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世界の社会課題を現地からレポート! 〜豪州編 「ウミガメを救え!グレートバリアリーフの海洋環境」

オーストラリアはインド洋と太平洋に囲まれたオセアニア地方に所属するとても大きな島国です。

その中でもクイーンランド州は一年の320日ほどが晴れであることから”Sunshine State”(太陽の州)と呼ばれ、
一年を通して暖かい気候が続きます。

世界遺産でもあるグレートバリアリーフもそこに位置し、
世界最大級のサンゴ礁地帯と共に豊かな生態系を育む重要な役割を担っています。

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ウミガメと珊瑚

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グレートバリアリーフに生息するトロピカルなマス

しかしながら、地球温暖化による海水温度上昇、工業化による汚染物質の流出、
旅行産業による珊瑚の破壊、ボートからの汚染物質の排出・ゴミの放棄、乱獲により
世界有数の豊かな生態系が近年急速に破壊されてきています。

特に多大なる影響を受けているのがウミガメです。
世界中で7種が確認されており、そのうち6種がグレートバリアリーフ近郊に生息しています。
Flashback turtle(ヒラタウミガメ)の巣は世界中でグレートバリアリーフのみで確認されており、
オーストラリアの法律で6種すべてが絶滅危惧指定されています。

政府はこれを重要視し、ウミガメの保護のために
Recovery Plan for Marin Turtles in Australia (ウミガメ回復計画)を策定。
計画には、乱獲の禁止から、生態系の観察、水質管理、
工場排水、旅行産業によるウミガメへのダメージまでこと細かく記載されています。

特に旅行産業がウミガメに与える影響は多大です。
グレートバリアリーフで最も大きな旅行会社の1つであるCruise Whitsundayはエコツーリズムバッジを取得し
生態系を保護する様々な取り組みをしています。

その活動は病気・負傷しているウミガメを保護、海に帰すだけに留まらず、
スタッフの環境教育、器具の清掃洗剤の選択、船の排水処理、旅行者の教育まで及びます。

私自身もこの旅行会社を5カ月ほど前に使用し、
スタッフの環境知識の高さ、海に入る前の注意事項の細かさに驚いたのを覚えています。

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写真左:Cruise Whitsunday船

また、オーストラリアの教育部門では
海洋生物学専攻者だけでなく、多くの学生が海洋環境について学ぶ環境が整っています。
たとえばクイーンズランド大学では選択授業のなかに海洋生物学が含まれており、
大学の研究所がある島に大学生がフィールドトリップで行き、
現在直面している課題、保護、観測などを身をもって学ぶことができます。

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クイーンズランド大学の学生による珊瑚の測定の様子

オーストラリアの海洋環境改善において
このように産業や教育部門と生態系が隣り合わせとなり
一人一人の環境に対する意識を向上させることが
これからますます重要になってくるでしょう。

グレートバリアリーフに訪れる機会があれば、
ぜひエコツーリズムバッジを取得している旅行会社を選択してみては?

川平紗代@オーストラリア

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弱者に優しい国、中国

上海の地下鉄は、現在1号線~13号線と16号線の計14本が開通しています。
(厳密には地下鉄のほか、ライトレールと呼ばれる地上路線も含みます)
今後も路線が増える予定とのことで、
私が暮らしていた10年前は5本しかなかったのに、
10年一昔どころか二昔、三昔といった感があります。

ところでこの地下鉄、ラッシュ時は東京の都心をはるかにしのぐ混雑状況。
今は路線が増えて混雑も緩和されたかと思って調べてみましたが、
人口が増えているせいか、相変わらずの盛況ぶりのようです。

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Photo by Ray_LAC

私も当時、毎日押すな押すなの大混雑の中
大変な思いをして通勤していましたが、
妊娠してお腹が少し目立ってくると
驚いたことに通勤の際、皆が我先にと席を譲ってくれるのです。
あれほどの争奪戦を勝ち抜いてようやく手に入れたはずの席を、
いとも簡単に、そしてスマートに。

中国では基本的に共働きのため、妊娠しても出産ぎりぎりまで働く女性がたくさんいます。
もちろん彼女たちの通勤手段は地下鉄やバス。
そして多くの乗客が妊婦さんに優しい。
もちろん、下を向いて知らないふりをする人もいるのですが、
見知らぬおせっかい、いや親切な人が
「この人妊婦さんだからあなた譲ってあげてよ!」と席を立たせてしまうことも。
譲っていただける確率としては、私の感覚で80%ぐらいでしょうか。

妊婦さんだけでなく、高齢者や子供に対しても同様です。
日本では車内でのベビーカーの扱いが議論されていますが、
中国では問題にもなりません。

バリアフリーに関してはまだまだなので、
ベビーカーと荷物と赤ちゃんを抱えて階段を上り下りしていると
近くの男性がさっと手伝ってくれたりします。
また、席を譲られると老人扱いされたといって不機嫌になる高齢者もいません。

ただし、席を譲ってもらいたいがために
「妊婦に見せかけるパッド」なんていう商品もあるようですが…。

時代とともに次々と姿を変えてゆく中国。
特に上海の変化はめまぐるしく、
訪れるたびに違う様相を見せてくれます。
しかし時代が変わっても、
この「弱者に優しい文化」はぜひ変わらずにいてほしいと思います。

執筆:中国語通訳・翻訳者 陰山有加

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世界の今をレポート! 「イギリスのEU離脱、ESGへの影響は?」

世界に広がるエコネットワークスの仲間から
各国の今をレポートします!

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まさかの「EU離脱」となった国民投票から早1か月。

イギリスで3番目に残留に投票をした人口が多かった(78%)
ロンドン・Hackneyにある我が家の通りでは、
国民投票の翌日には、窓にEU旗や手書きのポスターなどを窓に掲げ
EU離脱に反対を示す家がたくさん見受けられました。

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EU離脱に反対する住民が家の窓に張り出したポスター

Facebook上ではすぐさま、EU市民にストを呼びかける企画等が立ち上がり
7月2日にはロンドン市内で大規模な反EU離脱デモが企画され、
4万人近くが参加するなどの動きもありましたが、
思いのほか早く、テリーザ・メイの党首および首相就任といった形で政局が落ち着き
EU離脱に向けて着実に前進しつつあります。

いつEU離脱通告をするのかといった点が注目される中、
CSRやESGに対するBrexitの影響についてもちらほらと議論が始まっています。

オランダのESGリサーチ会社Sustainalyticsが、国民投票の翌日に
気候変動、リサイクル、大気汚染、人的資源、品質基準、安全・衛生、
コーポレートガバナンス、役員報酬、知的財産の9つのESG投資の観点から
BrexitがESGに与える影響を論じたレポートを発表した他、
欧州企業も第二四半期決算にBrexitの影響予想を含め始めています。

BrexitのESG投資への影響について
個人的に気になるのは気候変動と人的資源の分野の行方です。
イギリスのエネルギー・気候変動政策を担っていたエネルギー・気候変動省が
メイ首相によって廃止され、「ビジネス・エネルギー・企業戦略省」に再編されたことで
気候変動への取り組みに対するプライオリティが下がるのではないでしょうか。

ただ、全体的には
EUのESG、CSRの枠組み・取組みが混乱・失速することはないのではないかと考えています。
ESGにおいては、北欧やオランダなどの投資家がESGを重視している印象ですし
CSRについても、現代奴隷法などイギリス国内の法律がEUの法令よりも先を行っている部分もありますが
EU法令に規制されるEU市場でビジネスを行う欧州巨大企業がいる限り、
EUのESG、CSRの取組みは緩まらないのではないかと感じられます。

人的資源については
今後の交渉次第ではEU市民の滞在許可に影響が出るので
人材の確保が難しくなり、イギリス企業の競争力が下がる可能性が大いにあります。

近年のイギリスを代表するセクターである金融や映画・デザイン・IT等のクリエイティブ産業では
イギリス人よりもEU出身者が多く働いていることも。

身近なところでは、主人が働くロンドンのスタジオでも、従業員の半数以上がEU諸国出身です。
多くはフランスなどの一流アート系大学を出て、仕事の機会が多いロンドンにやってきた20代・30代。
「移動の自由」を謳歌して育った彼らは、
ロンドンに何年も暮らし、税金も納めているのに
自分たちの生活に直接影響する国民投票に参加できなかったことに苛立っており
EU離脱交渉の内容次第では
他のEU諸国やカナダへの移住を考えているといった声も聞こえてきています。

いずれにしても、メイ政権がEU脱退を正式に通告し、
離脱交渉の内容が見えてこない限り
様々な議論は憶測に過ぎませんが
様々なEU法令の枠組みから離れることになるイギリスの行方にはしばらく注意が必要です。

by Y・O @英国

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世界の社会課題を現地からレポート! 「2016年大統領選挙と米国の気候変動対策」

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Photo by Paul O’Rear

科学技術やイノベーション分野でアメリカが最前線にいることは間違いありませんが
気候変動に対して行動を起こすためのリーダーシップは不足していると感じます。
なぜ世界で最も先進的な経済が、
このグローバルな問題で合意に達することができないのでしょうか?

気候変動を深刻な問題と捉えるアメリカ人が他の先進国の人々に比べて少ないことが
理由のひとつです。
しかし、この数年間気候変動について懸念する人の数は増え続けています。
大統領選挙がわずか数ヶ月後に迫っていますが、
今後、気候変動問題に対する米国のリーダーシップはどうなっていくのでしょうか?

近年で最も先進的な大統領の一人であるオバマ氏は
科学界の助言に基づき
温室効果ガス(GHG)の排出量を抑制するために様々な政策を制定し
産業界への規制も積極的に行ってきました。
結果、GHG排出量は近年横ばいになっています。

私は政治アナリストではないですが、
11月の選挙では、クリントン氏はトランプ氏に一般投票で7-8%の差で勝つと考えています。

ヒラリー・クリントン氏が勝った場合、
オバマ氏の政策を引き継ぐことになるでしょう。
さらに、彼女は気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)へ
より積極的に関与していくことが期待されます。
彼女は政治家・国防長官としての経験をいかし、
複雑な利害関係や気候変動問題に関する国際議論の場で
その手腕を発揮していくでしょう。

一方、共和党の候補者ドナルド・トランプ氏は、
オバマ氏の政策を撤廃し、化石燃料資源の開発を加速する計画です。
彼は気候変動を含む様々な政策課題に対して何度も意見を変え、
既成政治家に不信感をもつ人々にアピールするために極端な言葉を使用してきました。
当選したとしても、いま語っている政策を実行することはないでしょう。
彼の気候政策がどのようなものになるのか全く予想がつきません。

現在の世論調査によると、
深刻な景気後退が起こらない限り、民主党が勝利すると予測されていますが
大きな差があるわけではありません。
トランプ氏はアメリカ市民の66%以上の間で非常に不評ですが、
クリントン氏は保守派の大多数に嫌われています。

米国の大統領は、世界で最も強力な人物の一人であり、
国内外に影響を与える権威を持ちますが、
政府の立法と司法によって制約されることを忘れてはなりません。
また、環境問題への関心が高まる自由市場社会において
政府の政策が社会の気候保護取り組みに逆行するべきではないのです。

筆者Frank Hiroshi Lingのプロフィール:
カリフォルニア大学バークレー校にて化学の修士号を取得。
IGES (地球環境研究機関)及び、茨城大学において多くの研究論文を出版し、
気候変動およびエネルギー開発の研究において豊富な経験を有する。

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世界の社会課題を現地からレポート!〜米国編「オレゴン州の『歴史的』条例と世論の実態」

最近米国で話題になっている最低賃金の引き上げ。
州や市町村レベルで大幅な引き上げを求める運動が広まっているが、
私の住むオレゴン州でも最近ニュースになっている。

それは州内の最低賃金を大幅に引き上げる条例が2月に可決され、知事がサインをしたからである。
この条例は、現在の最低賃金9.25ドルを2022年までに段階的に14.75まで引き上げるというものだ。
これは法律が制定された2013年6月時点において全国一高い水準で、
この後カリフォルニア州やニューヨーク州でも最低賃金を15ドルに改正することが合意されている。

オレゴン州の条例の特徴は、全国で初めて地域別の賃金水準を設定していること。
先述の14.75ドルはポートランド市内など都市圏での金額で、
郊外と地方ではそれぞれ約1ドルと2ドル低く設定される見込み。

そもそも、最低賃金を引き上げる理由には何が挙げられているのか。

オレゴン州のケート・ブラウン知事は条例にサインする前日に以下のツイートを発信した。

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上昇傾向にある家賃や食事などの生活費がまかなえる賃金(living wage)は市民権であり、
そのためには所得の底上げが必要という議論だ。
ポートランド市で特に深刻な貧困、ホームレス問題などを考えると、道理にかなった理由だと私は考えている。

それに対する議論が、経済を悪化させるというものだ。
最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加は、失業者を増やし
物価上昇に拍車をかけかねないと考える人は数多くいる。

党別に見ると、賛成派は主に民主党、反対派は共和党に分かれるが
興味深いことに経済的な階層ごとに意見が分かれているわけではなく
貧困層にも反対派が多くいる。

例えば、私の育ったニュー・ジャージー州の同期生に
州上院労働委員会が最低賃金を15ドルに引き上げる法案を可決したことを嘆いた人がいる。

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「今日はとても悲しい日だ。コンビニが従業員を解雇してタッチパネルに置き換えたように、
この法案によってファストフードの仕事がもっと減っていくだろう」というFacebookの投稿には
「ファストフードの時給が15ドルになるなんて。もっと高いスキルが求められる私の給料と変わらない」
「最低賃金の仕事だけ給与があがるなんて不公平」といったコメントが続く。
賃金の問題は生活に直結するため、議論が白熱しやすい。

この点で、オレゴン州の「歴史的」条例は労働者を代表する労働組合とビジネス界の「かしこい」妥協とされている。
市町村を人口密度によって3段階に分けて最低賃金を設定することで
物価が低く、都市のように高い賃金を支払うことが難しい地方の店にとっても対応がしやすいため
従業員の大幅な解雇を防ぐことができる。

この都市と地方との経済的な違いは
全国一律で決まる連邦法定最低賃金を15ドルまで引き上げる最も大きい障壁の一つかもしれない。
最低賃金は大統領予備選においても主要な論点となってきた。
秋の本選に向けた国としての議論と、州と市町村での動きに焦点を当てながら、この課題を注目していきたい。

執筆:エコネットワークスパートナー翻訳者:Stephen Jensen@米国

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世界の社会課題を現地からレポート!〜オランダ編「多様な働き方を受け入れる社会」

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子供を乗せるための箱つき自転車「バックフィッツ」。男性が運転しているのもよく見かけます。
Photo by Richard Masoner / Cyclelicious

最近テレビなどでオランダの働き方や教育、幸福度などを目にする機会が多くなりました。
オランダ在住5年目となる筆者が身近な例をあげながら
自由な働き方がどのように推奨されているのか紹介します。

まず、移住以降、出会ったオランダ人は、
男女問わず殆どが週3日もしくは4日のパートタイマーでした。
彼らはフルタイマーと同様、賃金や保険、年金も保障されます。
オランダにはロイヤルダッチシェルやユニリーバなど世界的にも規模の大きい企業がありますが
こういった大企業の管理職でも週4日勤務、
そのうち最低一日は自宅勤務することが推奨されているところもあるようです。

またオランダ労働法では、有給休暇はもちろんのこと、
年収の8%をホリデー代として
全従業員に支給することが義務付けられています。
つまり「休む事」が非常に重要視されているのです。

更にオランダでは、様々な業務ごとの短時間労働をシェアすることにより
雇用機会を増やすと同時に、
一人当たりの労働時間を短縮する「ワークシェアリング」が進んでいます。

例えば息子の通う小学校を例に挙げると、
事務担当のスタッフ、先生方がランチ休憩を取る間に子供を面倒見てくれる外部の保育機関、
担任の先生も週4日勤務のパートタイムなので金曜日だけ教えてくれるもう一人の先生など
様々な業務を細分化することにより、先生がしっかりと子供と向き合い、
教育に専念できる体勢が整っています。

小学校の送り迎えでは、父親、母親が半々くらいの割合で来ています。
(通常学校が終わるのは15:15、水曜だけ半日なので12:30)
それだけ男性が働く企業側にも柔軟性があり、
その間に母親は仕事ができたり自分の時間が持てたりします。

当たり前の事ですが、
父親が働く企業が柔軟性のある働き方を推奨していなければ、母親は仕事ができません。
息子のクラスには主夫、つまりハウスハズバンドが二人います。
パートナーである女性がフルタイムもしくは週4日などで働く間
家事や送り迎えを担当しているようです。
パートナー間での合意はもちろんのこと、
社会全体として、こうした選択肢が受け入れられているのです。

つまり、仕事だけが全てではなく
家族を築く上でベストの状態がたまたま主夫となることだったり、
ここ数年頑張ったからしばらく休んで育児に専念したい など、
こういった考え方が受け入れられる社会なのだと感じます。

出世や年収などで測る豊かさだけでなく、家族との時間、築き上げていく関係性が重要、
というマインドセットの違い、そしてその様な選択肢があり、
それを受け入れているオランダ社会。
日本でも、社会の一員としての役割を持ちながら様々な人生を歩む個人が、
仕事と家族における両方の幸せを目指し、
多様な働き方と選択肢が受け入れられる社会になることを望む声は多いのではないでしょうか。

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世界の社会課題を現地からレポート!〜カナダ編「大規模ダムか自然エネルギーか~ハンスト運動が問う」

桜が咲いている。カナダ西海岸にあるバンクーバーの静かな日曜日の朝。
州営電力会社BC HYDRO本社の高層ビルの前にあるのはダム建設反対運動のテント村。

6 BC Hydro and protest camp
州営電力会社BC Hydro本社ビル前、反対運動のテント村(4月3日)

昨日Kristin Henryという24歳の参加者がハンスト(hunger strike)の19日目に
体調が危険な状態にになり救急車で病院に運ばれた。

2 Kristin Henry, tent, hunger strike, 13-Mar-2016
テント村でハンスト中のKristin Henry

こういうことは海外であまり報道されないが、
背景にあるのは現在人類が世界中で直面している様々な問題の中でも代表的なものの一つ
エネルギー問題である。

このテント村で運動をしている若者たちの対象は
州政府が建設しようとしている900MW、九十億ドル(約八千億円)の水力発電用の大規模ダム。

5 site-c-dam, image by BC Hydro 2016
建設予定の大規模水力発電所のSite Cダム

「クリーン・エネルギー」を謳い
将来的に41万世帯相当の電力ニーズを満たすために必要だと主張する州政府に対して、
反対派は、その電力ニーズに根拠がない、事業コストが高い、
環境へのインパクトが大きすぎるという懸念を表している。

12 Let's all be smart about power
州営電力会社BC Hydroの広告:「Let’s all be smart about power」

貯水池となる沈没予定地には、23,000ヘクタール、延べ100kmに渡る河川渓谷に豊かな生物多様性が存在し、
100万人の食べ物を供給できる農地もある。

3 Peacevalley-ca photo

先住民族(総称で最初に住んでいた人たちという意味でファースト・ネーションズと呼ばれる)
の聖地や墓地など文化的・伝統的に貴重な土地もあるが
先住民の土地所有権の問題は、政府との間で未だに解決されていない。
数百年の差別的な政策の結果、先住民コミュニティは全国的に貧困、アルコール中毒、ホームレス、
自殺、健康問題、教育不足など多くの課題を抱えている。

しかし、最近、先住民の問題は大きく報道されているし、土地・資源への権利は最高裁判所で守られるようになってきている。
また、それぞれの理念やサポート・ネットワークをもつ環境保護団体と先住民の協力は影響力が強く、
今回のダム反対運動でも、参加者はダム予定地に住むファースト・ネーションズと力を合わせて活動している。

この運動は大規模ダムを対象にするだけでなく、地球規模の問題を意識し、
気候変動を引き起こす化石燃料の新規開発やパイプライン建設を反対し、
代わりに地球に優しい再生可能なエネルギーで将来の需要を賄う方向性に働きかけている。

カナダでは、大規模ダムの代わりとして、地熱等、再生可能エネルギーが有望視されている。
日本でも、電力市場の自由化で様々な再生可能エネルギーが増えていくだろう。

全ての関係者が互いを尊敬し合い、よい方向を模索することはとても大事!
さまざまな矛盾や利害衝突が起きるこのような問題においてこそ
すべての関係者が、課題について多面的かつ事実に基づいた情報交換を行うための
「サステナブルコミュニケーション」
がさらに必要になっていくだろう。

執筆:エコネットワークスパートナー翻訳者:Randal Helten@カナダ

1 Kirsten Henry, quote, March 2016, Site C Dam
「簡単なことです。Site Cダムのエネルギーは要りませんが、ダムが破壊する全てものは必要なのです。」
ーKristin Henry

ーーーーー
写真クレジット
1. R. Helten
2. Hunger Strike for the Peace River Valley (Facebook)
3. B.C. Hydro Corporation
4. R. Helten
5. Peace Valley Environment Association
6. Hunger Strike for the Peace River Valley (Facebook)

参考情報
B.C.HYDRO
BC Hydro: https://www.bchydro.com/energy-in-bc/projects/site_c.html
Info Sheet
https://www.bchydro.com/content/dam/hydro/medialib/internet/documents/news/press_releases/clean_energy_act/fact_sheet_site_c.pdf

HUNGER STRIKE
https://www.facebook.com/Hunger-Strike-for-the-Peace-River-Valley-STOP-SITE-C-1678467482391444/

FIRST NATIONS
Treat 8 Tribal Association: http://treaty8.bc.ca/
West Moberly First Nations: http://www.westmo.org/
Prophet River First Nation: http://prophetriverfn.com/

SOME ENVIRONMENTAL GROUPS
Peace Valley Environment Association: www.peacevalley.ca
Wilderness Committee: https://www.wildernesscommittee.org/sitec
DeSmog Blog: www.desmog.ca/site-c-dam-bc

MEDIA
http://www.nationalobserver.com/2016/04/01/news/site-c-hunger-striker-condemns-christy-clark-hours-hospitalization
http://www.cknw.com/2016/03/13/bc-hydro-headquarters-site-of-latest-site-c-protest-camp/
http://www.straight.com/news/670011/site-c-protester-taken-hospital-19-days-hunger-strike-vancouver
ーーーーーー

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世界の社会課題を現地からレポート〜ドイツ編「難民支援の現場」

ドイツでは昨年2015年だけで、109万人にのぼる難民が到着しました。
難民受け入れと生活支援は、手探りのなか始まっています。

「『何もしない』は選択肢にはない」をモットーに掲げる
難民支援団体Kreuzberg Hilftは、市民から生活用品を集め
テンペルホフ空港をはじめ市内各所にある臨時難民受け入れ施設(多くが体育館)への配布を行っています。

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Kreuzberg Hilftの運営施設を訪問してみると
ひっきりなしに衣類を持参する人が訪れ、平日の昼間でも4〜5人のスタッフが忙しく働いていました。

目を見張るのは、市民のすばやい組織化。
寄付集めからはじまった活動は、設立からわずか6ヶ月で大きく成長し
以下のような運営体制が構築されています。

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寄付品運営部、事務局、PR部、受け入れ施設とのコーディネイト部、助成金申請部、
大型寄付金獲得部、経理部、政治部、イベント企画部のほかプロジェクトごとに
さまざまな部署があり、すべてがボランティアによって運営されています。

関心のある人になるべく多く参加してもらえるよう
各部署には連絡担当者がおり、メールアドレスが公開されています。

いまできることを考え、市民ですぐ組織化する底力、を見た気がしました。

個人でも積極的な支援が多く見られます。

ベルリン市内に住むエスターさんもその一人。
エスターさんは必要とされている物資リストをネットでチェックし
友人同士で集めて持っていくそうです。

子供の文具と衣類は状態の良い物、食品はセキュリティの点から未開封のものだけ。
エスターさんは難民申請のために州保健社会局前にじっと並びつくす人々の群れを見て、
事態の深刻さを実感したそうです。自身の考えを語ってくれました。

「難民としてやってくる人はただならない数になっています。
市だけではなく、市民もいっしょにサポートしていかないとこれ以上立ち行きません。
州や市がシステム作りを押し進めてくれるのであれば、
わたしたち市民はひとりひとりができることをやりましょう。
どんなことだっていいんです。」

今回のレポートの取材を通して、一人ひとりが解決の方法を実行しつづけることが重要だと感じました。
一般の人が広く、自分に適したさまざまな形で問題解決に参加できるシステムづくりは
今後ほかの社会問題においても解決のカギになるのではないでしょうか。

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世界の社会課題を現地からレポート〜ニュージーランド編「子どもの貧困」

企業は、各社会の中の一存在です。

その社会のなかで注目が集まる課題に、
企業も無関心ではいられず、何からのスタンスが
必要になってきます。

では、世界の各社会でいま、
どんな課題に注目が集まっているのでしょう。

例えば、街を走るバスのラッピング広告でみかけた公共広告。
新聞やニュースサイト、テレビでよく話題になっていること。

それらの日常の気づきから、
世界の各地域で暮らす
エコネットワークスのパートナーが、
各地の社会課題の話題を、写真とコメントでお届けします。

・・・・・

ニュージーランド編〜 先進国の「子どもの貧困」

この数ヶ月、
「このニュージーランドの子どもたちの5人に1人が、
十分なランチをたべられていない」
と啓発するメッセージを、街を走るバスのラッピング広告で何度か目にしました。

調べてみると、
Child Poverty Monitor
http://www.childpoverty.co.nz/
という非営利機関が、ニュージーランドで子どもの貧困(Child Poverty)が増えていることを示す報告書を発表し、メディア機関や政党が、社会的な課題として取り上げはじめているようです。

Child Poverty Monitor: 2015 Technical Report
https://www.kidscan.org.nz/news/child-poverty-monitor-2015-technical-report

例えば、野党の労働党(Labour party)が次のようなビジュアル画像をツイッターで拡散しています。

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https://twitter.com/nzlabour/status/676607971762167809

こちらは、NZ Heraldというメディアが拡散するビジュアルです。

スクリーンショット(2016-01-13 3.59.41)

https://twitter.com/nzherald/status/676580928093741057

報告書によると、とくに、ヨーロッパ系の子どもたちに比べ、
マオリやパシフィック諸島出身の子どもたちの方が貧困率が倍あり、また、
各地域や学校間での格差が広がり、固定しつつあるとのことです。

この元となる報告書を出し啓発キャンペーンを行っている、
Children’s Commissionerという公的立場についている
Russell Willis教授は、キャンペーンを始めてから、一般市民と
ビジネスから大きな反響があったといいます。

同教授は、ビジネスに対して、
「それぞれの地域の学校や社会的機関と連携を確立して、
お互いにとって “make sense”(道理にかなう、意味をなす)方法でともに取組んで」
と呼びかけています。

「子どもの貧困」は、2015年に国際社会で合意された
Sustainable Development Goalsでも取り上げられていますが、
決して貧困国や途上国だけの課題ではありません。

Sustainable Developmentに関わる自らの社会課題として、
ニュージーランド、日本を含む「先進国」でも、
これから更なる話題となるでしょうか。

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