子どもと一緒に歩む「子育て期」 サステナブルに休むヒントは?

2022 / 8 / 31 | カテゴリー: | 執筆者:宮原 桃子 Momoko Miyahara

連載企画「サステナブルに休む」、第3回は子育て期がテーマです。第2回では、育休明けのエコネットワークス(以下ENW)代表・野澤さんから、こんなコメントがありました。「出産後だけ育休が必要なのではなく、子育て期を通してサステナブルに休めることが大切」と。幼児期、学童期、さらには中高生へと子どもが成長する中で、山あり谷あり、でも時々ゆっくりにもなる子育て期。どんな風に休めたらいいでしょうか。子育て中のENWパートナーと行った座談会(2021年11月実施)の様子をレポートします。


お話:

● 星野 美佳さん(ENWパートナー/社労士事務所「サステナ」代表)

社会課題解決に取り組む人のための社労士事務所「サステナ」を運営。ENWでは、独自のワークルールづくりに取り組むほか、2020年には「サステナブルに働くためのヒント集」の制作に関わる。

● 曽我 美穂さん(ENWパートナー/エコライター・エディター)

フリーランスのエコライター・エディターとして、「サステナブルな暮らし」などについて発信。ENWでは、企業支援やパートナーのネットワーク(TSA)のお世話役を担う。

聞き手:宮原 桃子

東京・世田谷区に暮らすライター。ENWでは、企業向けのサステナビリティ関連コンテンツ制作に取り組む。かつて暮らしたドイツにて、プライベートや家族の時間、長期休暇などを優先する社会を経験し、サステナブルに休むことを大事に考えている。


子どもと一緒に考える、休みのあり方とは

― 仕事と休み、どんな風にバランスを取っていますか?

社会保険労務士として事務所を運営する星野さん

星野さん: 個人事業主なので、仕事と休みは自分で調整しています。幼稚園に通う子どもがいるので、大体3カ月から半年のスパンで同時進行するのは、3つくらいの案件に抑えています。基本的に土日はお休みです。幼稚園の長期休みの時は、預かり保育に行ってくれるかどうか「子どもと交渉して休みを決めている」んです。

曽我さん: へ~、親が決めているケースが多い中で、面白いやり方ですね。

星野さん: うちの子は、自分で納得しないと動かないタイプなので。でも毎回交渉するのも大変なので、1か月分のカレンダーを一緒に作っています。子どもがいてもできる仕事と、1人で集中しなければできない仕事を分けて、時間をやりくりしながら進めています。

フリーランスのライターとして働きながら、英語講師もしている曽我さん

曽我さん: 私は、小3と小6の子どもがいるんですが、無理のない仕事量で働けるように心がけています。きっかけは、娘が小4の時に「さみしいから夜は仕事をしないで」と言われたこと。子どもたちにそういう想いはさせたくないと感じたので、それ以来土日や夜は基本的に仕事をしないようにしています。また、長期休みは子どもたちが家にいる時間が長くなるので、仕事量を減らすようにしています。午前中に子どもたちが宿題をやっている間に、私も仕事をするといった形で、子どもの状況に合わせながら進める感じです。

自分自身にとっての「休む」を考える

富山市に住む曽我さんは、近場の海によく行くそう。「ぼーっと海や空、鳥を眺めて深呼吸します」

― その中で、どんな時間が自分自身にとって「休む」になりますか?

曽我さん: 私にとって、休みは「立ち止まる時間」かな。釣りやキャンプ、登山などを楽しむ時間の中で、心も落ち着き、いい睡眠もとれて、まさに休みになりますね。また、平日も週1回午前中のテニス、週1-2回のオンラインヨガ、月1回フルートのレッスンなどの予定を入れて、仕事の合間に色々な休み時間を作るようにしています。

星野さん: 今の私は、完全にフリーな長い休みでのんびり…という休み方でなくてもいいんですよね。自分だけの時間とかやりたいことを、やりたい時間の中で工夫して持てれば、それが休みになっていると思います。例えば、週1回親子で受けているエレクトーンのレッスンは、一緒に弾いたり歌ったりする時間が楽しくて、リフレッシュになっています。子育ての時間を「タスク」ではなくて、自分もリフレッシュする時間にできるって思います。

「休みとはこうあるべき」にとらわれない

キャンプ好きな星野さんは、週末に家族でキャンプに行くことも。「いい景色をゆっくりと眺める時間は、格別です!」

― 心地よい休みのあり方は、人によってさまざまですね。

星野さん: 自分と仕事の距離感って、人それぞれですよね。仕事を0にして100%休みにしたいから、その前に猛烈に働く人もいれば、仕事30%・休み70%みたいな休み方をする人もいる。もちろん法律的には、最低週1日の業務から完全に切り離された休日を確保しなければなりませんし、長期休暇中も業務連絡をせずに個人の休みを尊重することが必要です。その上で、自分にとって無理のない休み方を模索したらいいんだと思います。

曽我さん: 私も、公私ともに「サステナブルな暮らし」をテーマにしているので、例えば趣味で山登りをしつつ、仕事として「山登りとゼロウェイスト」についてコラムを書く、毎日使っているコンポストについてのレポートを記事を書くといったように、生活と仕事の境界線があまりないと思うことがあります。白か黒か、0か100かといったこうあるべき」にとらわれず、自分らしいサステナブルな休み方を見つけるのがいいのかなと思います。

星野さん: それに、休み方って、ライフステージによって変わると思うんです。今はまだ娘が小さくて、色々とやらなければいけない時期だけれど、人生を長い目で見れば、子どもが大きくなればゆっくり休みを取れるだろうなと。その時々の状況の中で、自分や家族がご機嫌でいられるベストな休み方を編み出していくものなんでしょうね。

「自分らしい休み方」を意識し、互いに尊重する

座談会中の星野さん、宮原、曽我さん(左上から時計回り)

― ただ、サステナブルな休みを実現したくても、なかなかできなかったりもします。自分自身や周りにできることって何でしょう。

星野さん: まず「自分が働く時間を意識する」ことは大切です。もし長時間労働になっているなら、それは効率の問題なのか、量の問題なのか、どういう工夫の余地があるのかを考えて、自己コントロールしていかないと休めないですよね。

曽我さん: 本当にそうですね。私はTogglという時間管理システムを活用しているんですが、自分の仕事時間を見える化すると、とてもいいですよ。

星野さん: あとは、休むにあたっては、お互いの働き方・休み方への理解・尊重が欠かせないですね。自分のニーズやスケジュールを、仕事仲間やクライアントに伝えることも大切かなと思います。新しいクライアントには「私はこういう働き方をしているので、この形でよろしければ」と伝えています。お互いに尊重し合える関係性ができるといいですよね。

曽我さん: 仕事仲間の稼働時間や休み方の情報をデータベースで共有できたりすると、皆がより働きやすくなるかもしれないですね。

― 家庭内でのパートナーとの連携も、お互いがしっかり休むために欠かせませんね。

曽我さん: 我が家では、お互いが好き・得意な家事・育児を分担しあっています。とはいえ、ストレスや不満が生まれたら、きちんと&冷静に伝えあうようにしていますね。例えば、それぞれが担う家事をリストアップして、お互いの状況を客観的に見ることで、スムーズに分担の見直しができたこともありました(参考:AERA「共働きの家事育児100タスク表」)。

星野さん: うちはパートナーの仕事が忙しいので、家事・育児の多くは私が担っていますが、彼が娘の精神的なサポート役になって娘の話をじっくり聞いてくれ、私だったらお小言になってしまいそうなところも、娘の気持ちを大事にしながらうまくフォローしてもらって家庭内のバランスをとっているのかなと思います。

そして、お互いが「どんなタイミングでどんな休息時間が必要なのか」を理解し合うことも大切ですよね。パートナー同士で性格も性質も違うわけですから、仮に同じ状況でも疲れや必要な休息ケアはそれぞれ違うので…。私も、最近ようやく理解し合えるようになってきました。

曽我さん: そうですよね。そういう意味で、我が家も、休みの時にお互いがやりたいことには口を出さないというか、尊重するようにしていますね。ただ、星野さんも我が家も、パートナーが非常に忙しい職場環境にいることを考えると、サステナブルな休みを実現するためには、家庭内の努力だけでは難しいことも多いなと感じています。

― これからもっと多くの組織が、サステナブルに休める環境や仕組みを整えていく必要がありますね。

曽我さん: ENWでは、休む人に「いってらっしゃい、楽しんで!」という声がけがよくあって、休みはウェルカムという雰囲気があります。こういう空気感が世の中にも広がるといいなと感じています。

星野さん: 今は法律的・制度的に、さまざまな人のワークスタイルにあわせて柔軟な制度設計ができるようになっているので、組織側が実現できることは多いと思います。組織の変化を促すためにも、一人ひとりが「自分はどういう働き方・休み方をしたいのか」を意識し、共有していくことがカギになっていくのではないでしょうか。


お二人のお話から、働き方も生き方も多様化する中で、休み方も多様であっていいと感じました。自分らしいサステナブルな休みを実現するためには、まず「自分にとって心地よい休み方」を自分自身が意識すること、そして多様な休み方を尊重する職場環境や仕組み、周りの意識を整えていくことが大切ですね。

次回は、長い人生の中で誰もが直面するかもしれない「介護・看護」がテーマです(10月掲載予定)。経験者を交えながら、こうしたライフステージにどのようにサステナブルに休むかを考えていきます。

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Photo by Lucas Alexander on unsplash

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