バトンを渡す~多くの人が関わったパーパス策定

2025 / 2 / 6 | カテゴリー: | 執筆者:mihosoga
森の道

(Photo by Miho Soga)

エコネットワークス(ENW)のパーパス策定には、多くのパートナーが関わってきました。その様子は、さながらリレーのバトンパスのようです。

今回は、最初の議論からパーパス策定までバトンがどのように引き継がれたのか、それぞれのプロセスで中心となり関わってきた方々に話を聞きました。

パートナー:ENWの事業に携わる人。雇用契約者、業務委託契約者の両方を含む。


執筆:曽我美穂
富山県在住のエコライター、エディター。ENWでは、プロジェクトマネージャーやコミュニティ事業「TSA(Team Sustainability in Action)」の全体運営担当を務めている。


枠組みづくりから、マイパーパスの議論へ

パーパス策定につながる議論がスタートしたのは、2020年のことです。ENW代表の野澤健さんの呼びかけで、この年から組織の中長期的な方向性を考える「ダイアログ(対話)」をパートナー誰もが参加できる形で開始。その後、「組織」「事業」「文化」の3つの分野で議論を重ねました。2年間で計24回におよぶ対話を経て、目指すべき方向が見えてきました。

野澤さん写真野澤健

組織の目指す方向性を、ボトムアップで考えたいとスタートした本プロジェクト。キックオフ時点では、これだけの時間をかけてじっくり進めることも、『パーパス』を策定するというゴールも、想定していませんでした。あえて詳細に設計せず、その都度、方向性を確認しながら、一歩一歩進めていく。それが結果的に、多様な人が多様な関わり方をし、バトンを手渡していく動きにつながりました。

野澤さんからバトンを受け取ったのは、取締役の二口芳彗子さん。組織としての方向性が見えてきたところで一人ひとりの思い描く「Myパーパス」を出し合い、重なり合いを探るワークショップを提案し、実施。「私たちのパーパス(存在意義)」のベースをつくり上げました。

二口さん写真二口芳彗子

育児休暇に入る野澤さんに代わり、具体的な議論をリードする役割を担いました。当時注目を集めていた「パーパス経営」にヒントを得て、ENWのパーパスをみんなでつくり上げる、それも「Myパーパス」、つまり一人ひとりが自分の存在意義と考えていることが響き合い生まれるものにできたら、と思ったのです。そこで、まずは「Myパーパス」を考えるワークショップを開催しました。あるパートナーの方が開催後の気づきとして、他のコミュニティではスキルだけを提供している感じだけど、ENWは全人格的に関わっていいのだと思える、という趣旨のコメントをくださり、うれしかったですね。

みんなで議論し、パーパスの文言を確定

ベースができたところで、パーパスをより具体的な文言や図に落とし込む議論に移りました。この段階では、ENWパートナーの中から事務局メンバーを募集。集まった5人がたたき台をつくり、それを基にオンラインで対話セッションを行いました。ファシリテーションを担当した木村麻紀さんは、そのときのことを以下のように語ってくれました。

木村さん写真木村麻紀

パートナー一人ひとりがパーパスに向き合った時間を経て、ENWとしてのパーパスをつくり上げたあの時間は、今振り返ると、混沌とした状態から新たな時代を迎えるために欠かせないプロセスだったのではないかとも思えます。

こうして出てきたキーワードが「Team Sustainability」「雫を落とす」「波を起こす」といった言葉です。世界に広がるENWパートナーのまわりに、サステナブルな社会につながる波を起こしたい。そんな想いが込められた言葉をつなぎ合わせたり、練り直したりしながら、パーパスの文言を完成させました。

purpose

冒頭の「Foster」という言葉は、翻訳者であるSarah Noorbakhshさん、二口さん、山本香さんが中心となって選びました。Fosterは日本語に訳しきれない言葉なのですが、「考え方や感情の成長や発達を見守り、促していく」という意味を含んでいます。

パーパスを伝える冊子を制作

パーパスの一文に込めた想いや、その実現に向けたENWのスタイルや考え方を、社内外にうまく伝えるにはどうすべきか? その議論をする中で「イラスト入りの冊子をつくろう」というアイデアが、自然発生的に生まれました。

制作のプロセスとして、まずライターの小島和子さんが中心となって冊子の文章を考えました。

小島さん小島和子

日本語のコピーを考える立場でパーパス策定のプロセスに参画しました。心がけたのは、あえて仕事モードをオフにして、自分の言葉で語ってみようという点です。その方が、多くの「私」がそれぞれの想いを乗せられるかな、と。 結果的に、ずいぶんと「余白」の多いコピーになりました。が、だからこそ対話を促すきっかけになるのでは、とも思います。

イラストを担当したのは、デザイナーの戸塚晶子さんです。

戸塚さん戸塚晶子

オンラインベースでつながりながら効率的に業務をこなすワークスタイルのENWですが、同時に、関わる一人ひとりの体験から生まれる想いを大切にしています。そこで、今回のメッセージが持つ体温を伝えるのにふさわしい表現として水彩を選びました。線を引く一瞬、色を置く一瞬、ぼかす一瞬。描いたのは私ですが、みんなの想いをその一瞬一瞬に込めました。手でふれ、つくり手の体温にふれられる紙の冊子を通じてENWのスピリットを表現できたことは、すばらしい経験になったと感じています。

印刷、製本してENWパートナーに届けるプロセスにおいても、サステナビリティへの配慮を大切にしました。担当した関澤春佳さんは次のように語っています。

関澤さん関澤春佳

力強さのあるメッセージに柔らかなタッチのイラストがマッチしていたので、ENWらしいアウトプットの形を考え、細部までこだわり抜いたものにしたいと強く思いました。紙は環境に配慮したバナナペーパーを、印刷はカーボンオフセット付きの印刷を選択。その他にもコットン100%のカラフル毛糸、FSC認証の紙袋を使うなど、関わる素材すべてにおいてサステナビリティに配慮しています。穴あけ、紐通し、発送などの作業は、うちの近所でカフェを運営している就労継続支援B型事業所の「Style」さんにご協力いただきました。

就労継続支援B型事業所:一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供および生産活動の機会の提供を行う施設(参照:厚生労働省 障害者の就労支援対策の状況

パーパスの冊子

冊子は、はがきサイズ。自分の好きなページを額などに入れて飾ることができます(Photo by Miho Soga)

パーパスを広めるフェーズへ

これからは、パーパスを社内外に広めていく段階です。サステナブルな社会の実現に向けて意思ある個人や組織とつながり、共に変化を生み出していくため、ENWでは「パーパス広め隊」というプロジェクトを立ち上げました。隊長の岩村千明さんは次のように話してくれました。

岩村さん岩村千明

パーパス広め隊の隊長として、パーパスを社内外に浸透させていくための企画の立案や実行を担っています。具体的には、パーパスを軸としたENWの取り組みをウェブサイトやnoteで発信するほか、ENWパートナーが日々の業務の中でパーパスをどう実践していくかを考えるワークショップなどを実施したいと考えています。たくさんの方々の想いがギュッと凝縮されて生まれた今回のパーパス。それをさらに多くの人たち、サステナブルな社会の実現に向けて意思ある方々に伝え、波を起こし広げていくため、皆さんと共に様々な取り組みに挑戦していきたいです

今後に関するコメントは、他にも寄せられました。

「これから、どんな波を起こそうかー。パートナーの皆さんと大真面目に考え、動いていきたいです」(木村さん)

「ここから、この広がりはさらに加速していくはず。一員として、共に進めていけることが楽しみで仕方ありません」(野澤さん)

「このパーパスが、どんな形でどこまで羽ばたいていくのか、とても楽しみです」(小島さん)

ENWでは、現在パーパスを軸とした「2030年にありたい姿」や、そこに向けた事業計画について対話を重ねています。みんなの想いが込められたパーパスを胸に、これからも日々、取り組みを続けていきます。

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