧ください。

 

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