Interview: 人々と地球のために消費者と企業をつなぐ

2020 / 10 / 5 | 執筆者:岡山 奈央 Nao Okayama

「気候変動や労働者の権利といった解決が困難な問題は、
消費者が自身の価値観に沿って消費行動を変え、
企業に対し良い社会にむけた推進力となるよう影響を与えた時、
その解決へと導くことができるのです」

お話:CoGo最高経営責任者/創業者(ニュージーランド・英国)
Ben Gleisner氏

聞き手:岡山奈央

はじめに Introduction

日本では、エシカル消費に関心を持ち、環境・社会に良い製品やサービスをできるだけ選択しようとする人が増えています。一人ひとりのライフスタイルの変化は重要ですが、エシカルな暮らしを実践するにあたり、人々は難しさに直面します。まず、どの企業がどのような取り組みを行っているのか、といった情報を、消費者は自分から見つけにいかなければなりません。また、消費者は自分たちの日々の努力がどれだけのインパクトを与えることができているのか把握できないため、自分たちの消費行動が本当に社会に貢献しているのか不安に感じ始めてしまい、結果的に熱意を失ってしまうことにもなりかねません。一方で企業は、良い取り組みをしていたとしても、消費者に気づいてもらうには、さらに大きな努力が必要となります。持続可能な社会を築くためには、「手軽さ」が鍵となります。CoGoアプリのような革新的なツールがあれば、そのような社会を実現できると確信しています。

「CoGo」は「Connecting Good(良いことをつなぐ)」の略語であり、ニュージーランドで生まれたアプリです。現在CoGoのマーケットは英国にも広まっており、このアプリを使えば、エシカルな暮らしを手軽に実践することができます。自身が関心のある環境・社会課題を選択するだけで、その価値観に合った企業を見つけられるのです。さらに、自らの消費行動のインパクトを可視化し、“課題解決につながる”消費行動を加速させるためのアドバイスを得ることができます。

CoGoの消費者向け機能
CoGoウェブサイトより仮訳)

1.関心のある環境・社会課題を選択する
2.自分の価値観に合う企業を見つける(マップまたはリストビューが可能)
3.オープンバンキングを利用して、安全な方法で銀行口座と連携する
4.自分の消費行動を分析。生活賃金(労働者が基本的なニーズを満たすために必要な最低所得)を従業員に支払っている企業への消費額を可視化できる「Living Wage Wallet」機能が使えるように。今後さらに機能が追加される予定
5.“課題解決につながる”消費行動をさらに良くするためのアドバイスを取得

消費者は、CoGoアプリを通じて企業をエシカルな方向へと促すことができ、消費者・企業ともに、SDGs達成を含め、そのインパクトを視覚的に捉えることができます。消費者はまた、当初自身が目指していた目標だけでなく、それ以外のインパクトについても知ることができるなど、新たな視点を得ることができます。CoGoアプリを通じて、エシカルな暮らしへのポジティブなインパクトをいかに生み出すことができるのか、CoGoのCEO兼創業者であるBen Gleisner氏にお話を伺いました。

インタビュー Interview

Q.これまで特定の業界に焦点を当てたエシカルアプリは存在していましたが、CoGoはより幅広い業界をターゲットとした革新的なアプリですね。このアプリを開発された経緯をお話しいただけますか?

私は常に世界を変えたいと思っていました。そのためにニュージーランドで慈善団体を設立したり起業したり、そして何年も経済学者として活動してきました。しかし、大きな変化は起きそうにありませんでした。そこで、10年前に「CoGo」を創業したのです。
「CoGo」は、次のような信念に基づいて設立されています。それは、気候変動や労働者の権利といった最も解決が困難な問題は、消費者が力をつけ自身の価値観に沿う形で消費を変化させ、企業に対し良い社会に向けた推進力となるよう影響を与えた時に、その解決へと大きく導くことができる、ということです。

Q.サービス開始からユーザー数は増え続けていますね。「CoGo」はどのようなポジティブなインパクトをもたらしてきたのでしょうか? また一方で、進める上での難しさや課題はありましたか?

CoGoは英国ではサービスを開始したばかりですが、ニュージーランドではこの7年間ですばらしい実績を達成しました。多くの人々の“意識的な”消費行動の力によって、CoGoアプリは100社以上の企業に新しくサステナブルな取り組みを採用するインセンティブを与えてきました。以下に挙げるような廃棄物の最小化や気候変動の緩和などがその例です。

  • 30社以上の企業が食品廃棄物の埋立処分を回避。これにより年間400トン以上の廃棄物を削減。
  • 20社近くの企業がより多くのフェアトレード認証製品に投資。その結果、年間25万ドル(約2600万円)が発展途上国の経済支援に。
  • 25社が慈善事業への寄付額を増加。これにより地域コミュニティへ新たに年間5万ドル(約530万円)以上の資金を提供。
  • 35社が環境に配慮した包装を採用、または容器を持参した顧客を優遇する仕組みを採用。これは、20万個近くの包装容器の埋立処分の回避に相当する。

Q.このアプリ内で、ユーザーは経営に関する7つのバッジ、製品に関する5つのバッジから自身の気になる分野のバッジを選ぶことができますね。環境に関するものもあれば、社会に関するものもあります。これらはどのような仕組みなのか教えていただけますか?

CoGoウェブサイトより)

消費者と企業の間に生み出されるフィードバックの連鎖が、信頼でき、かつ計測可能であるために、CoGoアプリにはすばらしい要素がたくさん備えられています。サステナビリティについては、消費者それぞれの優先順位がありますから、自分にとって一番大切な課題を選択できる仕組みを提供することで、その意思をサポートしたいのです。私たちの目標は、世界レベルの認証制度を作ることです。私たちは信頼できる認証、規格、NGOの格付けプログラムを、製品に関するすべてのバッジ付与の基準に取り入れており、これには国際フェアトレード認証ラベル責任あるダウン基準(RDS認証)オーガニックテキスタイル世界基準(GOTS)海洋管理協議会(MSC)社会的企業マークなどが含まれます。これらの認証機関やNGOとパートナーシップを組んで事業を行っています。

「生活賃金」バッジに関しては、現在私たちは英国とニュージーランドで、実際に生活できるだけの賃金の支払い推進に取り組んでいる非営利団体「Living Wage Foundation(生活賃金財団)」と協働しています。すべての人に公平でエシカルな仕事をつくり出す上で重要な課題の解決を後押しするために、鍵となる認証を確実に取り入れられるよう、常に枠組みを発展させ続けています。

Q.そうした評価に関して、信頼性をどのように担保しているのでしょうか?

先ほどお話ししましたように、CoGoでは厳格な認定プロセスを設けており、すべての企業はエビデンスを提出しなければなりません。一方で、登録されたブランドが必ずしも100%サステナブルでないということも理解しています。100%サステナブル、というのは不可能ですし、CoGoを設立したのは、企業がその目標に近づくのを支援するためです。登録する企業としては、消費者が何に関心があるのかを知ることで、エシカルでサステナブルな取り組みを行うことの実際の価値を把握することができます。そしてCoGoアプリでより多くのバッジを獲得し、自らの企業としての取り組みについて情報発信することができます。

Q.最近新たに「カーボンフットプリント・トラッカー(Carbon Footprint tracker)」という機能を追加されましたね。一般の消費者にとって、自分のカーボンフットプリントを測ることはとても難しいことでしたので、個人的にこの機能はとてもありがたいです。この機能の追加を決断された理由、また、この機能の特徴を教えていただけますか? ウェブサイトでは「世界トップレベルのカーボンフットプリント専門家とデータ科学者のチームが製作したツールで、あなたのカーボンフットプリントを計算します」とありますが、具体的にどのような方たちと連携されたのでしょうか?

CoGoウェブサイトより)

この機能はこれまでで最も実現したいと思っていた機能であり、何カ月もかけて準備してきました。開発したのは私と、CoGoデータサイエンス・チーム、そして気候の専門家であるマイク・バーナーズ・リー教授です。私はCoGo創業以前、気候経済学者でした。バーナーズ・リー教授はランカスター大学でカーボンフットプリントの研究の最前線にいらっしゃる方です。この新しい機能はジョン・バレット教授率いるリーズ大学で開発された、カーボンフットプリント・データに基づいています。これは英国政府や世界自然保護基金(WWF)の算定ツールにも採用されているものです。

マイク・バーナーズ・リー教授は10年以上にわたり、企業にカーボンフットプリントの理解を促し、その削減方法について助言を行いサポートしてきました。CoGoアプリのリアルタイムの「カーボンフットプリント・トラッカー」は、彼にとって一般消費者向けの製品を扱う初めての試みで、「オープンバンキングのデータの使用は大きな進歩であり、一人ひとりが自分のフットプリントを計測し、削減するのをCoGoアプリが後押ししていくことに大きな期待を寄せています」とおっしゃっています。

Q.現在、CoGoアプリはニュージーランドと英国のみで使用できるようですが、今後、日本を含むアジア地域で配信することは考えていらっしゃいますか?  その場合、どのような課題が考えられますか?

私たちの夢は、世界のどの地域においても、エシカルでサステナブルな生活を実践しようとするときに頼れるアプリとなることです。近い将来、その夢が実現することを願っています。ちょうど一つの投資ラウンドを終えたところで、まもなくシリーズを終えることを目指しています。これによってニュージーランドと英国以外の国へ事業を拡大させることができると思います。

検討すべき課題についてですが、CoGoが複数の市場で機能するためには、まず、各地域におけるさまざまな認証制度や枠組みを理解し、対象地域において、どの認証を採用することができるのか、といった検討に時間をかける必要があります。現在のところ世界的な認定制度はわずかですので、私たちの“グッド・インパクト”という枠組みが、企業による倫理やサステナビリティに向けた取り組みを確実に道案内できるようにしたいと思います。

インタビューを終えて After the Interview

消費者は、CoGoアプリのような仕組みを通じて企業がどのような考えのもと、どのような要素を考慮して事業を行っているのか知ることができ、それらの情報を重要な評価基準として自身の消費スタイルを選んでいくことができます。そして消費者の間でこのような動きが広がれば、考えや行動を変える企業も増えるかもしれません。消費者も企業もCoGoアプリを通じて、それぞれの立場から環境や社会に貢献することができるのです。近い将来、日本でもCoGoアプリを通じてエシカルな活動や消費を気軽に楽しめる日が訪れることを願っています!

 

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