【簡単キーワード解説】そもそもCSR報告書って何のため?

2017 / 10 / 12 | 執筆者:mihosoga

多くの企業がCSR報告書(CSRレポート、サステナビリティ報告書/レポートとも言われます)を出しています。読んだことがある方も多いのでは? でも、何のために出しているか、知っていますか? 企業が「こんないいことをしています!」と自慢するためのものではないんですよ。

企業がCSR報告書を出し始めたわけ

この疑問に答えるには、30年ほど前まで歴史を紐解いていく必要があります。

企業が現在のCSR報告書の原型とも言える環境報告書を出し始めたのは、1990年代に入った頃のこと。1989年にアラスカで起こった石油タンカーバルディーズ号の事故の甚大な環境被害をきっかけに、「企業が環境への責任を果たすべき」という世論が高まりました。

企業側もその世論に応え、ちゃんとやるよ/やってるよ、ということを説明するために、自社の環境に関する取り組みについて報告する環境報告書ができあがったのです。その後、範囲は世の中の課題全般や企業と社会の持続可能性にも広がっていき、社会に対する責任(CSR)に関する取り組みを網羅したCSR報告書が登場するようになりました。

CSR報告書の内容について、何かルールはあるの?

CSR報告書の発行は、法律で「出しなさい」「これを書きなさい」と決められているわけではありません。つまり、明確なルールはないのです。

でも次第に読み手からは「情報を比較できない」という声が、企業からも「基準がないと作りにくい」と声が上がるように…。そこで、CSR報告書に盛り込む内容や推奨される基準を示したガイドラインが誕生しました。

世界中の企業が使っている基準として最も知られているのが、GRIガイドラインと呼ばれるものです。経済面、環境面、社会面に関する情報について、「何をどのようにやったか」を数値や文章で報告する方法が細かく載っています。世の中の動きに合わせ、数年ごとにバージョンアップしているのも特徴です。他にも、組織が社会に対する責任を果たす上でのチェックリストとして作られたISO26000と呼ばれる規格や、世界が2030年に向けて目指す姿をまとめた国連のSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れている場合もあります。

これらのガイドラインを使うことで、企業のCSR報告書は初期に比べ格段と読みやすく、内容も充実し、理解しやすくなってきました。

CSR報告書のこれから

 いくつかのキーワードが挙げられます。

「義務化」・・・先ほど明確なルールがない、といいましたが、CSR報告書やその中の一部の情報についての報告を求める法律ができたり、事実上の義務とされたりという地域が増えています。

「ESGと非財務情報」・・・どういうビジネスで利益をいくら出したか、だけでなく、その過程や結果でどのような影響を及ぼしたかも重要です。それを判断する情報として、環境(Environment)・社会(Social)・組織を回す仕組み(Governance)といった財務以外の情報に対する注目がこれまで以上に高まっています。

「統合化」・・・そもそも、ビジネスとお金に関する情報(アニュアルレポートや財務報告)と、ESGや非財務に関する情報は、切り分けて考えるものなのでしょうか。一体として考えるべきではないの、本来は切り離せないはず、として2つを合わせた「統合報告」に取り組む企業が増えています。

「社会の関心・期待に応え、自社が及ぼす良い影響を最大化し、悪い影響を最小化する」というの企業が社会に存在する上での大原則。その考え方の下、ステークホルダー(消費者や従業員、投資家、調達先、地域社会など)とコミュニケーションをとることで、説明責任を果たし、評価を高め、価値向上へつなげようとしています。

コミュニケーションは双方向が大切。読み手も「いいことやってるんだ」で終わらず、報告書で言っていることと、ビジネスの現場でやっていることにギャップがないかをチェックし、「買う/買わない」といった行動を通じて企業を評価していくことが、より良い社会を作っていくことにつながります。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加