人ではなく構造を変える M&Sの人権アプローチ

2017 / 10 / 30 | 執筆者:Futakuchi Kazuko


M&S Human Rights Report 2017, Our approach to Human Rights

上は、英国小売り大手マークス & スペンサー社(M&S)の人権レポートです。
昨年の第1弾では、7つの顕著な課題と4つの要観察の課題を特定、今年はそれらに基づき、活動の重点領域を3つに絞っています。

その重点領域の1つとしているのが、就労者の貧困( in-work poverty )
欧州、特に英国でよく使われているこの言葉を聞いて、思い浮かぶ言葉はありませんか?

そういえば、と私が思い出したのが、ワーキングプア(低所得労働者)。
一瞬、和製英語?と思ってしまいましたが、オックスファムのブログにも使われています。

死語でもないようですが、もっぱら2012年頃の資料が多く、
最近は使い方が微妙に変化していることが感じられます。
例えば、欧州の人権財団 Eurofound のページでは’working poor’ と引用符が付いています。

「ワーキングプア」は、働いていても貧困に苦しむ人々をグループとしてとらえます。
一方で、「就労者の貧困」は、課題そのものを表します。
考えてみれば、教育の機会が得られなかった、家計の事情でやむを得ず低賃金を受け入れた、
それが不当だと知らなかったなど、人々が飲み込まれてしまう「貧困を生み出す構造」に大きな問題があります。

「就労者の貧困」は、その構造を解決すべきとする姿勢が伝わる表現です。

その姿勢をさらに強く感じたのが、
M&Sのレポートの至る所で使われていたキーワード embed
サプライチェーンを含め、自分たちの事業活動に人権尊重の理念を「組み込む」ことを力強く宣言しています。

国際的な人権NGOや国際社会をリードする専門機関を諮問グループのメンバーとし、政府や市民団体の巻き込みにも意欲的で、企業だけでなく、社会全体で解決すべき問題と捉えていることが読み取れます。

そして、レポートの裏表紙には、人権侵害にあったり、被害をうけるのではと不安な人、そしてそのような状態を知っている人に、年中無休の現代奴隷ホットラインなど、匿名で助けを求めるための通報先が掲載されています。

弱い立場にある人や被害者も一緒に、構造を変えよう。
SDGsのメッセージ「誰も置き去りにしない」が重なります。

人権問題は根が深く構造全体に影響を及ぼす性質があることを踏まえたM&Sのアプローチ。
2020年に向けてどのような変化を生み出していくのか。第3弾での報告に期待します。

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