やる気=火? イメージから語彙を広げる

2019 / 8 / 28 | 執筆者:EcoNetworks


ある非財務レポート英訳プロジェクトで、英語ネイティブ翻訳者が「従業員のやる気を促す」をfuel employee motivationというようにfuel(火を付ける)を用いて訳していました。fuelの他の案としてあげられていたのは、spark(火花を散らす)です。どちらも「火」に関係のある言葉です。

そこから、Motivation is fire(やる気は火である)という「概念メタファー」が根底にあるのではと考え、それに基づいていろいろな表現を考えてみました。

概念メタファーとは、ある物事を別の物事に置き換えて理解することです。有名なのは、Time is money(時は金なり)。お金を浪費する、稼ぐなど、お金の文脈で使う表現を時間に転用して、時間を浪費する、稼ぐと表現できます。「時」という抽象的で分かりにくいものを「お金」という具体的で分かりやすいものに置き換えて、「時」とは何かを捉えようとする仕組みが概念メタファーです。

他の例としては、Life is a journey(人生とは旅である)やArgument is war(議論は戦争である)などがあります。

「やる気=火」が成り立つと仮定して火の特徴をやる気に当てはめてみると、「やる気を○○する」の英訳としていろいろな可能性が考えられます。

火は、付くものです。「火を付ける」という意味の英単語には、fuelやigniteがあります。どちらも、fuel/ ignite employee motivationというようにmotivationと組み合わせて「やる気を出させる」という意味で使えます。もともとigniteは「着火」、fuelは「燃料を注ぐ」というニュアンスなので、そこから「やる気」の状態もイメージできます。ignite employee motivationと言うと、パッと火が付くようにやる気が生まれる瞬間に焦点を当てているイメージです。fuelを使うと、油を注いで火の勢いを強くするように、力強く動的な印象を受けます。

爆発も火に関する言葉です。「爆発する」の英単語と言えば、explodeです。explode employee motivationと言うと、爆発的にやる気が高まる様子が目に浮かびます。

また、火は消えるものでもあります。「火を消す」を意味する代表的な英単語はextinguishです。extinguish employee motivationと言うと、「従業員のやる気を削ぐ」といった意味になります。燃えていた火がシュっと消えてしまうように、やる気がなくなる様子がイメージできます。

このように概念メタファーをもとに考えてみると、言葉遊びのようなインパクトのある表現を作るヒントになることがあります。身の回りの概念メタファーを普段から意識して、ご提案できるボキャブラリーの幅を広げていきたいです。

(翻訳者、翻訳コーディネーター/立山美南海)

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関連記事:インパクトのある表現 ~ fuel「火を付ける」「あおる」~

参考文献:Metaphors We Live By(George Lakoff、Mark Johnson著)
「レトリックと人生」という邦題で日本語版もあります。

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