Abbreviations(略語)を考える

2016 / 9 / 26 | カテゴリー: | 執筆者:Yukiko Mizuno

AbbreviationPhoto by Martin Abegglen

翻訳の資料を読んでいるとさまざまな略語に出会います。
英文スタイルのガイドラインChicago Manual of Styleでは、
abbreviations(略語)の種類について、
以下のように説明しています。

Acronym: Terms based on the initial letters of their various elements
and read as single words (AIDS, laser, NASA, scuba).

Initialism: Terms read as a series of letters (AOL, NBA, XML).

いずれも英和辞典では「頭字語」、「頭文字語」などとなっていますが、
いくつかの単語の頭文字を並べたときに、それ自体が単語のように
「読める」ものがacronym、読めないものはinitialismです。
Abbreviationには上記以外にもcontraction(短縮)があり、これは
一つの単語の最初の文字と後の文字を組み合わせたものです
(例:Mister → Mr. amount → amt.)。

なお、このような定義はあるものの、英語のサイトを見ると
実際にはabbreviationとacronymは同義で使われることも多いようです。

さて、今回読んでいた資料で気になったのは、こうした略語が日本語の文章に
出てくる場合の扱いかたです。英語では略語が表すものが複数の場合には
小文字のsが付きます。例えば、

LDCs: Least Developed Countries
ILCs: Indigenous and Local Communities

こうした略語を日本語の文書で扱う場合、小文字のsは付けずにLDC、ILCと
記載するのが一般的ですが、意識して見ると、そうでない場合もあります。
例えば、国際社会の共通目標であるミレニアム開発目標(MDGs)と
持続可能な開発目標(SDGs)を政府系のサイトで確認すると、
どちらも小文字のsが付いています。
(SDG指標、SDGベースなどの熟語の場合には、通常sは付きません。)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html

MDGsは8つの貧困対策目標を土台としたものであり、SDGsは17の目標項目から
なります。しかし日本語で「目標」というと、それが一つの目標なのか、
複数の目標なのかがはっきりしません。略語のsを付けることで「複数の目標がある」
ということが明示できます。

日本語の文章に出てくる英語の略語に小文字のsを付けるか、付けないか。
今回調べた限りでは明確な定義は見つかりませんでしたが、
「複数だということを明確に伝える必要があるか」という点を
一つの基準にしてもよいかもしれません。

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