適応策(Adaptation)を考える

2015 / 8 / 18 | 執筆者:Yukiko Mizuno

adaptation

先日、ある昆虫についての本を読みました。
ネムリユスリカという、アフリカの半乾燥地帯に住む蚊の仲間です。

地球上の生物は体にたくさんの水を含んでいて、水分が減ると
生命の維持が難しくなります。
多くの生物は、水分を補うことで乾燥を回避します。

ところがこのネムリユスリカという虫の幼虫は、
乾期には雨がほとんど降らない地域の岩場の小さな水たまりという
過酷な環境で生き延びるために、まったく違う戦略をとります。
乾期を生き抜くために、体内の水分を極限(3%以下)まで減らすのです。
そうして代謝を停止した状態で雨を待ちます。
雨が降らない限り眠り続け、雨が降ると吸水して泳ぎ出します。

乾燥を回避するのではなく、
このように乾燥に耐えられる性質を身につける戦略を、
専門的には乾燥許容(desiccation tolerance)と言うそうです。

ネムリユスリカの話が興味深いのは、その生存戦略が、現状を受け入れて
自らを環境に適応させることに立脚している点です。
そんなことから、気候変動の「適応策」に考えが及びました。

根本的な解決に向け、原因(CO2)を取り除く(減らす)緩和策(Mitigation)。
温暖化が進んでいる現状のなかで、人や社会への影響を抑える適応策(Adaptation)。

各国の気候変動問題への取り組みは、
以前は緩和策を中心とするものが多かったのですが、
近年は適応策に力を入れる動きも出てきています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の
『気候変動2014 -影響・適応・脆弱性』は、
各国政府だけでなく、自治体や民間部門、コミュニティにおいても
適応経験が蓄積されつつあると報告しています。

根本的な原因に取り組む緩和策に比べ、適応策は対処療法的な側面もありますが、
温暖化の兆しとも考えられる気候・気象現象が世界各国で見られるなかで、
適応策の重要性は年々増しています。

アフリカの半乾燥地帯に住む小さな虫の
「究極の適応策」とでもいうような生存戦略が、
気候変動の適応策の意義を再認識させてくれたように思いました。

———
注:記事に出てくる本は、黄川田隆洋著『ネムリユスリカのふしぎな世界』(株式会社ウエッジ、2014年)です。

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