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内部告発の時代

2011年に起きたオリンパスの巨額損失隠しの事件。

最近では東芝の不正会計の問題などもあり、
すでに過去のことになりつつあるかもしれませんが、
実は内部告発が日本社会に根付くきっかけになったとも
いえる大きな事件でした。

日本における内部告発の状況、
およびオリンパスの内部告発の当事者となった方の手記が
書かれているのがこちらの本です。

「内部告発の時代」

GRIガイドライン第4版では通報制度の設置状況について
細かく開示が要求されていますが、
当事者にならない限り身近ではない仕組みということもあり、
正直なところ、頭では理解しつつ実感に乏しいところがありました。

しかし、この本を読んでその重要性、
そして社内と社会全体で適切な制度を構築する必要性を再認識しました。

オリンパスの事件の概要はこうです。

内部告発をきっかけに、巨額の損失の存在を知った新英国人社長が
真相解明に乗り出そうとした矢先に解任されてしまう。

その後、欧米メディアも高い関心を持ってこの事件を報道し、
内部告発者が続いたことにより、真実が明らかに。
10年以上にわたって1000億円の粉飾が行われていたことがわかり、
最終的には旧経営陣7名の逮捕に至る。

日本企業のガバナンスに対する信頼を大きく揺るがした事件でした。

「告発」という言葉の響きが強いからでしょうか。
密告のような、利己的で悪いことをやっている、
あるいは恩を仇で返すようなイメージがあるからでしょうか。

実際には、内部告発は社会の公益と個人の尊厳
(そして長期的には会社そのもの)を守るためのものですが、
日本ではあまりいいイメージが持たれないように感じます。

英語では「whistleblowing」。

欧米社会と比べると、

・日本は集団への帰属意識が強い
・欧米は契約社会で、会社と個人の責任は明確に切り離されている
・米国では内部通報者に報いる制度がある
(社会が内部通報を積極的に活用しようとしている)

など、社会への浸透度合いや活用状況だけでなく、
その背景となる社会制度にも大きな違いがあります。

日本では、公益通報者保護制度が設置され、10年が経ちました。…

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多国籍企業の税逃れ対策 OECDが1次提言を発表

photo by Images Money

Google。スターバックス。アップル。
近年国際的に課題になっている多国籍企業の税逃れ問題。

日本でもそうした報道がなされるようになり、
Amazonは消費税を払っていないからという理由で
積極的に国内企業のサービスを利用するようにしている友人もいます。

そうした課題に対処すべく、9月末、
OECDから第一次提言が発表されました。

OECD releases first BEPS recommendations to G20 for international approach to combat tax avoidance by multinationals
http://www.oecd.org/newsroom/oecd-releases-first-beps-recommendations-to-g20-for-international-approach-to-combat-tax-avoidance-by-multinationals.htm

これは多国籍企業が税率の低い国に利益を集め
節税することを防止するために、
G20諸国の要請によりOECDが今年7月に定めた
BEPS(税源浸食と利益移転)行動計画に基づくものです。

BEPSでは、国際取引への制約や、納税者への二重課税など
不当な負担にならないよう配慮した新たな規制により
各国の税源を確保しつつ、租税の透明性を高める手段として
2015年までに取組む主要15項目を定めています。

そのうち、今回は7つの項目について提言が発表されました。

具体的には、企業グループ内での無形資産に関する越境取引や、
グループ企業が各国で支払う税額や知的財産について
各国税務局に毎年の報告を義務付けることで、…

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社外取締役の役割とは 経産省ガイドラインを発表

photo by U.S. Department of Agriculture

ESGの文脈で日米欧の企業比較を行う際、
必ず指摘されるのが日本企業のG=ガバナンスの弱さです。

そうした中、日本企業の企業統治システムにおける
非業務執行役員(社外取締役および監査役)に
期待される役割における指針を示そうと、
中間取りまとめとガイドラインが7月初めに経済産業省より発表されました。

コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会の中間とりまとめとガイドラインを公表します
http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140630002/20140630002.html

2009年の東京証券取引所における上場規定の改正以降、
徐々に独立役員(社外取締役または社外監査役)の導入が進められてきましたが、
今年6月に会社法改正が成立したことにより
今後はより積極的に社外取締役の導入が促進されていきます。
調査では、6月時点ですでに上場企業において74%の企業が
社外取締役を1名以上選任しています。

一方で、こうした非業務執行役員の選任基準や役割については
必ずしも明確に規定されているわけではなく、
また日本企業の実態を踏まえるとその基準は
企業の戦略や統治システムによって変わってきます。

たとえば取締役会の役割には、
1.監督に特化した取締役会(モニタリング型)
2.業務執行に関する意思決定を中心役割(オペレーション型)
の2種類があり、欧米では取締役会といえば1を指しますが、
日本では2も選択可能です。

オペレーション型を選択する場合には、
監督機能をどの機関がどう担保するかという課題が出てきます。
(多くは社外監査役を含む監査役が監督機能を発揮します)

そこで今回、各企業がそれぞれに適した形のあり方を定められるよう、
欧米のガバナンスコードとの比較や
実務上参照しやすいようベストプラクティスを集めた事例集と、
導入・活用における示唆をまとめたガイドラインが取りまとめられました。

事例集では、社外取締役が戦略的な投資判断などのプラス面を伸ばした事例や
不祥事などのマイナス面を防いだ事例が紹介されています。
また監査役についても、経営判断について
違法性や妥当性の観点からチェックを行っている実効性を…

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【G4を読む】Grievance Mechanism

Cards
photo by Martin Rødvand

G4を読み解くキーワード。
今回は「Grievance Mechanism」を取り上げます。

「苦情申し立ての仕組み」「苦情処理メカニズム」と訳されたりするこの言葉。

前版のGRI3.1では人権の項目でのみ(HR11)、登場していました。

それが今回のG4では、人権だけでなく、
環境、労働、社会と合計4回も登場します。

Environmental Grievance Mechanisms (G4-EN34)
Labor Practices Grievance Mechanisms(G4-LA16)
Human Rights Grievance Mechanisms(G4-HR12)
Grievance Mechanisms for Impacts on Society(G4-SO11)

具体的には、

G4-EN34
NUMBER OF GRIEVANCES ABOUT ENVIRONMENTAL

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【G4を読み解くキーワード】インテグリティ

Ugandan anti-corruption sign
photo by futureatlas.com

G4を読み解くキーワードシリーズ、前回のDecent Workに続いて、
第2弾のテーマはIntegrityです。

透明性やコンプライアンスとセットで
語られることが多いこの言葉。

G4ではEthics and Integrity(倫理とインテグリティ)とセットになっています。

インテグリティ(誠実さ)が何を指すのか
なかなか日本語にしにくい言葉ではあるのですが、
いくつか使用例を見てみると、

・グローバル・コンパクトでは、
原則10の「透明性と腐敗防止」に取り組む際の
キーワードとして用いられています。

企業の腐敗防止対策のベストプラクティス事例集
Corporate Sustainability with Integrity: Organizational Change to Collective Action

・あるいは東芝では
「社会に対して誠実に向き合い、積極的に責任を果たす」
「経営や財務の健全性を追求する」
という2つの視点で解釈をしています。

言葉の観点からの解説については、
詳しくは翻訳ブログ

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報酬ポリシーにみる 中長期・非財務の価値創造と報酬体系

Darts
photo by Bogdan Suditu

海外の企業では、株主向けに発行しているアニュアルレポートとは別に、
経営陣の報酬の詳細について開示する
「報酬レポート(Remunaration Report)」を
発行する企業が出てきています。

その中では、いくらの報酬が支払われたかというだけでなく、
報酬決定の基準が「報酬ポリシー(Remuneration Policy)」として
示されています。

今年5月に欧州のタイヤメーカー ピレリ(Pirelli&C.S.p.A)が、
2012年~2014年の3カ年の中期計画の発表にあわせて、
株主会議に諮った報酬ポリシーについて見てみます。

Reports of the Board of Directors and proposals of resolution
Remuneration Policy: consultation
http://www.pirelli.com/mediaObject/corporate/documents/en/investors/assemblea_10_05_2012/Remuneration_Policy/original/Remuneration_Policy.pdf

EUにおける一連の統合報告・非財務情報開示の流れを背景に、
同社の新しい報酬ポリシーの中では、
非財務側面のパフォーマンスも報酬決定の要素として取り入れられています。

経営陣の報酬体系は以下の3つに分かれています。
1.固定報酬
2.目標管理制度(MBO)を活用した年間変動報酬
3.中長期の変動枠報酬(LTI)

※LTI (Long Term Incentive)・・・…

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ガバナンスの強化が女性活躍につながる?

IV SeedRocket Investors' Day
photo by SeedRocket

投資家によるコーポレート・ガバナンスの強化が
女性活躍につながっているのか。

という興味深い研究があったので、ご紹介します。

「コーポレート・ガバナンスと女性の活躍」
河口章、西谷公孝
http://www.jcer.or.jp/academic_journal/jer/detail4210.html

高度成長期の終身雇用制度では、
従業員に安定的・長期的な雇用を提供するかわりに、
企業の都合に応じた残業や出張、転勤といった
働き方を要求してきました。

結果、家事負担の大きい女性労働者は、
このような要求に応えられないため、
必然的に中核から排除されていきます。

1990年と2008年を比較すると、

金融機関持株比率 45.2%→26.6%へと低下
外国人持株比率は4.2%→22.1%へと上昇

と、機関投資家の影響力が大きくなったことにより、
日本的なガバナンスが変化を余儀なくされ、
雇用制度も変化することで、
女性労働者に活躍機会の増加につながったといえるのか。

上記のような観点から、以下の仮説について検証をしています。

仮説1)
投資家によるガバナンスの強化によって、
正社員の雇用の短期化が女性の活躍を推進する。

企業は正社員の採用や解雇をより頻繁に行うようになり、
長期雇用が維持できなくなるため、
離職確率が相対的に高いという理由で
主要な業務から排除されていたた女性にも
活躍の機会が増えるのではないか、という仮説です。

こちらは機関投資家によるガバナンスの結果、
長期雇用制度に負の影響を与えていることは確認されましたが、
雇用の短期化と女性活躍の相関関係はあまり強くありませんでした。

仮説2)
投資家によるガバナンスの強化によって、
ワーク・ライフ・バランス(WLB)施策や
ポジティブ・アクション(PA)施策が実施され、
女性の活躍が推進される。

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豪華メンバーが顔をそろえるネスレのCSV委員会

SHARE Conference, Belgrade, Serbia, April 7-9, 2011
photo by Threat to Democracy

CSV。Creating Shared Values。

ポーター教授が掲げる、
CSRの概念にかわる新しいコンセプトです。

今年初めにハーバード・ビジネスレビューに掲載され、
日本でも春先から話題になり始めました。

CSRからCSVへ ポーターで考える新しい経営
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110530/220295/

CSVの概念をいち早く取り入れているのが、
スイスのグローバルメーカーのNestle(ネスレ)です。

ネスレではCSVを「共通価値の創造」と訳し、

株主にとって長期的な価値を創造するためには、
社会にとっても価値のあるものを創造しなくてはならない。

として、事業を展開する上での基本的な考え方と位置付けています。

ネスレの共通価値の創造
http://www.nestle.co.jp/CSV/CreatingSharedValueAtNestle/Pages/CreatingSharedValue.aspx

1.株主の利益と社会の利益とが相交わり
2.双方にとって最適な価値創造が実現できる注力分野を特定
3.共通価値を創造する潜在性を最大限に有しているその分野に
優れた人材と資本の両方の資源を投入し、
関係するステークホルダーと協働することに努める

というステップで、
「栄養」
「水資源」
「農業・地域開発」
を3つの主要テーマとして取り組んでいます。

年2回開かれる諮問委員会のメンバーには、
マイケル・E・ポーター教授やジェフリー・D・サックス教授、
ジョン・エレキントン氏など豪華メンバーがずらり。

CSVのモデルケースの1つとして、注目されます。…

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