2018年、今年の言葉

2018 / 11 / 29 | 執筆者:Yukiko Mizuno


Photo by Nick Youngson CC BY-SA 3.0 Alpha Stock Images

英オックスフォード大学出版局が選ぶWord of the Year(今年の言葉)が発表されました。2018年の世相、空気、関心事などを反映する言葉として選ばれたのは、toxic。「毒性の、有毒の」という意味の形容詞です。英オックスフォード大学出版局のデータによれば、toxicは2018年に辞書サイトoxforddictionaries.comでの検索頻度が45%増えました。

興味深いのは、使用される文脈にも広がりが見られたことです。「有毒」という言葉本来の意味だけでなく、比喩的な意味での使用も多くなりました。

以下は、toxicと一緒に使われる頻度の高かった単語のベストテンです。

1. Chemical
2. Masculinity
3. Substance
4. Gas
5. Environment
6. Relationship
7. Culture
8. Waste
9. Algae
10. Air

第2位に入ったのは、masculinity。「男は人に頼ってはいけない、むやみに感情を表に出してはいけない」という伝統的な男性観や男性優位の意識は、女性差別主義、暴行や暴力的行為につながり、男性の健康や自殺率の高さにも影響するという指摘があります。こうした「有害な」男らしさを表わすのがtoxic masculinityです。今年、性被害をSNSなどで告発する「#MeToo(私も)」の動きが世界的な広がりを見せましたが、toxic masculinityは、こうした性被害の根底にある問題の一つとして注目されました。

第5位のtoxic environmentという表現も(有害物質に汚染された環境を表わす場合もありますが)、従業員の心の健康に影響を及ぼす過酷な労働やハラスメントを伴う労働環境を示す比喩的表現として用いられます。toxic relationship、toxic cultureも、人間関係や企業文化の文脈で使われる表現です。

私たちの生活に関連する身近な場面で、toxicという言葉が広く使われるようになった——そう考えると心が沈みます。

でも一方で、今年、この言葉がそれだけ頻繁に使われたということは、人々が声をあげ、メディアにも取り上げられたということ。今まで影に隠れていた問題が表に現われ、共有されるようになったという証です。

こうした動きの積み重ねが、社会を変えていきます。少しずつであっても、皆にとって、より生きやすい世の中になっていきますように——。そして来年、再来年の「今年の言葉」が、そんな時代の変化を映すポシティブな言葉になることを願います。

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