Interview: サーキュラー・エコノミーの原則に基づいた新しい形のサービス・製品を生み出す

2018 / 10 / 2 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

”経営トップがサーキュラエコノミー(CE)の重要概念について学べば、新たな製品・サービスの創出やコスト削減を実現するためにCEのメソッドがいかに有効であるか分かっていただけると思います。”

お話:Elana Harrison氏 サーキュラーエコノミー研究者・コンサルタント
聞き手:佐原理枝

はじめに

製品やサービスのライフサイクル管理でサステナビリティを追求しつつ、ビジネスの転換と発展を促進することを可能にすると言われるサーキュラエコノミー(CE)。今後、事業に取り入れる企業がますます増えると期待されます。そのような状況の中で、これからの経営層に求められることはなんでしょうか。エレンマッカーサー財団のCE100プログラムで経営層向けオンライントレーニングの開発に関わり、ご自身でもサーキュラーエコノミー導入ワークショップを行っているCE研究者・コンサルタントのエラナ・ハリソンさんにお話を伺いました。

インタビュー

Q1: サーキュラー・エコノミー(CE)の研究で重点的に取り組んでいらっしゃるのはどのようなことでしょうか。

CEの中でも、スタートアップのビジネスモデル構築、労働、イノベーションを主な研究対象としています。
昨年はミュンヘンとベルリンにある企業に対しインタビューやケーススタディを行っていました。関わった企業は、ヨーロッパ市場向けにモジュール式携帯電話や修理のできる携帯電話を開発している企業から、カップ返却システムを導入しドイツ国内のカフェの紙使用量ゼロの実現を目指す企業まで多岐にわたります。また、エレン・マッカーサー財団の「サーキュラー・エコノミー100(CE100)」に参加する企業幹部向けのオンライントレーニングコースの開発も手伝いました。CE100にはアップル、マイクロソフト、イケアなどの企業も参加しています。

Q2: エラナさんのワークショップの参加者は、どのようにして製品を「サーキュラー」なものに再設計できるのか、またどのような興味深い結果を得られるのか、教えてください。

消費者にしても生産者にしても、サステナビリティは敷居が高く取り組みにくいと感じる人が多いのではないでしょうか。日常にある製品をどのように作り替えたら、無駄や汚染をなくし、原材料の使用年数を延ばし、生態系を再生できるか。私のワークショップで目指しているのは、具体的な何か、つまり普段の生活で使う物に参加者が目を向けるようにして、抽象的な問題をシンプルに捉えることです。例えば、トースター、歯ブラシ、靴など、参加者は、その製品が何で出来ているか、どのように作られているか、誰が使用するものかなどを考えます。参加者の大半は、こうした日常にある製品についてじっくり考えることに慣れていませんが、実際にやってみると、再生方法や生産者が意図していなかった利用目的などについて、クリエイティブに考えてくれます。この事実はとても重要で、変化する市場価値への小さなステップにもなります。

Q3:製品やビジネスモデルを再設計するために、ワークショップの参加者はステークホルダーマッピングの手法を学びます。製品やビジネスモデルにCEの概念を取り入れようと再検討する時、なぜステークホルダーマッピングが重要なのですか?

ステークホルダーはだれかと考えることで、サステナビリティ戦略の方向性を改めて検討することができます。例えば歯ブラシの場合、企業(メーカー)、小売業者、使用者全体がステークホルダーとして考えられます。これらのステークホルダーはそれぞれ異なる要望やニーズを持っており、皆さんがデザイン、コスト、原材料の使い方、製品の生産量を変更しようとする時には、それぞれの要望・ニーズを考慮しなければなりません。例えばヘルスケア製品の製造販売企業ハンブル社は、自社製品の歯ブラシでプラスチックの使用を廃止し、竹とナイロンという、よりサステナブルな原材料で代替しました。ドイツのDMなどのドラッグストアでは、ほとんどの店舗でプラスチック製の他の歯ブラシと並んで置いてあり、消費者も、従来のものに代わる製品の存在を意識するようになっています。ステークホルダーのマッピングを通して、サステナビリティ戦略の成功をより確実にすることができます。

Q4: CEワークショップに参加する企業が得られるメリットはどのようなものでしょうか。また、日本企業に向けてのメッセージをお願いします。

新技術の開発、消費者の選好の変化、人口増加や気候変動による自然資源の利用規制などにより世界はどんどん変化しています。事業を成功させるためには、企業は、サステナビリティ、特にCEの概念を考慮しつつ事業戦略を構築しなければなりません。消費者は以前に増して、環境・社会的基準に基づいて企業を評価するようになってきています。日本企業もマネジメントツールとしてCEトレーニングを活用することを強くお勧めします。経営トップがCEの重要概念について学べば、新たな製品・サービスの創出やコスト削減を実現するためにCEのメソッドがいかに有効であるか分かっていただけると思います。最後に、正しい行動は必ず事業にも有益です。必要なのは、変化を起こそうという強い意志のあるリーダーシップ、それだけです。

貴重なご意見をありがとうございました!

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