責任:ResponsibilityとLiability

2015 / 2 / 20 | 執筆者:Masako Maeda

Photo by Joshua Eaves

「製品責任」という言葉があります。英和辞書を引くと、product responsibilityとproduct liabilityという2つの言葉が見つかります。Google検索で断然多くヒットするのは、product liability。liabilityというと法律をイメージしますが、どのような違いがあるのでしょうか。

まず、product responsibilityについて。この言葉は主に、2つの文脈で使われています。

1つが、GRIガイドライン(サステナビリティ報告書作成のためのガイドライン)です。GRIでは、企業が開示すべき指標をいくつかのカテゴリーに分けて定義しています。「製品責任(Product Responsibility)」はそのうちの1つで、製品やサービスがステークホルダーに直接影響する側面(安全衛生やラベリング、マーケティングなど)に関連する指標の開示を求めています。ここで求められるのは、企業が自社の製品やサービスについて自ら果たすべき責任のため、responsibilityが使われています。

もう1つが、拡大生産者責任(Extended Product Responsibility:EPR)です。これは1990年代にヨーロッパで始まった考え方で、日本のリサイクル関連法にもこの考え方が適用されました。環境白書では、「自ら生産する製品等について、生産者が、生産・使用段階だけでなく、それが使用され、廃棄物となった後まで一定の責任を負う」ことと定義しています。ここでも求められているのは、生産者のresponsibilityです。

では、product liabilityはどうでしょうか。この言葉もやはり、法律の文脈で使われています。製造物責任法という、「製造物責任(product liability)」の頭文字をとってPL法と呼ばれている法律があります。これは、製造物の欠陥によって被害が生じた場合の製造業者の損害賠償責任について定めたものです。問われるのは、問題が生じた際に製造業者が免れない責任なのでliabilityです。

同じ「責任」でも、liabilityは「法的義務」を、responsibilityは「自発性」を求めているようです。product responsibilityとproduct liabilityが意味するところは全く異なります。

企業の社会的責任は、ゆえにCorporate Social Responsibility(CSR)なのです。liabilityという言葉はそぐわないように思います。CSRレポートにはresponsibilityという言葉に相応しい、ポジティブで重みのある報告を期待します。

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