働き方のミライ 翻訳+α

2018 / 3 / 7 | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

「AIが当たり前にある社会で、人はどんな働き方をしているんだろう?」

昨年そのような関心から、藤野貴教氏の「2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方」を読みました。

あらゆる職を「営業・接客系」「製造系」「技術系」「事務・管理系」の4つに分類して
どのようにAIと共存していくかが具体的に提案されており、面白い発見がいくつもありました。

今回の名古屋でのセミナーでもご紹介したい、みなさんと一緒に「翻訳者ならどうする?」
と話してみたい、と考えて資料に加えたのが、この本の61ページにある図
「AIが苦手なことから、人間の仕事を考える」をもとにしたこちらです。
(デザイン、色を変更しています。)

「仕組み化された中で大量に実施する」論理的、分析的、統計的な仕事を担う「オペレーター」は、今後、人ではなくAIになっていく。

そんな未来で、ご自身のスキルや志向を活かして働くには、どうすればよいのか。

いくつかある選択肢の一つとして、提案したのは「連続的専門性を拡大する」こと。
翻訳者である方々がすでに仕事に活かしている高い言語スキルを軸に、
ご自身の専門性をどのように広げていけるかを、上の図の4つの定義
「オペレーター/コミュニケーター/モデレーター/イノベーター」に
沿って考えてみました。

* * * * *
1. オペレーターのAI翻訳とともに働く
近い未来に起こるであろうこととして、前のブログでも書いたように、
AI翻訳のアウトプットを正しい翻訳に仕上げるポストエディットの仕事は拡大するでしょう。
また、AI翻訳を行うには、言語コーパスと呼ばれる対訳データが必要です。
すでに統計型機械翻訳(SMT)の発展とともに現存していますが、
これを整備する仕事も増えそうです。
そして、例えば、自社の事業に最適なAI翻訳エンジンにしたいとの需要が高まれば、
AI翻訳エンジンに正しい翻訳を学習させる「AIの教師」「AIのチューニング実践者」も
多く必要になるでしょう。

2. 仮説を立て、目的のために言語スキルを生かすコミュニケーター
「なぜ? どうして?」と好奇心も旺盛で、常に何のためにそれをするのか、が
気になる方は、コミュニケーターの素質があります。

例えば、英文資料に何が書いてあるのか知りたい、それぞれの資料の傾向を知りたい、
分かり易くまとめてほしい、と言うニーズは以前からあります。
その結果を踏まえて事業の方針を決定したり、新たな事業を作ったり、と
企業判断の基礎資料となるケースです。

クライアントの目的にかなうアウトプットをまとめるのは、やりがいのある仕事です。
調査分析や要約といったスキルを身に付ければ、仕事の幅が広がるでしょう。

3. みんなが安心できる場所をつくるモデレーター
人との心のふれ合いを大切にする「モデレーター」の素質が高い人は、
例えば、仲間と共に喜びや苦労を分かち合いながら
「チームで働く」ことに充実感を覚えるのではないでしょうか。

また、人の成長を自分の喜びのように感じることができる仕事として、
「教師」も向いているかもしれません。

2030年ごろにおける技術が完全に各職業を自動化できる可能性を分析した
野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究(研究対象601職種)で、
興味深いことに「学校教員」「日本語教師」は0.2~1.1%の自動化率しかありません*。

4. 既成概念を超えた新しい創造を目指すイノベーター
既成概念を超えた仮説を立て実践していく中で、新たに何かを創造することに
喜びを感じるとしたら、イノベーターの素質十分。私を含めて憧れる人は多いでしょう。

例えば、クリエイティブな要素が重要なコピーライティング。
ストーリー性の高い文章や、人に焦点を当てたコンテンツ。
何かを成し遂げようと努力する姿を描く企業レポートの特集など
その翻訳には行間にある熱量のようなものを読み取り表現する力が求められます。

また、原文にある内容と意図を的確に読み取った上で、
ターゲットの読者に最適なアウトプットに仕上げる「トランスクリエーション」を
得意とする翻訳者の方も増えてきました。

自分にはこのような志向がある、あるいは仲間からそのように言われる人は、
身体能力を鍛え、アートを生活に取り入れることで、さらに感性や直観力に
磨きがかかる、あるいは、そうすることでこれまで気付かなかった
自分のイノベーターの素質を見出せるかもしれません。

* * * * *

大好きな翻訳を「やめろと言われても、やめない」と言い切る方もあり、
やめないでいいし、やめないで欲しい、と私も思います。

でも、少しだけ「翻訳+α」の働き方を探してみませんか。

下の図は、最近凝っている落書きです。上でご紹介した図の周りに書きこみました。

セミナーの参加者のみなさんには、ぜひご自分で同じように書き込んでください、と
お願いしました。新しいワクワクするような発見があることを願っています。

*: 2017年6月27日号の週刊エコノミスト「AIでなくなる仕事、残る仕事200 」(28-29pp.)を参照。実際に自動化される確率ではなく技術面のみの可能性を示した、とあります。

* * * * *
セミナーを終えて

開催後のアンケートでは、「より自分の専門性を高めなければと思った」
「なぜ機械翻訳を使わないのか、と上司に言われることもあったが、これで説明できます」
といった回答があり、皆さんそれぞれに発見があったようでうれしく思いました。

AI翻訳が普及しても、正誤の判断ができる人間はどうしても必要です。
一方で、翻訳業界での仕事の質と量も変わっていくでしょう。

大きな変化のタイミングで、翻訳に携わる同じ立場で、多くの方とお話することができ、
「みんな、翻訳が好きなんだなぁ」と思いながら、力が湧いてきました。

今回のセミナーは、名古屋近郊の翻訳者の方を中心とする、翻訳についての知識を深めるための勉強会「なごや会」との共催でした。懇親会もあっという間に3時間、楽しかったです。
なごや会の皆様、ありがとうございました!

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