経験者に聞く 「夫婦で育休」という選択

2020 / 12 / 1 | 執筆者:EcoNetworks Editor

結婚、出産、子育て、介護、病気・・・人生におけるさまざまな転機に応じて、働き方を柔軟に変えていけたら、サステナブルな暮らしはもっと身近になるはず。ライフシフトのタイミングの一つ、子育てにおいて、今回は「夫婦で育休」という選択肢に注目しました。チーム・サステナビリティ(TSA)で実施した”シェア会”から、ある夫婦の例をご紹介します。


執筆:新海 美保


夫が1年間の育児休暇を取得

「男性の育児休業取得率 6.16%」「育休取得男性の取得日数5日未満 56.9%」ー内閣府が2020年7月に発表した男性の育児休業の状況を示す数字です。実は、日本の男性向け育休支援制度は、OECD加盟国のうち最も多くの日数に給付金が出されるなどサポートが充実していますが、利用者が極点に少ない、という実態があります。

10月に実施されたTSAシェア会のテーマは「夫婦で育休ー望ましい育児と仕事のバランスとは?」。ホストは、最近育休を取得したばかりの野澤 健さん(エコネットワークス代表)。ゲストは、今から約10年前に第一子を出産したTSAパートナーの柳田 真樹子さんです。「イクメン」という言葉がまだ珍しかった時期に、夫の啓之さんが1年間の育休を取得し、柳田さんは長い休みをとらずに仕事を続ける道を選びました。

当時、ベネッセ・コーポレーションで実験教室の立ち上げや商品開発のリーダーを担っていた柳田さん。流産の経験があり、「お腹の子は大切にしたい」と仕事量を徐々に減らしていましたが、出産前になって「やはり休めない」と夫へ相談。話し合いの末、「僕が休むほうがいいね」と、啓之さんが育休を取得しました。1年間という長い育休を男性が取得するのは、日本では今でも珍しいことですが、デンマーク人が経営する勤め先の企業は柔軟で、快く承諾してくれたそうです。柳田さん曰く、啓之さんは子どもの対応に慣れているわけではないし、離乳食を器用につくれるタイプでもない。「でも柔軟さはありました」。

そして、柳田さんは、出産から3カ月後に復帰。子どもは夫に預けて働きに出る日々をスタートさせました。母乳育児との両立は苦労が多かったものの、柳田さんは「私が仕事復帰、夫が新生児の育児と家事、という一般的な夫婦とは逆の立場にチャレンジしたことは、その後の夫婦関係がより対等になれるきっかけになった」と言います。

他方、夫の啓之さんは、妻の出産前から「主夫」生活に突入。母乳育児で寝かしつけに苦労したり、児童館や子育てサロンに通う母親たちの授乳姿に戸惑ったり・・・。マイノリティーな主夫ならではのストレスはありましたが、趣味の畑をしながら手作りの離乳食や布おむつに挑戦するなど、環境にも優しい「エコ育児」を楽しんでいたようです。そんななか、縁あって男性の育児参加を推進するNPO法人ファザーリング・ジャパンに登録。同じような”イクメン”が全国にたくさんいると分かり、仕事とは異なるジャンルのネットワークがどんどん広がっていきました。テレビや雑誌の取材依頼も多く、親子勉強会の講師を依頼されることが増えました。

冷凍保存しておいた母乳

正社員からフリーランスへ

柳田さんは今、小学校4年生と6年生の子どもの母として、またフリーランスとして多様な仕事を手がけています。

2人目の出産時は、仕事が落ち着いていたため、柳田さんが育休を取得。文字通り「夫婦で育休」を実践しました。そして、上の子が年長になるころに企業の正社員を辞めて、独立。「こどもみらい工房」という屋号でサイエンス教室を開き、個人事業主として活躍しています。

「思い切って踏み出したら、どんどん新しい世界が見えてきた」という柳田さん。タンザニアのカカオ豆を使ったフェアトレードチョコレートの製造・販売や無添加ドライフルーツの輸入販売ショップオーナー、シュタイナー学園やエコネットワークスの事務スタッフなど5つの仕事を掛け持ちしています。また、一企業に勤めていた頃に比べて、”働く場”の選択肢が広がり、自然豊かな神奈川県の藤野に移住しました。「以前は会社優先で自然が少ない場所に住んでいましたが、子どもの虫嫌いや小学校の教育環境に疑問を感じ、パートナーがギリギリ通える場所へ引っ越しました。藤野には子育て中の移住者も多く、地域のつながりを感じながら仕事も暮らしも楽しんでいます」。

夫・啓之さんの「布おむつ」育児の一コマ

「子育ては社会的に価値ある”仕事”」

シェア会に参加した子育て中のパートナーからは、「どちらかではなくどちらもやる、を前提に家族の状況に応じて必要な形を選べることが大事」「柳田さんのように、あらゆる面で柔軟な考えと前に踏み出すチャレンジ精神、そして楽しむ気持ちを持ちたい」など共感の声が寄せられました。

また、「最も大きな壁は日本社会における子育ての価値が低いこと。社会全体に『仕事>子育て』のような上下の位置づけがあるから、『子育てごときで1年も休めない』となってしまう」という指摘もありました。

「子育ては人類全体の大きなテーマ。子育ては皆でするもので、社会的に価値ある仕事だという考えが、日本にはもっとあっていい」という意見には、参加者一同うなずいていました。

1人目は夫が、2人目は妻が、育休をとるーー。その時々で夫婦がベストだと思う形を柔軟に考え話し合ってきた柳田さんのお話は、サステナブルな暮らし方や働き方を考える上で、たくさんのヒントがありました。

 

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