ENW Lab.
働き盛りの休み方、カギは「一日休養 一日教養」
2022年4月にスタートした「サステナブルに休む」企画では、「男性&経営層の育休」(第2回)や「子育てとの両立」(第3回)、「介護・看護との両立」(第4回)というテーマを通じて、ライフステージ各フェーズでの休むことの意義や休み方の工夫をパートナーの皆さんにお話してもらいました。
第5回のテーマは、働き盛り期の休み方です。「働き盛り」とは、年代問わず一生のうちで最も精力的に仕事ができる時期でもあり、心身ともにエネルギーを仕事に費やせる時期でもあり、自分自身に集中できる時期でもあるでしょう。とりわけ、キャリアの始まりに当たる時期は、若さも相まって仕事上の経験や専門性を積むためについ無理をしてしまいがちかもしれません。一方で、昨今の人手不足や育休等で長時間働けない人たちをカバーする人材として期待され、業務が過剰になってしまっている人も少なくないかもしれません。
そこで今回は、エコネットワークス(ENW)のパートナーである立山美南海さんにお話を伺いました。まさに働き盛り期にある立山さんのお話は、意識的に休むことの重要性とともに、休むことを自律的なキャリア形成の一環と捉えることの大切さを教えてくれました。
執筆:木村 麻紀(ジャーナリスト/ENWパートナー)
湘南在住。ENWでは企業のサステナビリティコミュニケーション支援をメインに、ENW内部の集合的な学び&交流の企画、ファシリテーションを行う。「気合いと根性」でキャリアを築いてきた20代を思い出しつつ(苦笑)、立山さんのキャリア形成に対する考え方に感心することしきりでした。
専門性を磨くことで休めるように
立山さんは大学卒業後、フリーの日英・英日翻訳者としてキャリアをスタート。2020年秋からENWと雇用関係になり、言語事業のプロジェクトマネジャーや調査・分析事業のアナリストとして重要な業務を担っています。
フリーランスで仕事を始めた当初は、翻訳のプロとして自立して安定的に受注し続けなければ評価されず、収入も得られないというプレッシャーから、夜間も週末も仕事をすることが多く、ストレスがかなりあったという立山さん。安定的に受注できるようになり、お断りしても大丈夫と思えるようになってからも、休みの優先度は低かったそうです。それはなぜか――。
「フリーランスなので、お断りしたら『あの人に頼むのはやめよう』と思われないか心配でした。週末にきちんと休みたかったのですが当時はなかなかうまくいかず、毎週休めていたわけではありませんでしたし、休めたとしても単純に休息という位置づけでした」
ENWとの仕事を通じて徐々にサステナブルな働き方を意識するようになると同時に、サステナビリティ(環境・社会課題)への関心も高まり、この領域の翻訳スキルを高めていきました。専門性が高まるとともに、無理をし過ぎず働くことができるようになり、休みの優先度もアップ。仕事を楽しむ余裕もでき、長期的なキャリア形成や翻訳以外のスキルにも意識が向くようになったそうです。
休み=より良い仕事のための準備期間
2020年秋からはENWと雇用契約パートナーに。このあたりで、仕事と休みの捉え方がはっきりしてきたと言います。休みの日は、仕事に関連する外部の講座を受講したり、本を読んだりしながら勉強することにも充てています。
「私にとって仕事は、より良い暮らしの基盤であり、知的好奇心を刺激する機会でもあり、仕事人として成長する場です。そして休みは、仕事に戻る時にまた楽しめるようにリフレッシュするとともに、より良い仕事をするための準備期間だと思っています。松下幸之助※は週休二日制を導入するにあたり、休みを休養と教養の双方に充てることを掲げて『一日休養、一日教養』と言っていましたが、自分もそのように捉えられるようになりましたね」
※松下電器産業(現パナソニック)創業者。同社は日本で初めて週休二日制を導入したことで知られる
ENWの雇用契約パートナーになったことで、まとまった休みを取りやすくなったという立山さん。休むことで仕事への活力が湧いてきて、良い仕事ができるという循環が生まれた気がするそうです。
「私自身、一日休養、一日教養と厳密に分けているわけではありませんし、忙しい時期は休養が中心になりがちです。でも、トータルで見てバランスが取れているのが心地よい状態で、自分にとっては一番良い休み方だと感じます」
休みは時間数よりも感覚を大切に 組織文化や制度も必要
立山さんは現在、状況に応じて、エコネットワークス以外の会社からも仕事を引き受けています。プロジェクトから派生するさまざまな関連業務もある中で、必要な時間数を見通しにくくなったり、他の仕事を受けすぎてしまったりして、うまく調整してバランスを取るのが難しいと感じることもあるそうです。それでも最近は、休まないとまずいと感じるラインが自分なりに見えてきたと言います。
「何時間働いたから休むというよりも、そろそろ休みたい、休まなければという感覚を大切にしています。同世代と比べても、休息と教養のバランスも取れているほうだという気はします。より良く働くために休むことを意識できると、休みやすくなるのではないでしょうか。ただし、休みが取りやすい組織文化や制度もやはり必要だと思います」
ご参加いただいた皆さんからは「働く一人ひとりも、組織も、休むことの価値を前向きにとらえることが大切だと思った」などの感想が聞かれました。
ENWは、今でこそ当たり前になってきたリモートワークを、20年前の設立当初から続けてきました。働きやすく、休みやすい組織文化にもひときわ気を配ってきた自負もありますが、現在参画するパートナーの皆さんは実際どのように感じているのか――。年明けの最終回では、私たちENWがこれからも休みやすい組織文化を育み続け、パートナー一人ひとりが活き活きと働き続けられるために何をすべきか、ワークショップ形式で考えていきます。