「ハード面(tangible)」と「ソフト面(intangible)」

2018 / 8 / 28 | 執筆者:Masako Maeda


Photo by Kevin Dooley

企業のレポートの英語版制作を進めていて、また最近、「ハード面」、「ソフト面」という言葉にぶつかりました。「ハード面、ソフト面での取り組み」「ハード面の整備、ソフト面の強化」といった風に使われています。

ITの分野では一般に、「ハードウェア」というとコンピュータを構成する各種機器、「ソフトウェア」というとプログラムやアプリケーションのことを指します。ハードウェアは物理的なモノ、ソフトウェアは目的を達成するための仕組み、と言えます。

ビジネスの分野でも基本的には同じような意味合いで、ハード、ソフトが使われています。ハードは構造物や機械、設備などの物理的なモノを指し、こうしたモノを整備することが「ハード面での取り組み」です。一方、ソフトは社内ルールや意識啓発、研修などを指し、こうした仕組みを強化することが「ソフト面での取り組み」になります。

この「ハード面」と「ソフト面」、英語ではどう表現するのがよいでしょうか。

ネイティブの英訳者がよく使うのは、tangibleとintangibleです。形ある実体として存在する「ハード」はtangible、形のない意識や文化といった「ソフト」はintangibleと解釈します。

ハード面、ソフト面での改善 =improvements in tangible and intangible initiatives
ハード/ソフト対策     =tangible / intangible measures

ただ、日本語のハード面、ソフト面と同じく、tangible / intangible という言葉は漠然としています。漠然とした感じも含め、訳としては妥当なのかもしれませんが、文脈からtangible / intangibleでは伝わりにくいと感じられるときは、具体的な内容に置き換えて訳します。

たとえば、セキュリティ監査について、監査では設備やシステムなど「ハード面のセキュリティ」を点検するだけではなく、従業員間のコミュニケーションが円滑か、職務の定義が明確かといった職場の状況も「ソフト面のセキュリティ」として確認する、と書かれた文章では、

「ハード面のセキュリティ」=physical aspects of security
「ソフト面のセキュリティ」=human aspects of security

と訳しました。従業員がセキュリティ上の問題を起こすことなく働ける環境が保たれていることが「ソフト面(人的な側面)のセキュリティ」になるからです。

過去数年でよく目にするようになった言葉(とくにカタカナ語)を訳すときは無理に対訳を作ろうとはせず、まずは文脈に応じた訳し方を検討します。そして「これだ!」という訳が生まれたときは、自信をもってご提案するようにしています。

関連ブログ:
「ハードからソフトまで」 ~カタカナ語は気をつけて

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