適材適所と適所適材

2015 / 10 / 1 | 執筆者:Yukiko Mizuno

employment
適材適所。
人を、その才能に適した地位・任務につけること。(広辞苑)

先日、この言葉を前に頭を悩ませました。
「適材適所」との比較で、「適所適材」という表現が出てきたからです。
後者はあまりなじみのない言葉で、広辞苑にも載っていません。

調べてみると「適所適材」は、企業の人材戦略などの文脈で使われる言葉のようです。

「適材適所」は人(人材)が先にあり、その人を適する場所
(能力を発揮できる場所)に配置するという考え方。
これに対して「適所適材」は場所(職務)が先にあり、その職務内容や
求められる資質を明確にして、それに合う人材を配置するという考え方。

結果だけ見れば、どちらも人材と職務がマッチしている状態ですが、
企業の人材戦略では「どちらが先か」が重要な意味を持ちます。

さて、英語でこの違いをどう表現するか。
いくつかの和英辞典で調べてみたところ、
「適材適所」の訳語として以下のような表現が載っていました。
the right man in the right place
use of the right person in the right job

「適所適材」を調べてみると、件数は少ないのですが、以下の例がありました。
the right man in the right place
match the right talent with the right job

どちらも同じか似たような英語表現で、違いを表すことができません。

人材と職務がマッチしているという状態(結果)を伝えるためなら、
上のどの訳語でも問題ないでしょう。

しかし、「適材適所」と「適所適材」を比べて述べる文章では、
「どちらが先か」、「何のために、何を最適化するのか」を明確に表す工夫が
必要になります。例えば、

適材適所:the best job for the person(その人にとって最適な職務)
適所適材:the best person for the job(その職務にとって最適な人)

ちょっとしたことなのですが、こうすると、元の言葉の伝えようとしている意味が
はっきりと表せると思いませんか?

言語にまつわる仕事は、なじみのない言葉との出会いの連続ですが、
こうして頭を悩ませ、納得のいく表現に出会うとき、その醍醐味を感じます。

Photo by Flazingo Photos

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