ENW Lab.
硲允さんインタビュー(第3回目)
*こちらのインタビューは、硲允さんインタビュー第1回目・2回目からの続きです。
画像:「藤野に引っ越したENW事務所から見える景色」硲さん撮影
大田: お話を聞いていると、畑を始めたり毎日の生活を大事にする意識を持ったり、といった現在の硲さんのライフ・ワークスタイルの根本的となっていることは、だいたいすべて1年ほど前から始まったように聞こえるのですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
硲: フリーランスで翻訳の仕事をしていこうと思ったときに、日本語をきちんと勉強したいと考えました。
連れが志賀直哉の作品を読んで感動して、僕にも読んでみてと以前から言われていて、僕は気が乗らなくて読まずにいたのですが、志賀直哉の日本語は洗練されていると聞いたことがあるのを思い出して、読んでみました。 最初に読んだのは「和解」だったと思います。
志賀直哉が日常で感じることをとても敏感に感じ取って、日常の小さなことを大事にしてそういう小さな一コマを切り取って作品にしているのを読んで、自分が大事にしたかったのはこういうことだと思いました。それから文学に興味をもち、いろいろな作品を読んだり、自分でも日頃感じたことや考えたことをノートに書くようになりました。
これが2年半ほど前のことで、それからの2年間は、自分の内面を見つめることを大事にして日々を過ごしてきました。この2年間は、本を読むことが自分にとっての勉強でした。 でも、本を読んで頭で概念的にあれこれ考えるのは最近になって一段落着いた気がして、結局は自分の体験によっていろいろ感じる中からしか自分の考えは生まれてこないと思うようになりました。そう思うようになってからは、本もあまり読まなくなり、勉強しなければという思いが薄らいでいって楽になりました。
大田: 自家栽培のことも聞かせてください!
硲: 近所で使われなくなった土地を畑にかえた場所があり、8平方メートルの区画が30個くらいあるのですが、そのうちの一つを借りています。農薬や肥料を使わずに、野菜が元気に育っています。今年の夏は枝豆がたくさんとれて、最近はそれが熟して大豆になったので、この冬はその大豆で味噌を作ろうと思っています。
画像:畑で収穫した大豆、硲さん撮影
大田:(絶句!)。 そういうこと自体が、エコネットワークスも目指すサステナブルな生き方だと思うのですが、硲さんはご自身の自己紹介で、「サステナブルな働き方」に「自分に嘘をつかない働き方」だと答えておられましたが、それは具体的にどういうことを指しておられるのか詳しく聞きたいです。
硲: 仕事をしているときに自分がどう感じているかを正直に感じながら仕事をしたいと思っています。どういうことに興味があるのか、何に心を動かされるのか。あるいは、あまり気が乗らないとか、面倒くさいとか、そういうことは感じないようにしたほうが効率的に仕事ができる場合もあると思いますが、自分の気持ちをごまかしながら仕事をしていると、それが積もり積もってどこかで限界が来ると思います。常に自分の心の声に耳を傾けるように心がけています。
それから、自分が担当する範囲の仕事をできるだけ完璧にやり遂げることは大事ですが、その仕事をすることでどこに、あるいは誰にどういう影響があるのかを考えるように心掛けています。自分の受け持った仕事を完璧にできれば自分の評価が上がり、仕事相手に満足してもらうことができますが、それよりも大事なことがあるかもしれない、ということを忘れないようにしたいと思っています。…