Translators in Sustainability
生物文化多様性 = biocultural diversity(その2)伝統工芸
生物多様性と文化多様性のキーワードの2つめは、伝統工芸です。
石川県には、江戸時代、つまり加賀藩の時代から伝わる
漆芸や陶芸、象嵌や加賀友禅などの伝統工芸がありますが、
まさか生物多様性に関するシンポジウムで、その話が出てくるとは思いませんでした。
改めて生物多様性と伝統工芸の関連性と相乗効果を見てみると、
1. 自然から得た材料で作られている。
→ その土地の自然がはぐくむ資源を大切にする。
2. 自然から得た材料を生かす技術で成り立っている。
→ 材料があってこそ技術の伝承が可能になる。
3. デザイン(意匠)に自然を描写したものが多い。
→ 自然の豊かさと美しさ=精神性への尊重の心が養われる。
といった点が挙げられます。
冒頭の写真は、加賀友禅の着物です。
写真の右下角の菊の葉をよく見ると、ちょっと枯れたようになっていますね。
これは加賀友禅に特徴的な表現で、
あえて朽ちた病葉(わくらば)を描き込んでいます。
咲き誇る花も、枯れていく葉もあるがままに描写する。
デザインにリズムが生まれる心惹かれる演出でもあります。
生物多様性の保全と言うと、非常に難しいことのように思われがちですが
美しい、心地よいと思うものを大切にするシンプルな心の動きこそ、
生き物を含めた自然を大切にする行動に直接つながり、
さらに複雑な問題の解決につながるのかもしれません。
(つづく)
金沢の伝統工芸
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/14186/1/2-Application-Jpn.pdf?20110125144449
金沢市・クラフト創造都市ウェブサイトより
Photo by Kazuko Futakuchi