【波を起こす】思いを起点に仲間とつながり、広げる―実践者に聞く活動のヒント

2026 / 3 / 26 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

4人の組み写真

「一人から始まる思いを起点に意思のある仲間がつながり、社会に変化の波を起こしたい」。そんな思いから、エコネットワークス(ENW)は、「Foster Team Sustainability together, everywhere.」というパーパスを定めています。

パーパス実現に向けた活動の一環として、ENWラボでは2025年5月から連載「波を起こす」をスタートし、周囲の人と一緒になって社会課題の解決に取り組むENWパートナー*を紹介してきました。

【波を起こす】子どもの居場所から多世代多様な人たちが集うコミュニティづくりへ
【波を起こす】農ある暮らしを軸に食の未来を考えたい
【波を起こす】LGBTs×気候変動 地球環境と社会課題の解決を目指して
【波を起こす】コロンビアで探る「ビジネスと人権」と「平和構築」が交差した先にある世界

最終回では、これまで紹介してきたENWパートナーに声をかけ、オンラインのシェア会を開催。活動を進めていく上での課題や工夫について話し合い、「しずくから波を起こす」ための経験やアイデアを共有しました。

* ENWの業務で関わりのある方。雇用契約者、業務委託契約者の両方を含む


執筆:新海美保
ライター・エディター。2025年7月からアフリカ・ウガンダ在住。


人との出会いが活動の輪を広げる推進力に

シェア会に参加したのは、神奈川県藤沢市で多様な人が集まる場づくりに奔走する木村麻紀さん、千葉県・房総半島に移住し農のある暮らしを実現している佐藤靖子さん、コロンビアを拠点に「ビジネスと人権」「平和構築」の専門家として活動する鈴木真代さん。それぞれ異なる領域で奮闘する3人ですが、共通するのは周囲の人と協力しながら地域や社会に「波」を起こしてきた点です。

目の前の課題や違和感を何とかしたいと思っても、一人で悶々と考えているだけではなかなか前に進めません。「やりたいこと」を見つけ、誰かとつながりアクションを起こしていくために、それぞれどんな工夫をしてきたのでしょうか。

「自分の関心事や違和感を表に出すことが、まず大事。そして自分がやりたい活動だけやるのではなく、地域の集会など周囲のコミュニティへ積極的に出ていくことで広がる縁もある」。こう語るのはジャーナリストとして活躍する傍ら、NPO法人「湘南まぜこぜ計画」の理事や、2024年に立ち上げた「チームF」の代表を務める木村さん。木村さんの場合は、地元自治体(藤沢市)のプラットフォームに参加したことが、その後の広がりに影響を与えました。SDGsに関わる地域の企業や民間団体が集う勉強会に呼んでもらったり、市の助成金事業に申請したり、視座を高くもって動いている人との出会いが意識や行動を変えるきっかけとなり、活動の輪を広げる推進力になっています。

米づくりをしながら農園の運営に携わる佐藤さんも「一人でできることは本当にごくわずか。仲間がいてこそ田んぼを借りるという一歩も踏み出せた」と、仲間づくりの大切さを振り返ります。米づくりの先輩方、手伝ってくれる仲間、応援してくれる友人・知人、地域内外の人とのつながりこそが、佐藤さんの「農業に携わる人を増やしたい」というモチベーションにつながっています。

コロンビア在住の鈴木さんは「ラテンアメリカで自律的なキャリアを築いていくためには、所属する組織や肩書きを明確にして信頼性を担保しつつ、能動的につながりを探し、興味を持ってもらう工夫が必要です」と言います。パートナーの転勤に伴い中南米に移り住んだ頃は「期間限定で滞在している人」と見られがちで動きづらさを感じていましたが、現地の大学院に進学し平和学と紛争解決学を専攻し、2020年にはこれまでの活動で出会った仲間と「Social Connection for Human Rights(SCHR)」を設立。「ビジネスと人権」をテーマに日本企業向けのコンサルティング事業などをスタートし、コロンビアを拠点に先住民の権利や平和構築などの専門性を深めていこうと決めました。それからは、いかに人脈を築いていくかを意識したそうです。現地の文化や習慣を学びつつ、相手の「やりたいこと」を聞いて自らのアイデアも明確に伝えることで、仲間を増やしていきました。

小さく始めて地道にコツコツ積み上げる

一方で、たくさんの人が集まり多様な意見が出れば出るほど、活動の優先順位を決めるのが難しくなりがちです。時間や資金、人材などリソースが限られる中、長く続けていくコツはあるのでしょうか。

佐藤さんが所属するNPO法人「ゆうき農園みよし村」は、活動開始から1年を迎える団体です。この1年を振り返って、佐藤さんは「組織を運営する大変さを初めて知りました。やりたいことはたくさんあっても、時間も経験もマンパワーも足りず、実際にできることはまだ多くありません。もどかしい思いもありますが、私たち自身が経験を積み重ね、少しずつ仲間を増やしていくことで、活動も広げていけるのではないかと思います」と語ります。

10年以上にわたってコミュニティづくりに携わってきた木村さんも「やりたいことはたくさんあるけれど、一気にはできない。3〜5年先の姿を想像しつつも、『今できること』に集中してきた」と振り返ります。小さく始めてコツコツと積み上げていく姿勢も、「波を起こす」ために大切な視点なのかもしれません。

「資金面ばかりを気にしてしまうと、何も始められない。時代の流れのちょっと先をいくつもりで始めて、後からお金がついてくればいい。それくらいの気持ちでやってきた」。そう話す鈴木さんがSCHRを立ち上げた頃は、企業が事業活動を通じて人権侵害の防止・是正に責任を持つ「ビジネスと人権」の考え方はまだ広く知られていませんでした。「人権分野のプロフェッショナルは、お金がなくても人権を守る活動が必要だと信じて続けてきた人たち。他の仕事をするなど何かしらの方法で生き延びる術を身に付けてきたのです」。

世界共通のテーマ「食」と「農」の未来を考える

シェア会後半では、世界共通のテーマとして食や農業に関する話題で盛り上がりました。

佐藤さんは東京から有機農業の先駆地に移住して就農を実現しましたが、いざ生産現場に身を置くと、高齢化と人手不足の深刻な状況が垣間見えました。「なんとか踏ん張っているけれど、あと何年もつか。日々危機感を抱いている」と言います。だからこそ、農業に携わる人を増やす活動に注力しています。

また、木村さんも居場所づくりの活動の中で、市内近郊の耕作放棄地で、米作りを体験できるコミュニティづくりも計画しています。「高騰する米や食の未来を考えるきっかけとして、自ら米をつくって食べる経験は意義深い。これまで続けてきた活動をもう一歩進化させるためにも重要な取り組みです」

鈴木さんが暮らすラテンアメリカでも、「農」はいつも人々の関心の中心にあるそうです。小規模農家や先住民が土地の権利や安全な種子の確保、格差是正を求めて、多国籍企業などへ抗議するデモが頻繁に起きています。鈴木さんは今、「農民の権利」と関連団体について研究しており、日本企業とコロンビアの農家との対話セッションの企画も進めています。シェア会では佐藤さんの米づくりの取り組みを見学に行ったり、コロンビアに紹介したり、相互に連携していこうというアイデアも出されました。

意思あるすべての人が「チーム・サステナビリティ」

purpose

ENWのパーパス

今回のシェア会は、自分の暮らしのまわりで波を起こしているENWパートナー同士が、お互いの活動内容や思いを理解する貴重な時間となりました。今後も情報交換を続けながら、連携の可能性を模索していく予定です。

連載「波を起こす」は今回で幕を閉じますが、ENWパートナーの「波を起こす」取り組みは世界各地で進行中です。ENWラボでは、パーパスのもと、これからも「チーム・サステナビリティ」の取り組みを紹介していきます。

対話を受けて:田附亮さんからのコメント

連載3回目の「LGBTs×気候変動」でご紹介いただいた田附です。今回は日程が合わずシェア会に参加できませんでしたが、皆さんの話を聞いて、今後、様々なコラボレーションができそうだと感じました。僕は気候変動対策にアンテナを張っていますが、皆さんがやっているコミュニティづくりや農業、人権などの分野とかけ合わせて気候変動の影響や対策を考えると、何かおもしろい活動ができそうです。

今回の連載のテーマは「波を起こす」ですが、活動を続けていると「自分が始めること」ばかりを考えがちです。でも「他の人がやっていること」に参加すれば、お互いの「やりたいこと」を加速させられたり、新しいコミュニティとつながったりできると思います。そんな視点もあって、先日、沖縄で軍事基地建設の反対運動をしている人と一緒にパブリックコメント集めに参加しました。

詳しくはまた報告しますが、最近は「クィアエコロジー」という考え方に関心があります。セクシュアルマイノリティ(LGBTQ+)の視点と環境思想を融合させた学問・運動で、初めて聞いたときは「僕の考え方を言語化してくれた!」と率直に思いました。日本ではまだ情報が少ないので、情報を集めつつ、社会に良い影響を与えるような可能性を感じたら広めていきたいと思っています。

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