CSR報告書 マテリアリティの開示事例―CSR報告書勉強会より(1)

2016 / 11 / 8 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

エコネットワークスではCSRレポーティングに関する
国内外の事例収集とトレンド把握を目的に、
内部で定期的に勉強会を開いています。

毎月1つのトピックを取り上げて数社のレポート内容を比較。
地域(日本・海外)や業界を横断的に見ていくことで
明らかになることがあります。

このシリーズでは、勉強会の内容をダイジェストでご紹介します。
今回のテーマは「マテリアリティ」です。

■スポーツメーカー(Nike、Puma、Adidas、ミズノ、アシックス)

CSR報告書勉強会(1)Puma http://about.puma.com/en/sustainability/stakeholders/materiality-matrix

マテリアリティには業界ごとにある程度の共通項が見られます。

スポーツメーカーの場合、今回分析した企業では全社に
・エネルギー問題への対応(CO2排出量削減等)
・化学物質への対応
・社員の健康
が含まれていました。

化学物質への対応はグリーンピースのデトックスキャンペーン
で指摘を受けたことが影響しているものと考えられます。

 

■銀行(ING group、Deutsch Bank)

CSR報告書勉強会(2)INGhttps://www.ing.com/About-us/Annual-reporting-suite.htm

マテリアリティの特定プロセスにも各社の特徴が見られます。

銀行では次の2社を比較しました。
プロセスは似ていますが、
オランダのINGグループは幅広いステークホルダーの声を重視しているのに対し、
Deutsch Bankは専門家の声を重視し最終的に内部検証の過程を挟んでいる点
が異なります。

<INGグループ>

1. 外部エージェントとともに調査を実施
金融業界、自社に関する課題をリスト化
G4、SASB、ステークホルダーダイアログのトピックを参照

2. ステークホルダー(SH)によるランク付け
5カ国、6つのSHグループ より1500名が参加
・オランダ、ポーランド、ドイツ、スペイン、トルコ
・法人顧客、個人顧客、投資家、NGO、監督機関、従業員

3. マトリクス化
2014年は外部エージェントがマトリクス化
2015年はSHによるランク付けの結果のままマトリクスに

<Deutsch Bank>

1. G4ガイドラインに基づき課題を特定
SASB、予備調査・内部分析、内部指標の見直し、
SHエンゲージメントからの示唆を参照

2. 優先順位付け、検証
外部専門家・社内ワーキンググループにより
11のプライオリティクラスターに分類。

約270名の従業員に調査を行い内部検証。
部署、地域、役職は様々(41%が役員レベル)、回答率25%。

2015年は外部検証を実施。
400名のSHにオンライン調査。回答率21%。
(うち、90%がサステナビリティに日常的に関わる人。
半分はESGのプロフェッショナル)

3. 外部検証結果を踏まえ、マトリクス化。
外部のSHの考える優先トピックと
管理職が考えるビジネスへの影響度を比較しながら進めた

次回は「労働環境」テーマの回についてご紹介していきます。

<「マテリアリティ」テーマで分析した企業>
スポーツメーカー(Nike、Puma、Adidas、ミズノ、アシックス)
銀行(ING group、Deutsch Bank)
自動車メーカー(Volkswagen、Peugeot、BMW、Hundai)
商社(三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、丸紅、住友商事、Wolseley, Hanwha)

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