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社会課題を身近に ーバーチャル・リアリティの力

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Photo by Knight Center for Journalism in the America

ニュースで見るさまざまな社会・環境問題ー
深刻そうなのはわかるが、いま自分に影響がないし、
実際に何が起きているか想像しにくく
中々行動を起こすことにはつながらないという人が多いのではないかと思います。

他人のことや、遠い国・未来のことを「自分ごと化」するのは難しいことですが
問題についてより具体的にイメージできれば
何かしたいと考える人は増えるのではないでしょうか?

2016年、海外では五感に訴えかける「バーチャルリアリティ(VR)」の技術が
サステナビリティやコーズマーケティングの分野で
活用される事例が多く見られました。
VRは、データや統計を使った情報とは違うレベルのインパクトを人々に与え
人々の感情により強く働きかけることが期待されています。

いくつか事例をご紹介します。

靴が1足売れる度に途上国の子どもに靴を届けるTOMS shoesは、
これまでに6,000万足以上の靴を寄付してきました。
もっと多くの人に支援の必要性を理解してもらうため、
2016年にVRを活用した告知キャンペーンを開始。


左上の矢印で動画をコントロールすることができます。

この映像では、TOMs shoesで靴を購入した消費者が
コロンビアに靴を届けにいく様子と
靴を受け取った子どもの生活が変化する様子を
視聴者が360度自由にコントロールすることが可能な動画を通して伝えています。
360度動画は消費者と子どものナレーションとともに展開していくので
登場人物の動きや感情をリアルに追体験することができます。

また、国際的な人権団体Terre des Hommesが作成したのが
ケニアの児童奴隷が暴力や性的虐待を受ける様子を子どもの視点から伝えるアプリ。

iphoneを動かすことで映像を360度動かすことができるので
まるで自分がこの現場にいて、この映像を撮影しているような気分になります。
撮影には5つのマイクをつけたカメラを14台も使用しているので
音にも臨場感があります。

このショッキングでリアルな映像を見たら、
「なぜこのような事が起きているのか知りたい」
「何かできることはないのか」
と考える人も少なくないのではないでしょうか?

アプリの内容は以下の360度動画としても発信されています。

英国の自閉症協会では
音や光などに対する感覚が過敏な自閉症の子どもにとって、
外を歩くのがどんなに恐ろしいかを
体験できるシュミレーター(ヘッドセット)をつくりました。
自閉症協会では、人間は他人の体験を実際に経験することで共感しやすくなることから
シュミレーターを通して自閉症に対する理解を少しでも高め、
差別をなくしていくことをめざしています。

シュミレーターで体験できる内容は以下の動画で確認できます。

※大きな音や激しい光が含まれるので気をつけてください。

VRは、環境破壊の現状を人々に実感してもらう上でも
効果が期待されています。

スタンフォード大学の研究所では、
CO2が海を酸性化させている現状とこのまま気候変動が進むと海がどうなるかを
VRを通じて人々に体験してもらうことで
人々が環境保護のために行動を起こすよう働きかけることをめざしています。

2017年も、VRがサステナビリティ分野でどのように進化していくかウォッチしたいと思います。

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サステナビリティイノベーション 2016年4つのトレンド

スウェーデンのシンクタンクSustainia
国際機関や国際NGOなどの専門家らとともに
2012年から世界のサステナビリティイノベーション事例を集めた報告書
「SUSTAINIA100」を発表しています。
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2016年からはグローバルコンパクトとも協働し
イノベーションの拡大によるSDGsの達成を目指しています。

2016年にイノベーションが活発だったのは以下の4分野。
事例とともにトレンドをご紹介します。

トレンド①Well-being(健康で安心・安全生活)を促進するコミュニティ
「米国のスーパーマーケットの事例」
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Photo by Sustainia 2016: P143 「DAILY TABLE」

地域の人々の健康改善が地域経済の活発化につながることから
地域の健康促進に取り組む事例が増えています。
米国のスーパー「Daily Table」は
貧困・肥満問題解決のために食品ロスを使用し
健康的ですぐ食べられる食事を安価で提供。
生産者から流通、製造業など地域のさまざまな主体が食品の寄付を行っています。

Sustainia-2016年のトレンド②意外な原料から利益を生み出す
「アディダスの商品事例」
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Photo by Sustainia 2016: P51 「ADIDAS | PARLEY FOR THE OCEANS」

SDGs(持続可能な開発目標)が循環型社会の形成を掲げるなか
循環型ビジネス構築を目指す企業が欧州で増えています。
ドイツのアディダスは、海洋保護に取り組むNGOと共同で海にプラスチックごみや、
違法に設置された刺網を原料にして作られたシューズを発表しました。
2016年中に商品化の予定です。

Sustainia-2016年のトレンド③電力網をなくす
「ナトリウムイオン電池の開発事例」
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Photo by Sustainia 2016: P109 「M-KOPA SOLAR」

大規模発電所からの送電電力に依存せず
複数の電源と蓄電設備を組み合わせた小規模の電力供給網
「マイクログリッド」の導入が世界で進んでいます。
マイクログリッドの維持に不可欠なのが蓄電池。
レアメタルを使うリチウムイオン蓄電池に代わる電池の開発が求められるなか
英国で、海水から無尽蔵に取り出せるナトリウムを利用した蓄電池が開発されました。

Sustainia-2016年のトレンド④ICTを活用してインフラを改善する
「尿を水に変えるトイレの開発事例」
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Photo by Sustainia 2016: P120 「SEVA SUSTAINABLE SANITATION」

途上国では、水や電気が利用できる人よりも携帯電話を所有する人の方が多いことから
ICTを活用したインフラ改善事例が増えています。
24億人がトイレがない生活を送っているという社会課題に取り組むため
米国で、太陽光を利用して尿を無害な水にするトイレが開発されました。
スマホを使って利用者が簡単にメンテナンスできる仕組みで
インドなど4カ国で導入されています。

企業にとって社会の持続可能性の追求は単なるビジネスチャンスではありません。
持続可能性への取り組みは
企業のイノベーション能力を促進し、
結果として企業の「持続可能な経営」にもつながります。

Deloitteの2013年の調査では、
サステナビリティとイノベーションの関係性について
・サステナビリティという思考のレンズを通すと、従来とは違う視点で戦略を検討することができる
・サステナビリティは、企業経営に制約を課すことから(例:環境への配慮など)
事業形態や製造工程の変更などのイノベーションを促進するドライバーになる
・サステナビリティとイノベーションのランキング掲載企業を比較した結果
サステナビリティ・リーダーはイノベーション・リーダーになりやすい
(サステナビリティでランクインしていない企業に比べて同年で4倍、翌年で6倍の差)
とまとめています。

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グラフ:前年(右)と同年(中央)のサステナビリティリーダーは
平均値(左)に対してイノベーションリーダーになる確率が高い
Deloitte “Sustainability Driven Innovation Harnessing sustainability’s ability to spark innovation” (2013) P2

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弱者に優しい国、中国

上海の地下鉄は、現在1号線~13号線と16号線の計14本が開通しています。
(厳密には地下鉄のほか、ライトレールと呼ばれる地上路線も含みます)
今後も路線が増える予定とのことで、
私が暮らしていた10年前は5本しかなかったのに、
10年一昔どころか二昔、三昔といった感があります。

ところでこの地下鉄、ラッシュ時は東京の都心をはるかにしのぐ混雑状況。
今は路線が増えて混雑も緩和されたかと思って調べてみましたが、
人口が増えているせいか、相変わらずの盛況ぶりのようです。

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Photo by Ray_LAC

私も当時、毎日押すな押すなの大混雑の中
大変な思いをして通勤していましたが、
妊娠してお腹が少し目立ってくると
驚いたことに通勤の際、皆が我先にと席を譲ってくれるのです。
あれほどの争奪戦を勝ち抜いてようやく手に入れたはずの席を、
いとも簡単に、そしてスマートに。

中国では基本的に共働きのため、妊娠しても出産ぎりぎりまで働く女性がたくさんいます。
もちろん彼女たちの通勤手段は地下鉄やバス。
そして多くの乗客が妊婦さんに優しい。
もちろん、下を向いて知らないふりをする人もいるのですが、
見知らぬおせっかい、いや親切な人が
「この人妊婦さんだからあなた譲ってあげてよ!」と席を立たせてしまうことも。
譲っていただける確率としては、私の感覚で80%ぐらいでしょうか。

妊婦さんだけでなく、高齢者や子供に対しても同様です。
日本では車内でのベビーカーの扱いが議論されていますが、
中国では問題にもなりません。

バリアフリーに関してはまだまだなので、
ベビーカーと荷物と赤ちゃんを抱えて階段を上り下りしていると
近くの男性がさっと手伝ってくれたりします。
また、席を譲られると老人扱いされたといって不機嫌になる高齢者もいません。

ただし、席を譲ってもらいたいがために
「妊婦に見せかけるパッド」なんていう商品もあるようですが…。

時代とともに次々と姿を変えてゆく中国。
特に上海の変化はめまぐるしく、
訪れるたびに違う様相を見せてくれます。
しかし時代が変わっても、
この「弱者に優しい文化」はぜひ変わらずにいてほしいと思います。

執筆:中国語通訳・翻訳者 陰山有加

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たばこ産業への逆風

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Photo by Rusty Clark

ウルグアイ政府は健康保護の観点から
2010年にたばこの大規模な広告を禁止し
パッケージに健康被害の画像を入れることを義務づける法律を制定しました。

たばこメーカーフィリップ・モリスは
貿易協定で保護されている知的財産権(たばこの商標)を
ウルグアイの法律が侵害したと主張し
有害性表示の義務化によって受けた損害に対する賠償を求めていましたが
世界銀行の紛争解決機関は、7月に
フィリップ・モリスの請求を却下しました。

ウルグアイでは、たばこのパッケージの両面の80%に
健康被害の警告をつけることが義務付けられているほか
「ライト」などといったたばこの健康リスクを軽視されるような表示も
禁止されています。
これらのコストにより、
同社はウルグアイで販売していた12種類のうち7種類のたばこを引き揚げを決定しています。

フィリップ・モリスは、ブリティッシュ・アメリカン・タバコとともに
EUでも「たばこの健康被害を表示することを義務付けたEU指令が不当である」
として訴訟を起こしていましたが
(この訴訟には、JT international、Imperial Tobacco Group、Gallaher Groupも関係人として参加)
欧州司法裁判所は5月に「EU指令に違法性はない」との判決を下しました。

このEU指令では
・たばこパッケージの両面の65%以上に写真付きで健康被害を表示すること
・口当たりを良くするための添加物を禁止すること
(メンソールは2020年まで販売可能)
などが定められており
今回の裁判により
EU全加盟国全で上記のEU指令が発効されました。

このようなたばこのパッケージはオーストラリアでも導入が決定しているほか、
シンガポールや南アフリカなどでも導入が検討されています。

たばこ産業に対する逆風が見られるのは
販売に関する規制だけではありません。

ESG投資における動きを見てみると

フランスの大手保険会社アクサグループは、
たばこによって世界で年間600万人が亡くなっており
たばこによる社会的コストは
戦争やテロ対策予算を足したものと同額であることから
5月に総額18億ユーロのたばこ産業からの
ダイベストメントを決定しました。

2000年からたばこ産業への投資を中止している
米最大の年金基金カルパースは
このダイベストメントによって発生した機会損害が
2014年までで30億ドルに上っていることから
たばこ産業への投資再開が憶測されていましたが、
5月にダイベストメントの継続を発表しました。
しかし、今回たばこ産業への再投資についての検討期間を当初の1-2年から
半年から9ヶ月に短縮する方針も明らかにしています。

検討期間の短縮について
「社会的コストの大きさや市民への健康被害を考慮し、
年金基金はこのような産業と関係を持つべきでない」として
複数の健康団体や政府官僚からの批判が相次ぎ、
カルパースのスポークスマンは
「検討期間の短縮は、たばこ産業への再投資の意思を示すものではない」
とコメントしています。

ーーー
参照:
ウルグアイの法律、訴訟
http://www.triplepundit.com/2016/07/uruguay-wins-lawsuit-vs-phillip-morris-tough-tobacco-rules/
欧州での訴訟
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A62014CC0547
http://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2016-05/cp160048en.pdf

たばこパッケージに関する世界の動き
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%B1-%E3%82%B8%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E5%8B%95%E5%90%91.pdf

アクサのダイベストメント
https://www.axa.com/en/newsroom/press-releases/axa-divests-tobacco-industry-assets

カルパース たばこ産業のダイベストメント
http://in.reuters.com/article/calpers-tobacco-idINL2N18D1QK
http://www.wsj.com/articles/tobacco-gains-prompts-fund-to-reconsider-investment-strategy-1461914447
https://www.calpers.ca.gov/page/newsroom/calpers-news/2016/review-tobacco-divestments

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日本からは花王 WWFが選ぶサステナビリティ調達優良企業は?

WWFは、6月に、消費財・小売・食品企業の業界団体Consumer Goods Forum(CGF)
の会員企業256社の開示情報をもとに
サステナビリティ調達の取り組み状況についての調査結果を発表しました。

調査対象となった原材料は
・森林破壊と気候変動への影響が大きい:パーム油、紙、パルプ、牛肉、木材、乳製品、豆
・水資源の使用量、汚染度が高い:綿、サトウキビ
・乱獲が懸念される:マグロ、白身魚、熱帯エビ、養殖エビ、養殖鮭、食物連鎖の低層にいる小魚
の14点です。

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写真:同レポートP8:調査対象14品目

WWFは、上記14品目についてCGF加盟企業256社が調達している量の割合が
世界全体の生産量において大きいことを指摘した上で
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写真:同レポートP6:14品目の世界全体生産量
におけるCGF加盟企業256社の調達量(緑:小売業、青:製造業)

・アニュアルレポートでサステナブル調達について開示しているのは対象企業のうち48%
・調達方針や戦略について進捗報告を行っているのは46%
・森林破壊ゼロ方針を出しているのは36%で、それに対して期限付きの定量目標を設定しているのは20%
・上記14の原材料に対して期限付きの定量目標を設定しているのはわずか9%(以下の22社)で
目標通りに取り組みが進んでいるのはそのうちの14社のみ

であることを報告し、サステナビリティー調達の実現に向けて本格的に行動を起こしているのは
一部の企業のみであると訴えています。

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写真:同レポートP8:調査対象14品目に対しての調達取り組みで「優良」と評価された22社

日本企業も、味の素、伊藤園、明治、キッコーマン、キリンホールディングス、
資生堂、伊藤忠食品、イオン、ローソンなど77社が調査対象でしたが、
今回優良企業と評価されたのは花王のみでした。

WWFは、CGF加盟企業に対し
2020年までに全ての調達においてWWFの推奨基準をクリアした調達先だけを採用することを目指し
実現のための期間付き定量目標と行動計画を提示することを呼びかけています。

先日参加したFSCジャパンセミナー「企業の責任調達」では
花王の購買部門統括の方が
「花王は消費者の意識が高まっていくことを予測し、先進的な調達方針を打ち出してきた。
環境NGOからの圧力は年々高まる一方、日本の消費者意識の高まりは感じない。
人々の意識が変わらないと、責任調達にかかるコストは全て売り手が負担することになる。」
と語っていました。

しかし世界全体を見渡すと
ニールセンが昨年世界の消費者対象に行った調査では、
「サステナビリティにコミットする企業にもっとお金を払ってもいい」
と回答した人の割合が2013年の50%から2015年には66%に増加しており
とくに1980年代から2000年代初頭に生まれたミレニアル世代の若者においては
その割合が73%に及びます。

ニールセンのレピュテーション担当者はこの調査について
「『社会的責任を果たし環境にやさしい』というイメージを若者に与えられる企業は
市場シェアの獲得機会に加え、今後大きな購買力を持つことになる
ミレニアル世代との強力なつながりを築くチャンスも手にしている」と述べています。

グローバル市場で事業を行う企業はもちろん
変化の早いいまの時代、
日本の消費者にもいつ変化が訪れるかわかりません。

ーーーーーーー
参照:
WWFプレスリリース 
WWF報告書 Slow Road to Sustainability

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食生活へのシフトに向けた動き

2050年までに世界人口が90億人に達すると予測されるなか
不足が懸念されるたんぱく源の生産。

家畜の餌に使う大豆の生産は森林破壊の最大の原因のひとつ
世界の温室効果ガス排出の20%近くが畜産業関連であり
現在の世界の食生活を地球が支え続けていくことはできません。

世界資源研究所は4月に
持続可能な食生活へのシフトの方法を提案するレポートを発表しました。

いままでの類似取り組みは
ベジタリアンになることを呼びかけるキャンペーンなど
消費者への教育が主でした。

しかしまだ多くの消費者が、食べ物の環境・社会影響よりも
味や価格を重視することや
そもそも購買行為は、理性や情報よりも
無意識な習慣に基づくことが多いことから、
過去の取り組みは効果が見られなかった点を指摘しています。

そこで同レポートでは、
効果が実証されている民間企業のマーケティング手法に基づいた
包括的な取り組みをフードチェーン全体で行うことを提唱しています。

主な提案は以下の4点。
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図:レポートP12
(以下右上から時計回り)
・肉の代替商品(大豆ミートなど)を肉売り場に置き、
味、外見、パッケージを動物由来のものに似せるなど、食生活のシフトをより自然にする
・消費行動に影響しやすい「健康」や「価格」をアピールする。
(植物由来のたんぱく質は動物由来のものより安いため、原料を植物由来に変えることで食品製造企業の利益向上にもつながる)
・商品を見かける回数が多いほど購買につながるため、サステナブルな食品の販売や印象的な広告を増やす。
・食生活は社会規範や文化的環境に左右されるため(一部の国では肉を食べることが豊かさの象徴であるなど)
教育だけでなく、どの食品が社会的に好ましいかのイメージを変えていくことが必要。

同レポートでは、政府に上記の仕組みづくりへの財政支援を呼びかけ
企業や政府に、動物由来のたんぱく質の商品削減に関する定量目標を設定することを提案しています。

これに沿った企業の動きを見てみると
今年2月に英NGOのForum for the Futureが、WWFや、小売大手のTargetやWaitrose、
菓子製造業のHershey’sなど6社とともに
プロテインチャレンジ 2040を発表しました。
このイニシアティブでは9億人が健康的で環境によいたんぱく質を手ごろな価格で入手できることを目指し、
さらなる団体や企業の参加を呼びかけています。

主な取り組みは以下で、各項目に2018年までの中期目標を設定しています。
・植物由来たんぱく源の消費を増やす:例)調理済み食品に植物性たんぱく質を使用する、企業のブランドの力を使って啓発を行う
・イノベーションにより、人間の食料にならない資源を飼料に転用
・フードチェーンで無駄になっている30%の食料を有効利用する
・在来植物からのたんぱく源摂取を増やす
・水産養殖を持続可能にする:例)浄水作用を持ち、魚の餌にもなる微生物を使用した養殖
・新しい肥料を使い土壌の健康を回復する:例)植物の害虫や干ばつへの耐性を高めるワカメなど

また、肉の代替たんぱく源として注目されているのが藻や昆虫。
材料の一部にコオロギの粉を使用したプロテインバーを生産するExoはKickstarterで資金調達を行なっており、
2013年から2016年3月までで6億円以上を集めていることが注目されています。

最後に、国単位の動きとして興味深いのが
デンマーク政府の肉への課税検討です。
デンマークの倫理委員会は、パリ協定の2度目標を達成するには消費者の倫理的行動に頼るだけでは不十分で
国としての政策が必要だとコメントしています。

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パタゴニア、新しい形の消費を後押し

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写真:パタゴニアウェブサイト

パタゴニアのCEO、Rose Marcarioは昨年
米国で消費が最も増える年末のホリデーシーズンに
「所有」と「消費」についてのメッセージを発表しました。

入手、製造、廃棄を繰り返すことで生態系を破産に追いやる「消費者」でなく、
購入したものに対して手入れや修理までの責任をとる「所有者」になることを呼びかけるものです。

「消費」に拍車をかけるビジネス
(独占的な部品を開発して修理を能動的に妨害するなど)を批判し、
パタゴニアは「所有」という行為を取り戻すために
より高品質の製品をつくると同時に、修理部品を入手可能にし、
修理を簡単にする責任があることを強調しています。

パタゴニアは北米で最大の衣服修理工場を持つだけでなく
iFixit*と提携し
個人が自分で製品を修理できるよう
ウェブサイトで製品ごとの無料の修理ガイドを公開しています。

※iFixit:製品の修理に役立つ情報を人々が交換し合うプラットフォームを提供し、修理に必要な道具や部品を販売する企業

また、人々が大切に着続けるパタゴニアの服を持ち主のストーリーとともに
SNSウェブサイトで紹介する取り組みも話題になっており
パタゴニアは、オンラインでの効果的なサステナビリティ情報発信度をランキング化する
英国の企業Sustainlyの「第6回 Social media sustainability index」で
世界の475社中、GE、ユニリーバに続いて3位に選ばれています。
(ランキング結果はこちらで登録するとダウンロードできます)

パタゴニアは、拡大が進むシェアリングエコノミーのさらなる成長にも積極的に貢献しています。
代表的なのが、シェアリングエコノミー型ビジネスの急先鋒Yerdleとのコラボレーション。

Yerdleは不用品を提供して獲得したポイントで
他の人の不用品を買うことができるアプリです。

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「お金ではなく、Yerdle通貨をつかって交換しよう」Yerdle ウェブサイト

同社では”sharing is the new shopping. ”(シェアは新しいお買い物)
というコンセプトに基づき
「人々が買うものを25%削減すること」をミッションに掲げています。

パタゴニアはYerdleに投資するとともに中古製品や余剰在庫を寄付しています。
この活動は、余剰在庫を流通させて廃棄物を減らすだけでなく
新しい顧客層に高品質で長く使える製品をつくっていることを伝える
アピールになります。
またアプリの利用者はYerdleの製品をSNSに共有することが多く、
そこからさらなる潜在顧客へのアウトリーチも期待できるようです。

シェアリングエコノミーにおいては
製品を再販した際の価値が重視されるため
耐久性のある高品質の製品を求める消費者が増えていくと考えられます。

多くの消費の形が、「所有」から「シェア」に移っていくなかでも
人々が「ほしい」と思えるような製品をつくり
消費者といっしょに持続的な社会実現に向かっていくパタゴニアの戦略にこれからも期待です。

ーーーー
参照
Yerdleとパタゴニアのコラボレーションについて
https://www.greenbiz.com/blog/2014/04/15/yerdle-patagonia-collaborative-economy

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シェアリングエコノミー その拡大がひきおこす労働問題とは?


Photo by Ramit Batra

「シェアリングエコノミー」(共有型経済)という言葉を知っていますか?

「シェア」というとモノの共同利用が浮かびますが
モノだけでなく、提供者が所有するサービスや労働力などを
共有するビジネスのことを指します。

提供されるサービスの例としては
・自分の部屋を使わない間貸す
・マイカーをタクシーのように運転する
・空いた時間に家事代行を行う

などが挙げられます。

近年、利用者と提供者を結びつける「場」の運営をする企業が
欧米を中心に急成長しており
一般の登録ドライバーによる配車サービスを行う
米国のUber社の企業価値は6兆円を超えるそうです。*1

そんな中、PwCは
シェアリング・エコノミーにおける5つの市場(金融、人材、宿泊施設、運輸、音楽やビデオの配信)の規模が
2013年の約1兆8000億円から、2025年までに約40兆円以上へと成長するという予測を発表。

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写真はPwC報告から 
URL: http://www.pwc.co.uk/issues/megatrends/collisions/sharingeconomy/the-sharing-economy-sizing-the-revenue-opportunity.jhtml

シェアリングエコノミーは
モノの共有による社会全体の環境負担軽減や
地域でサービスを提供している場合には
コミュニティーを活性化するほか*2
パートタイマーや失業者に収入源や労働機会を与えるなど
さまざまな価値が期待されています。

しかし、このビジネスの仕組みは
「ギグ・エコノミー」(単発で仕事を発注する非正規労働経済)とも呼ばれ
最近労働面での問題が注目されています。

たとえば、サービス提供の場を運営する企業が
運転手などの労働者を「従業員」でなく「独立請負人」として雇うことで
「中間搾取」を行っているという批判が増えており
昨年は、時間外労働や労災、経費などの支払いを求める訴訟が複数の企業*3
を対象に起きています。

7月には、ヒラリークリントンが
「ギグ・エコノミーは労働機会を提供しイノベーションを促進しているが、職場の保障や良い仕事とはいかにあるべきかについて疑問を提起している」
「労働者を不当に自営業者扱いし、賃金を搾取することを厳しく取り締まる」*4
と発言したことが注目されています。

米国では、インターネットの普及や不安定な経済情勢などにより
雇われない働き方をする人が増えており(3人に1人がフリーランサー*5)
多様化する労働者を守る政策づくりが今後さらに必要になっていくようです。

——–
参照
*1: 「マイクロソフトがウーバーに124億円投資-500億ドルの企業価値」
http://www.bloomberg.co.jp/bb/newsarchive/NSE4W46JTSE901.html
*2: 「シェアリングエコノミー」
http://www.shinnihon.or.jp/shinnihon-library/publications/issue/info-sensor/2014-08-02.html
*3: 「Shackling the Sharing Economy」
http://www.wsj.com/articles/shackling-the-sharing-economy-1438552181
*4: 「Hillary Clinton takes aim at Uber during speech on ‘gig economy’」
http://www.cnet.com/news/hillary-clinton-takes-aim-at-uber-during-speech-gig-economy/
*5: 「In economic address, Hillary Clinton calls out ‘gig’ economy」
http://www.cnbc.com/2015/07/13/in-economic-address-hillary-clinton-calls-out-gig-economy.html

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