生物文化多様性~自然への畏敬の念との融合

2016 / 6 / 4 | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

hakusan
小さい頃から顔をあげるといつもそこにあった美しい山、
白山に関するブックレットの翻訳をご支援する機会をいただきました。

白山の地質や地形など、さまざまな自然科学的考察だけでなく、
白山への信仰の歴史や遺跡、人々の生業の歴史、
地域の文化や保全活動も合わせて紹介されています。

現代では、科学をベースに生物多様性の保全が進められていますが、
政府や自治体、専門家だけでなく、市民などより多くの人々を巻き込んでいくためには、
伝統や文化、生活に根ざしたアプローチとの合わせ技が効果的であることが
このブックレットから伺えます。

例えば、白山への信仰は、山を御神体とする自然信仰から始まり、
やがて白山の神と仏教の仏がつながり「神仏習合」の状況となります。
石川県、福井県、岐阜県から参拝者が頂上に向かって登山する
「禅定道(ぜんじょうどう)」が3つあり、現在も残っています。

そのひとつの美濃禅定道を守る活動、岐阜県石徹白地区の「白山道刈」は
千年以上の歴史があるとのこと。
古来より地元の人々による各登山道の維持管理が行われ、
現在は「石徹白清掃ボランティア」として一般の方も参加できる形に変わって、
美濃禅定道を守る活動として継承されています。

翻訳を進めながら、2015年の春に日本語版制作をご支援したGBO4にあった
セネガルのカザマンス川河口の漁業管理の例を思い出しました。

(以下60ページより抜粋)
8つの村の漁師が参加する組合が「カワワナ」(「我々みんなが守るべき我々の財産」を意味するジョラ族の言葉の略語)と呼ばれる場所を設置した。この場所の目的は、地元の漁獲の質と量を改善することである。漁師たちは、伝統的な漁場の境界を定め、ゾーニング制度や管理計画、監視システム、管理構造を考案した。これらはすべて、伝統的な要素最新の要素の両方を組み合わせたものである。例えば監視は、物神を置くことと、違反者の船や漁具の合法的な押収が認められる巡視を行うことの二つで構成される。地方及び地域政府の承認を受け、カワワナは完全にボランティアベースで約 5 年間運営されてきた。その成果としては、漁業と生物多様性(20 の沿岸性魚類、希少なウスイロイルカ、マナティー等)の回復、村落の団結の強化、地元の食事や収入の向上等がある。ゾーニング制度には、古来の聖域と一致する厳格な禁漁区や、エンジンのない船なら誰でも利用してよい持続可能な利用のための水域、地元住民の手漕ぎのカヌーだけが利用できる持続可能な利用のための水域等がある。

カワワナは、民族の言語や、古来の聖域に対して抱く畏敬の念と
近代的な管理制度を組み合わせたからこそ、
ボランティアベースでの運営が成功しています。

日々の暮らしの中で、自然を畏れ感謝する。私たちの情緒にあるこの普遍性は、
生物多様性の保全を推し進めるうえで、今後も重要な視点を与えてくれるでしょう。

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