小野梨奈さんとの「働き方」のお話(第2回目)

2013 / 4 / 8 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks

(第1回目はこちら

小野:ところで、私は、パートナーと二人でフリーランスというスタイルについて聞いてみたかったんです。二人ともフリーランスで月々の収入にばらつきがある中で、どうやって生活をやりくりされているのですか?

硲:うちはまだお金がかからないですからね、子どももいないから。お子さんがいるとお金がかかりますよね。

小野:うーん。そうですね。今は保育園代とかかな、大きいのは。Rhythmoonで取材していると、女性フリーランスといってもいろんなタイプがあって。一家の大黒柱のように稼ぎます、という方もいれば、パートナーは会社員で安定した収入があるので、自分はそこまで稼がなくてもいい中で真剣に仕事をしている方などさまざま。自分の働き方って、パートナーとの関係とか、家の事情とか、そういうのも当然ですが関わってきますよね。

硲:相手に何を求めるかにも依りますよね、ちゃんとお金を稼いでくれないと困るという女の人だと、ぼくはこんな生活は許されていないかもしれない。

保育園代などは、毎月かかるお金だから、たまたま2、3カ月仕事がなくなったり減ったりしたら大変ですけど、うちだったら、減ったらお金を節約したら何とかなるという安心はまだありますね。もっとお金が必要になっても、お金を稼ぐためにやりたくない生活をするのはいやだから、もっとお金のかからない生活をするかもしれないです。

小野:それができるのならそれが一番いいと思います。フリーランスという働き方は、とくに子どもが小さい今の時期はすごくいい働き方だなあと実感してます。でも、万人におすすめできるスタイルではないので、リズムーンではつねに中立な立場でメリット・デメリットの両方の側面からフリーランスの情報を発信したいなと常に思っています。

硲:デメリットについては、例えばどういうことを感じていますか?

小野:例えば、会社員に比べると社会的信用が低いこととか。震災を機に、多様な働き方へのうねりが起こりつつあると思うのですが、現状、働き方によって社会保障などにも差があるのが事実。日本は、政府の税源確保という観点からも正社員を推奨し優遇する制度になっているそうです。まずは、そういった土台をフラットにしていかないと、働き方の本当の意味での多様性が広がらないんじゃないかなと感じています。そういうことはすごく興味があって、研究テーマ的にやってみたいなと思っています。

硲:今いろんな国の事情を調べているんですよね?

小野:そうですね。まだこれからですが、すごく興味があって、調べてみたいなと思っています。個人で働きやすい国とか。どこかのタイミングで、海外で暮らしながら働くという夢があって。そして、最後は地元北海道に帰って自然の中で暮らしながら、今と変わらずやりがいのある仕事ができるといいなあと。硲さんも、田舎暮らしに興味があるんですよね?

硲:近いうちに田舎に引っ越して、なるべく自給自足の生活がしたいなと思っています。

小野:畑で食べ物を育てることに興味はあるのですが、私、サボテンも枯らしてしまうズボラな性格なので……。そんなに簡単に作れるものなんですか?

硲:以前はそんなに簡単にできるのかな、と思っていたんですが、やってみると、野菜は種さえ蒔いて、土に合っていたら、ほとんど放っておいても自然に育つんだとわかってきました。今は8平方メートルの狭い畑なのですが、自分で食べる野菜を全部自分で育てようと思ったら、これを何倍かにしたらできるんだな、と想像できるようになってきました。

小野:なるほど。先日、自分で野菜づくりをしている女優さんのインタビュー記事を読んでいたら、「自分で食べものを育てる術を身につけたら、働くことに対する価値観が変わった。それまで仕事は生きるため、生活のためという要素が強かったけど、自分で食べ物をつくれば何とか生きていけると思えるようになったら、じゃあ“何のために働くのか、どんな仕事をしたいのか”というのが変わってきた」というようなことが書かれてあって。自分で食べ物をつくれるようになると、そんな変化もあるんだなと思ってますます興味がわいてきました。

硲:似たようなことはありますね。広いところで畑を持てたら自分で食べる分くらいは育てられるだろう、と。今はたまたまそういう場所に住んでいないだけで。

それから、人から食べものを買うときの感じも変わってきました。野菜とお米は知り合いの農家さんから届けてもらっていて、今はお金を払って買っているけれど、買うためのお金がどんな仕事をして出てきたお金なのかが、その農家さんたちにとってもきっと重要なことなんだろうなと思うようになりました。農家の方たちは、畑で野菜やお米を育てて、それをお金と交換するわけですけど、それが変な仕事をして稼いだお金だといやだろうなと。だから、農家の方たちがもらっていやじゃないお金を稼ぎたいなと思うようになりました。直売だと、この人の食糧になっているんだ、この人が生きるため、活動するためのものを自分たちは育てている、というのがすごく見えやすいと思います。今は自分が食べるものをほとんど育ててもらっていて、その分、自分は何か手抜きしているような感じもするのですが、自分はお金と交換で食糧をもらっているんだから、自分の仕事で人の役に立つことをしないといけないなと思うようになりました。

小野:顔が見える人から買うことで、そういうことを余計に強く思ったり感じたりするようになったという感じなんですね。

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