コミュニケーション/レポーティングのこれから」カテゴリーアーカイブ

社会課題を身近に ーバーチャル・リアリティの力

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Photo by Knight Center for Journalism in the America

ニュースで見るさまざまな社会・環境問題ー
深刻そうなのはわかるが、いま自分に影響がないし、
実際に何が起きているか想像しにくく
中々行動を起こすことにはつながらないという人が多いのではないかと思います。

他人のことや、遠い国・未来のことを「自分ごと化」するのは難しいことですが
問題についてより具体的にイメージできれば
何かしたいと考える人は増えるのではないでしょうか?

2016年、海外では五感に訴えかける「バーチャルリアリティ(VR)」の技術が
サステナビリティやコーズマーケティングの分野で
活用される事例が多く見られました。
VRは、データや統計を使った情報とは違うレベルのインパクトを人々に与え
人々の感情により強く働きかけることが期待されています。

いくつか事例をご紹介します。

靴が1足売れる度に途上国の子どもに靴を届けるTOMS shoesは、
これまでに6,000万足以上の靴を寄付してきました。
もっと多くの人に支援の必要性を理解してもらうため、
2016年にVRを活用した告知キャンペーンを開始。


左上の矢印で動画をコントロールすることができます。

この映像では、TOMs shoesで靴を購入した消費者が
コロンビアに靴を届けにいく様子と
靴を受け取った子どもの生活が変化する様子を
視聴者が360度自由にコントロールすることが可能な動画を通して伝えています。
360度動画は消費者と子どものナレーションとともに展開していくので
登場人物の動きや感情をリアルに追体験することができます。

また、国際的な人権団体Terre des Hommesが作成したのが
ケニアの児童奴隷が暴力や性的虐待を受ける様子を子どもの視点から伝えるアプリ。

iphoneを動かすことで映像を360度動かすことができるので
まるで自分がこの現場にいて、この映像を撮影しているような気分になります。
撮影には5つのマイクをつけたカメラを14台も使用しているので
音にも臨場感があります。

このショッキングでリアルな映像を見たら、
「なぜこのような事が起きているのか知りたい」
「何かできることはないのか」
と考える人も少なくないのではないでしょうか?

アプリの内容は以下の360度動画としても発信されています。

英国の自閉症協会では
音や光などに対する感覚が過敏な自閉症の子どもにとって、
外を歩くのがどんなに恐ろしいかを
体験できるシュミレーター(ヘッドセット)をつくりました。
自閉症協会では、人間は他人の体験を実際に経験することで共感しやすくなることから
シュミレーターを通して自閉症に対する理解を少しでも高め、
差別をなくしていくことをめざしています。

シュミレーターで体験できる内容は以下の動画で確認できます。

※大きな音や激しい光が含まれるので気をつけてください。

VRは、環境破壊の現状を人々に実感してもらう上でも
効果が期待されています。

スタンフォード大学の研究所では、
CO2が海を酸性化させている現状とこのまま気候変動が進むと海がどうなるかを
VRを通じて人々に体験してもらうことで
人々が環境保護のために行動を起こすよう働きかけることをめざしています。

2017年も、VRがサステナビリティ分野でどのように進化していくかウォッチしたいと思います。

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進むデジタル化とデータ活用 2025年のCSRレポーティングの世界は?

How Does Digital Technology Affect You?
photo by Scott Schopieray

情報がどんどんデジタル化していく。
データによってステークホルダーが力を得ていく。

登壇する機会をいただいたセミナー
【2025年を見据えたCSRコミュニケーション】
~10年後のCSR・非財務情報の開示の在り方から、今できることとは~

で取り上げられていたGRIの「レポーティング2025プロジェクト」の報告のなかで、
私が一番興味を持ったのが
「デジタル化」
「(ステークホルダーの)データによるエンパワメント」

の2つのキーワードです。

かなりざっくりまとめると、

デジタル化が進むことで、情報ソースは多様化する。
データはリアルタイムにアクセスできるようになる。
カスタマイズされて使いやすい形で提供される。
企業は情報のコントロールができなくなる。
企業が社会に与えるインパクトも明らかになってくる。
それらに伴い、企業とステークホルダーとの関係性は変化していく。

・・・といってもなんのことか、あまりイメージが湧かないかもしれません。

たとえば「デジタル」「データ活用」に関連した事例では、10月に米国で発表された、
気候変動に対するレジリエンスを高めるためのデータ活用イニシアチブ
Partnership for Resilience and Preparedness (PREP)があります。

ホワイトハウス、世界資源研究所、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどが参加し、
様々なデータを地図上に重ね合わせることで、
気候変動による影響を予測し、事業活動や投資判断に役立てていくことを目指す動きです。

サプライチェーンの透明化では、Nikeがサプライヤーマップを公開しています。
世界のどこに工場があり、クリックすると従業員の男女比や
移民労働者の比率などを見ることができます。

Screen Shot 2016-11-02 at 20.13.59
http://manufacturingmap.nikeinc.com/#

マークス&スペンサーが同様の取り組みをしているほか、
パタゴニアは10年ほど前からサプライチェーンにおける環境フットプリントの透明化に取り組んでいます。

ほかにも農業などに携わる途上国の1次生産者の携帯情報を利用して
サプライチェーンの見える化に取り組む動き
ESGデータ解析にAIを導入して膨大な情報を分析しているケース。
ユーザー同士が製品のESG情報を共有し評価し合うツール。
など様々な例があります。

インターネットとソーシャルメディアの発達により、
売り手と買い手の情報の非対称性が解消されてきましたが、
今後はESG・サステナビリティ情報の世界でも
同様のことが起きてきます。

企業が消費者の様々な情報を収集して活用しているように、
同じレベルでステークホルダー側も企業の情報を収集するようになる。。。

そうした世界の中で、企業の情報開示とコミュニケーションのスタンスはどうあるべきか?

これからの10年を考えていく上での大きなテーマです。

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企業の人権ベンチマーク、パイロット版の指標が完成

伊勢志摩サミットでは、前回のエルマウサミットで討議された
責任あるサプライチェーン」について貿易の部分で一部言及されたのみで
進展がありませんでしたが
国際標準化機構で検討中のISO20400(持続可能な調達のガイドライン)は2017年に発行される見込みで、
2020年の東京オリンピック関連の調達への適用が予想されています。

ISO20400において主題のひとつである「人権」について
企業のサステナビリティ格付・ランキングが始まるようです。

2014年に「国連のビジネスと人権フォーラム」で発足した
「企業の人権ベンチマーク(Corporate Human Rights Benchmark)」というイニシアチブが
2016年11月発表の企業ランキングに使用するパイロット版の指標を発表しました。

これは世界規模で企業の人権に関する方針や取り組みのプロセス・実践状況を評価・格付けする初の取り組みで
人権ビジネス研究所、資産運用会社大手のCalvert Investmentsや責任投資の調査会社Vigeo Eiris、
人権NGOらが共同で開発したものです。

透明性と信頼性の高い指標をつくり出し、情報を一般公開することによって
市場の競争性を利用して企業の人権取り組みを加速化するとともに
各社を比較できるようにすることで
投資家や市民社会による企業への働きかけを促進することを目指しています。
(EIRISプレスリリースより)

グローバル企業100社をベンチマークする第1回目の調査では、農作物・アパレル・採掘業の3業種が対象で
日本企業では、Fast Retailingとイオンの2社が入っています。

スクリーンショット 2016-06-04 20.39.17
写真:評価項目とスコア配分(本レポートP41)

指標は、国連人権理事会の「ビジネスと人権に関する指導原則(ラギー・レポート)」に沿って
6項目で構成されており
Score1を満たさないと0点、Score1を満たすと1点、Score1と2の両方を満たせば2点となります。
また指標ごとに、GRI、SASB、SDGs、ILOの条約など、世界の幅広いイニシアチブやガイドライン等との共通項目が一目で確認できるようになっています。

スクリーンショット 2016-06-06 20.54.39
写真:本レポートP70

項目ごとの指標例は以下です。
ーーーーーーー
●ガバナンス・方針(10%)
・業界特有分野の人権尊重
・人権擁護者の尊重
・トップのコミットメント
・役員委員会での協議内容
・役員委員会への人権取り組みに対するインセンティブ

●デューデリジェンス(25%)
・人権尊重方針への取り組みに対するマネージャークラスへのインセンティブ
・企業全体のリスクマネジメント体制に人権リスク対応が組み込まれているか
・人権に関する教育制度
・取引先決定における対象企業の人権パフォーマンスの考慮
・人権リスクとインパクトの評価(特に顕著なリスク、業界特有のリスク)
・リスクの説明責任

●救済・苦情処理メカニズム(15%)
・従業員向け/外部向け苦情通報メカニズムの有無
・利用者がメカニズムの設計に関わっているか
・メカニズムの仕組みの公開
・報復的行動を禁止しているか
・対応と改善方法の公開

●取り組み状況(20%)
・最低賃金の支払い
・サプライチェーンのマッピング・開示
・死亡率、事故率、労働損失日数の開示
・土地の権利の特定方法
・女性の権利の認識
・サプライチェーンの労働時間
・先住民の権利尊重

●深刻な不正への対応(20%)
・すべての疑惑に対して公的説明を行っているか
・適切な方針・アクションの有無

●透明性(10%)
・全指標から関連項目を考慮して評価
ーーーーーーー

今回の指標では、労働者が仕事を得るために料金を払うことを禁止する“No Fee”という活動や
雇用主が労働者の転職を妨げる行為まで取り上げている点や
国連指導原則報告フレームワークとの関連性の高さが特に評価されています。

11月にまたランキングの結果についてブログを書きます。

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ステークホルダー・ダイアログの新時代

improvement dialogue
photo by Jurgen Appelo

企業と社会フォーラム(JFBS)発行の
持続可能性と戦略 Sustainability and Strategy」のなかに、
NECのステークホルダー・エンゲージメントに関する論文が収録されています。


持続可能性と戦略 Sustainability and Strategy(15年9月発行)
「企業と社会の相互作用としてのステークホルダー・レビューによる
CSRの経営への統合化促進―NECのケース」

先日、執筆者である国際社会経済研究所の鈴木均さん、遠藤直見さんと
意見交換をさせていただく機会がありました。

NECのステークホルダー・エンゲージメントの特徴は、
ステークホルダーとの対話を「レビュー」と位置付け、
CSR経営を実践していく上での継続的なプロセスとして取り組んでいることです。

具体的には、

・労働や消費者、人権など各分野の専門家で構成されるNPOと
2011年からISO26000をベースに継続的にレビューを実施
・CSR担当役員や各主管部門が参加、提言に対する改善計画を策定しレポートで開示
・改善状況を次年度のレビューで検証

というサイクルを回していき、2014年度からは経営への統合を視野に
経営戦略そのものの社会視点でのレビューも実施しています。

2015年のステークホルダーレビューの様子
http://jpn.nec.com/csr/ja/stakeholder/iso_review.html?

ISO26000をレビューのベースとする点も特徴的で、
チェックリストや参考書として使う企業は多いですが、
こうした活用方法は国際的にも注目されているようです。

この形の発展形としては、外部有識者による(を交えた)
サステナビリティ・ボード(アドバイザリー・パネル)があります。
(あるいはイオンがUNEP FIの末吉竹二郎氏を迎えたように
社外取締役として経営に参画してもらうケースもあります)

マークス&スペンサーやユニリーバ、GEなどは
それぞれボードを設置してサステナビリティ戦略の
定期的なレビューを実施しています。

人選にあたっては、その企業のマテリアルな課題に対して適切な助言ができることが必要です。
たとえばAir New Zealandのパネルにはマオリ文化に詳しい人類学者が入っています。

エコネットワークスでも年に数回
ステークホルダーとのダイアログのご支援をしていますが、
特にここ数年でそのあり方が変化してきていると感じます。

NECのように継続性とPDCAサイクルを重視し、経営への統合につなげていくパターン。
潜在課題を可視化して社内での位置付けを明確にし、行動の足がかりにつなげていくパターン。
同一テーマで社内各層で順に実施し、社内浸透・変革につなげていくパターン。

昨年末にはAccountAbilityのステークホルダー・エンゲージメント・マニュアルの
最新版も発行されました。
the AA1000 Stakeholder Engagement Standard (AA1000SES)

報告書に掲載するためのダイアログではなく、
変化の起点としてのダイアログを、私たちもご支援しています。

※ステークホルダーエンゲージメントの最新事例はこちら
→ http://www.econetworks.jp/service/engagement/

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スイス・リーにみる「リスク」の情報開示

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photo by GotCredit

統合報告を進めていく上で、ポイントの1つとなるのが
「機会とリスク」に関する記述です。

アニュアルレポートにおける日本企業のリスクに関する記述は
不十分と指摘されることが多く、
どう開示していこうかと悩まれている企業さんも多いと思います。

リスクに関する報告で最近面白いなと思ったのが、
世界第2位の再保険会社SwissReです。

元々がリスクを専門に扱う会社なので当然といえば当然なのですが、
さまざまなトレンドを踏まえどのような新興リスクがあるかを
常にウォッチしていることを伝えています。

たとえばウェブでは、RE THINKINGという
新興リスクをテーマにしたコンテンツを提供しています。

2014年版のCSRレポート
にあるリスクに関するコラムでは、
「自動運転技術」が取り上げられていました。

「交通渋滞の緩和」「事故防止」などポジティブな可能性に
注目がいく自動運転技術ですが、企業にとってはリスクの側面もある。

保険会社にとってみると、安全が高まり事故リスクが減ることは
保険料や契約者数に大きな影響を与える。
また自動車メーカーにとっても、技術への期待・役割が高まることで
事故が起きた際にはより企業側に責任がのしかかってくることになるため、
新たな訴訟リスクを抱えることにもつながる。

さらにこの技術がどのように実社会に適応していくかは
ユーザーの選択(どの技術を使用するか)や所有の範囲(カーシェアなど)によって
様々な組み合わせが考えられるため、保険の仕組みなども非常に複雑なものになり、
動向をしっかり注視していく必要がある。

そのようなことが述べられています。

その他にも、創業150周年記念として、
従業員と行った写真コンテストも面白いです。

リスクをテーマに従業員とエンゲージメントを行う手段として
「自然災害」「食糧」などをテーマにした写真コンテストを行い、
世代によってリスクがどのようにとらえているかを可視化することを試みています。

リスクの開示については、たとえば
リスクと収益を一体化して管理するリスク・アペタイト・フレームワークを使って
実際どうマネジメントしているかをしっかり見せていくというやり方もありますが、
こうしたリスクに対する感度を示すという方法も考えられます。

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世界初のユニリーバ人権報告書 気になる中身とは?

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ユニリーバが今年6月に発表した人権報告書。

Enhancing Livelihoods, Advancing Human Rights
https://www.unilever.com/Images/slp-unilever-human-rights-report-2015_tcm244-439397_1.pdf

2011年の「ビジネスと人権に関する指導原則」に続くものとして、今年2月に発表された
国連人権報告フレームワーク(UN Guiding Principles Reporting Framework)」に
世界で初めて準拠しており、今後の人権報告の1つのモデルとなるものです。

ページ数は全68ページ。
人権だけでこれだけのボリュームがあります。

世界190ヵ国で事業を営み、17.2万人を雇用し、
7.6万のサプライヤーを有する同社は、2010年の
持続可能な事業戦略「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」の
発表以降、人権に関する取り組みを本格化してきました。

・透明性
・ステークホルダーとの協議・対話・恊働
・連帯責任モデル(Collective responsibility model)
・官民パートナーシップとの恊働
・新しいビジネスモデル、キャパシティビルディング、救済措置

を5つの重点領域と定め、国際人権NGOのオックスファムと恊働して
ケース・スタディとして同社のベトナム事業を対象に
アセスメントを実施するなどして、課題の洗い出しに取り組んでいます。

報告書では、人権に関する戦略や各種の方針、
取り組みの歴史やガバナンス等について報告がなされた後、
「顕著な(salient)」な人権課題のパートが続きます。

ガイドラインで要求されているのは、「重要な(material)」課題ではなく、
もっとも深刻な影響を及ぼす「顕著な(salient)」課題についての報告。

ユニリーバの場合は、以下の8つを特定し、
取り組みやサプライヤー監査の結果について開示しています。

・差別
・適正賃金
・強制労働
・結社の自由
・ハラスメント
・労働時間
・土地の権利
・健康・安全

今後、レポートの統合化が進み、
重要な情報を簡潔にまとめた統合報告書が作成されていく一方、
個別のテーマについては別冊で報告していくことが
1つのモデルとして期待されています。

日本企業でもメーカーを中心にすでに作成されている「環境報告書」
証券取引所に提出する「コーポレート・ガバナンス報告書」
多様性に関する「ダイバーシティレポート」や人材に関する「人的資源ファクトブック」
(関連記事:これが私たちの人材力! Allianzの人的資源ファクトブック
社会貢献に関する「フィランソロピー報告書」

透明性に対する要求が高まるなか、報告疲れに陥らないためにも、
情報開示・コミュニケーションの統合・最適化に取り組んでいくことが不可欠です。

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サプライチェーンの排出量開示促進へ EICCとCDPがタッグ

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photo by Flazingo Photos

エレクトロニクス業界のサプライチェーン状況改善に取り組む
EICC(電子業界CSRアライアンス)とCDPが
サプライチェーンプログラムで協働することが
2月末に発表されました。

EICC Becomes First Industry Group to Partner with CDP on Supply Chain Greenhouse Gas Initiative
http://www.eiccoalition.org/news-and-events/news/eicc-cdp-partner-on-supply-chain-ghg-initiative/

EICCは、HPやIBM、ソニーなどによって2004年に立ち上がった団体で、
電子機器業界のサプライチェーンにおける労働安全管理や
紛争鉱物、環境負荷削減に関して行動基準を策定し、
サプライチェーンの状況改善を推進しています。

一方のCDPは、ご存じのとおり、
企業の気候変動の取り組みを評価し(最近では水や森林も)、
投資判断に使う情報として投資家等に提供しているNGOです。

今回、EICCは業界として初めてCDPの
「サプライチェーンプログラム」に参加します。

CDPのサプライチェーンプログラムとは、
サプライチェーンに対する排出量の開示要請を
メンバー企業にかわってCDPがまとめてサポートすることで、
回答率を高め、取り組みを促すもので、
ウォルマートやVodafone、コカ・コーラなど60社以上が参加しています。

背景には、サプライチェーンにおける排出量削減に向けた動き、
より具体的には、2011年に発表されたGHGプロトコルの
「スコープ3」基準の浸透と取組みの加速があります。

サプライチェーンにおける調達先での排出や、
製品の使用時における排出など
バリューチェーン全体を範囲とするのがスコープ3です。

日本では、トヨタやホンダなどの自動車業界が先行して取り組んでおり、
花王や日本郵船などが続いています。

スコープ3に基づく排出量の情報は、
「算出」して「開示」することが目的ではなく、
最終的に算出結果を「活用」し「削減」していくことが重要です。

サプライヤーからの購入量を元にした算出から、
サプライヤーから実データを提供してもらい算出することで
結果を精緻化し、排出量が多いところを特定して削減を働きかけ、
対応に応じてサプライヤー評価に反映していく必要があります。

一方で、サプライヤーとの力関係や他社との価格競争の観点、
またサプライヤー側にとっても個別に対応するコストなど、
1社で取り組む難しさもあります。

そこでCDPがそれらの要請をまとめて、
サプライヤーに働きかけることで取り組みを促進し、
さらに今回はEICCという業界としてそこに参加することで
取組みをさらに後押しする狙いがあります。

他に目をやると、今年1月にはNGO世界資源研究所(WRI)が
スコープ2ガイダンスの改訂版が発表され、
電力購入を通じた排出削減量の算出・報告基準がより明確化されました。
すでにFacebookやGoogle、Marsなどの企業では先行して活用しています。

また、自然資本会計のガイドライン化の大きな動きもあります。

スコープ3にしても、依然発展途上で、
ルールにまだ曖昧な部分が残るなか、
先行して取り組むことには大変な部分もありますが、
しかしいずれ実質的に取り組まざるを得なくなる状況になる前に、
特にグローバルで事業を展開する企業がリスク管理、
さらには機会活用として先行して動きだしています。

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インターネットアクセス人口は世界で30億人を突破


photo by Kailash Mittal

突然ですが、インターネット関係の文脈で
「LCC」とは何のことでしょう?

答えは”Least Connected Countries(LCCs)の略で、
「最もインターネット接続が限定された国」を指します。

2014年月に国連の国際電気通信連合(ITU)が、
世界の情報アクセスに関する報告書
情報社会の計測報告2014年版」を発表しました。

ITU releases annual global ICT data and ICT Development Index country rankings
http://www.itu.int/net/pressoffice/press_releases/2014/68.aspx#.VK9oAid40f9

それによると、世界のインターネットユーザーはすでに30億人を突破し、
普及率は40.4%に達したそうです。

特に途上国での利用率の伸びは8.7%と
先進国の3.3%を大きく上回っています。

しかし一方で、依然インターネットを利用できない
約43億人のうち、90%は発展途上国の人々です。

さらにそのうちの25億人が、
通信インフラ整備が特に遅れている農村地域の人口が多い
LCCsの42カ国に住んでいます。

携帯電話については、すでに世界の契約数が
2014年末までにほぼ世界人口と同じ70億に達するとしています。
ただこれは複数の契約を結ぶ人がいるためで、
4.5億人がいまだ携帯通信のサービスエリア外にいます。

報告書では、ITアクセスや活用、スキルなどの面で各国を
ランク付けした「ICT開発指数」も発表されています。

166の国中、トップはデンマーク。
韓国、スウェーデンと続き、日本は11位です。

携帯電話は途上国の農村地域でもかなり広く
普及しており、パナソニックが開発した無電化地域向けの
ソーラーランタン
でも、充電はコア機能の一つです。

先日紹介した社会へのインパクトを測定するツールでも、
SMSを活用したものが多くあります。

今後はより一層、通信やインターネットへのアクセスを活かした
サービスやプログラムの開発が期待されます。

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わかりますか?”Social Performance”と”Societal Performance”の違い 仏ヴェオリアのレポートから


photo by Hélène Villeneuve

先日Japan for Sustainability主催の
「COP21パリに向けたフランスの動向とフランス企業のCSR」
に参加してきました。

そこでフランスの水メジャー、ヴェオリアの
CSR担当の方のお話を聞いたのですが、
いただいた英語のCSRレポートを見てみると、
気になるワードがありました。

CSR performance
http://www.veolia.com/en/veolia-group/profile/csr-performance

目次をみると、
Managing Corporate Responsiblity
から始まってガバナンスの話が最初にあり、
Managing Societal Performance
Managing Environmental Performance
Managing Social Performance
Managing Sustainabile Procurement
と続きます。

ここで出てくる
“Societal Performance” と ”Social Performance”。
この違い、皆さんわかりますか?

他社でこのような使い分けをしているのを
あまりみないので、気になって調べてみました。

言葉の意味としては、
Socialはヒト対ヒトなど限定的な関係性、
Societalはより社会全体との広義な関係性を指すようです。
http://forum.wordreference.com/showthread.php?t=190603

実際内容を見てみると、

Societal Performance
・人々のサービスへのアクセス向上
・ダイアログ
・地域経済発展への貢献
・災害人道支援

Social Performance
・従業員
・能力開発
・健康・安全
・労働管理ダイアログ
・ダイバーシティ

となっており、Societalは「地域社会」、
Socialは「従業員」という使い分けがなされていました。

SocietalとSocialという言葉の使い分けが
フランス企業特有のものとまでは言えないと思いますが、
他にもこうした地域ごとに好んで使われる言葉というのがあります。

たとえばフランス企業であれば、
「Développement durable(持続可能な発展)」という
言葉がよく使われている印象があります。

話は変わりますがフランスといえば、労働組合の力が強いので、
従業員の人権など、CSRの文脈でどのような影響を与えているのか、
また今度調べてみたいと思います。

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アップルの環境へのコミットメント「Better」がかっこいい

「Better」という、約1分半の
Appleの環境へのコミットメントを述べた映像があります。

はじめてこれを見たとき、衝撃を受けました。

背景は真っ白。音声だけ。
さすがアップル。究極まで洗練されている。。。

apple
https://www.apple.com/environment/

あとで探したら、ちゃんと映像つきのバージョンも公開されていました。
(ただ私は音声だけの方が好きです)

この中で、アップルは「better」、
よりよい状態を目指すための決意を述べています。

Better…
It’s a powerful word and powerful idea
・・・
It’s in our DNA
and better can’t be better if we don’t consider everything.

(ベター…
それは力強い言葉。力強いアイデア。
・・・
私たちのDNAに組み込まれている。
真にベターであるためには、私たちは全ての側面に取り組まなくてはいけない。)

そのための具体的な取り組みとして、
再生可能エネルギー使用率100%のデータセンターや
埋め立てゴミゼロに向けたリサイクルの取組みについて語っています。
https://www.apple.com/jp/environment/

以前、サプライチェーンのグリーン化に取り組む
中国の40以上のNGOによるアライアンス
緑色選択連盟(Green Choice Alliance、GCA)が
発行する報告書の分析をご支援したことがあります。

GCAが2010年に行ったグローバルIT/電機メーカーをターゲットにした
サプライチェーンにおける重金属汚染のキャンペーンでは、
改善の動きが見られなかったアップルに対して
キャンペーンを集中し、改善に対する取組みを約束させました。

そこから、同社のサプライチェーンに対する取り組みは改善され、
これまで秘密主義で公開されていなかったサプライヤー情報を公開。
サプライヤー責任報告書での情報開示など、透明性向上にも取り組んでいます。

環境面でも、再生可能エネルギー100%を目指すなど、
強い意思が感じられます。

(日本企業ではまだあまり見られませんが、欧米のグローバル企業では、
Walmartをはじめ、再生可能エネルギー使用率へのコミットメントが
1つのトレンドになってきている印象があります)

「Better]の最後は、以下のフレーズで締めくくられます。
“and make the truth to inspire others to do the same”

英国の新聞にも、こんな広告が載ったそうです。

メッセージの伝え方はさすがアップルです。
取組みの実態にもしっかりと目を向けながら、
期待して今後の動きを追っていきたいと思います。

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Adidas リオW杯のサプライヤーリストを公開 


photo by Kick Photo

ブラジルワールドカップまでいよいよ1ヶ月を切りました。

その間の睡眠不足をどう乗り切るかも
個人的には大事なテーマですが、
こうした世界中の注目が集まる国際的なスポーツ大会では、
大会における環境・社会面の取り組みが近年
重視されるようになってきています。

大会にあわせてNGOによるキャンペーンが大々的に展開され、
主催者からもサプライヤーやスポンサーに
様々な要請がなされるようになってきているのです。

社会面ではたとえば、Play Fair Campaign
NikeやReebokなどのスポーツブランドを対象に、
工場で働く労働者の権利尊重を求めるキャンペーンを
2004年以降オリンピックやワールドカップの大会期間にあわせて
継続的に実施しています。

こうした動きに対し、たとえばAdidasは2006年のワールドカップ以降、
大会に関係するサプライヤー情報をウェブに公開するようになっています。

2014 World Cup Production–Status: September 27, 2013

Adidasはそれ以外にも、65カ国1200以上のサプライヤー情報をすべて公開し、
内訳や監査の状況を詳細に開示して透明性向上に力を入れています。

サプライヤーの透明性向上については、ロンドンオリンピックで、
CSL(Committee for Sustainable London)という
大会組織委員会に対し持続可能性面での助言・監査を担った組織が、
ロンドン以降の大会運営に向けた提言
Beyond 2012–Outcomes Reportの中で、
工場リストの公開をサプライヤーの契約条件とすることを提案しています。

もちろんすぐの実施は難しいことはCSL自身も認めているのですが、
Adidasのように積極的に取り組む動きも見られるなかで、
2020年の東京大会で標準的な要件となっていくか、注目されます。

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ショートターミズムと中長期的な価値創造 望ましい企業と投資家の関係とは?


photo by SalFalko

SRIや統合報告をめぐる議論の中でよく出てくるテーマの1つに、

中長期的な価値創造を見据えた情報開示
vs投資家のショートターミズム(短期志向)

があります。

SRIに携わっている投資家と企業の方々との対話を
ご支援することがありますが、その中で必ず、
非財務情報など中長期的な価値創造を見据えた
情報開示を進める上での難しさとして、現実問題として
投資家の多くが短期の財務数値にしか関心を示さない、
という問題が話題に上ります。

短期志向の傾向は当面は続き、すぐになくなることはありませんが、
政府としても企業の持続的な成長につながる
資本市場の望ましいあり方を考えようと、経産省が2013年に
「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」
プロジェクト
を設置しました。

この度、その中間報告が発表され、短期志向の問題についても触れられています。

「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト(伊藤レポート)中間論点整理
http://www.meti.go.jp/press/2014/04/20140425007/20140425007-2.pdf

報告書では、日本市場の短期志向の特徴として、
欧米とは異なる特有性を持っており、
中長期的な視点から主体的判断に基づいて
株式銘柄の選択を行う投資行動をとる層が薄いことが
特に問題であると指摘しています。

その他の特有性の例としては、

・長期にわたって株価上昇の期待が低い状態が続いた結果、
短期に投資機会を追求することが経済合理的であった。
長期投資を促すには、企業の収益性、株価上昇が長期的に高まって行くという
期待を持たせなくてはいけない。

・日本の投資コミュニティにおいて、
短期志向化を促すインセンティブが働いている。
たとえば、母体組織や会計上の要請から短期実績で評価する、
ローテーション人事により長期経営へコミットがしにくい、
報酬体系が長期パフォーマンスとの連動が薄い、など。

・投資家が長期的な投資判断をするための情報が企業側から効果的に開示されていない。

・短期志向を助長する制度の存在。
安い手数料で高速売買できるインフラ整備、適時開示を目指した
四半期開示がもたらした意図せざる結果、など。

中長期的な価値創造に視点を向けていくためには、
企業側の情報開示と、投資家との対話が不足しており、
今後のあるべき方向性として、
企業と株主の「協創」が持続的成長の基礎条件との認識のもと、
より一層の対話促進が重要としています。

非財務情報を含む中長期的な情報開示については、
統合報告に向けた取り組みがそのための
有効な手段の1つになりうるとの認識を示しており、
統合報告に対する社会の要請は今後一層高まっていきそうです。

レポートは5月20日まで情報提供・意見を募集し、
今年初夏に最終報告が公表される予定です。

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【G4を読む】Grievance Mechanism

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photo by Martin Rødvand

G4を読み解くキーワード。
今回は「Grievance Mechanism」を取り上げます。

「苦情申し立ての仕組み」「苦情処理メカニズム」と訳されたりするこの言葉。

前版のGRI3.1では人権の項目でのみ(HR11)、登場していました。

それが今回のG4では、人権だけでなく、
環境、労働、社会と合計4回も登場します。

Environmental Grievance Mechanisms (G4-EN34)
Labor Practices Grievance Mechanisms(G4-LA16)
Human Rights Grievance Mechanisms(G4-HR12)
Grievance Mechanisms for Impacts on Society(G4-SO11)

具体的には、

G4-EN34
NUMBER OF GRIEVANCES ABOUT ENVIRONMENTAL IMPACTS FILED, ADDRESSED, AND RESOLVED THROUGH FORMAL GRIEVANCE MECHANISMS

とあるように、申し立て・対処・解決済みの
それぞれの件数を実際に報告するよう求めています。

分野ごとにそれぞれ、以下のような申し立ての内容が想定されます。

人権・・・差別、強制労働など
環境・・・排出、汚染など
労働・・・雇用、労働安全、賃金など
社会・・・地域社会への影響、汚職など

Grievance Mechanismへの注目が
高まっている背景に、2011年4月に発表された
「国連ビジネスと人権に関する指導原則(通称ラギー・フレームワーク)」があります。

日本語訳
http://www.hurights.or.jp/japan/aside/ruggie-framework/

ここでは人権侵害に対する「救済」へのアクセスとして、
組織に苦情処理メカニズムの導入を要求しています。

しかしG4が求めている、特に人権などのテーマに関する
苦情処理システムの運用件数の報告は、
一般的に企業にとってはかなりのハードルです。

日本企業ではほとんどそうした事例は見られませんし、
海外企業でもまだ限定的です。

たとえばネスレでは、人権に関する処理数として

・合計 173件(男性38人、女性35人、不明100人
・内解決した件数 143件(男性32人、女性24人、不明87人)

といった数値を開示しています。
http://www.nestle.com/csv/human-rights-compliance/human-rights

またCoca-Colaでは、

・2011年は426件(2010年は118件)
・内訳は、
 -報復・嫌がらせ・差別 211件(50%)
 -労働時間・賃金 114件(27%)
 -職場の安全 36件(11%)
 -職場の安全衛生 43件(9%)
 -強制労働 3件(1%)
 -結社と団体交渉の自由 2件(1%)

と内訳まで報告しています。
http://www.coca-colacompany.com/sustainabilityreport/we/human-and-workplace-rights.html#section-more-guidance-for-our-managers

Grievance Mechanismが機能しているということは、
ステークホルダーの広義の期待や関心を把握する
早期の警告システムが働いているということで、
適切に対応することで、潜在的な危機の拡大を防ぐことにつながります。

日本企業は、商品やサービスに対する顧客のクレームを
適切に把握し、改善につなげることを得意としてきました。

現在の社会では、人権や環境などそうしたモノ以外の側面の
苦情・申し立てがビジネスに大きな影響を与えます。

そうした認識の下、苦情・申し立てを受け付け、
解決する仕組みを持ち、それが適切に機能していることを、
説明責任として開示していくことが期待されています。

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【G4を読む】Minority Groupって誰?

respect - 190620082371
photo by Roland Tanglao

先日、GRIに出てくる「minority groupとは具体的に
誰を指すのでしょう?」という質問をいただきました。

マイノリティ(社会的少数派)=人種や民族などを指す、、、
ということは漠然とわかっても、
具体的に誰、となると私も含め、答えに詰まってしまう方も
多いのではないでしょうか。

そこで少し調べてみました。

まずGRIでどのように登場するのかを見てみます。

G4-LA12 労働慣行とディーセントワーク 多様性と機会の平等
Composition of governance bodies and breakdown of employees per employee category according to gender, age group, minority group membership, and other indicators of diversity.

というように、ジェンダー、年齢層と同列で出てきます。

またG3との変更点では、これまで
“minority group membership, and others”とされていたものが
“and other indicators of diversity”に変更されており、
用語集をみると以下のように説明されています。

Indicators of diversity for which the organization gathers data may include citizenship(国籍), ancestry and ethnic origin(出自や種族), creed(宗教), and disability(障がい).

*ancestry and ethnic origin(出自や種族)がわかりにくいのですが、
米国の国勢調査の質問票を見てみると、
○○系アメリカ人というような祖先の出身地を指すようです。

G4において、minority group membershipとは
ジェンダー、年齢層、上記のその他の指標に含まれないものということで、
人種民族を指していると考えられます。

ここには、文化や言語などの社会学的な違い(ethnicity) と
肌の色などの生物学的な違い(race)の他、
先住民(indegenous people)などが含まれると考えられます。

参考までに、個人の市民的・政治的権利に関する国際人権規約では、
国内のminorities(日本語では少数民族)として
「宗教的、人種的、言語的少数民族」の
権利の尊重を規定しています。

このマイノリティという言葉を考える上で、
3点、抑えておきたいポイントがあります。

1.数が少ない=マイノリティではない。
2.どの地域の視点に立つかによって、該当集団は変わる
3.個人ではなく集団としての尊重が重要である

マイノリティとは、単純に人数の多寡ではありません。
その集団が偏見や差別、社会制度などの構造によって
弱い立場におかれている、不利益を被っているかが基準となります。

たとえば女性は数としては少数ではありませんが
マイノリティに含まれると考えられています。
一部のアフリカやラテンアメリカにおける白人層は
人数は少ないですが、マイノリティとは呼ばれません。

地域によって、社会の構成集団が変わるため、
どの地域の視点で話をするか次第で
「マイノリティ」に含まれる対象は変わってきます。

たとえばカナダの金融機関Scotiabankでは、
女性や障がい者の他に、カナダ国内の数値として、
Visible minoritiesとAboriginal employeesについて開示しています。

scotiabank
Scotiabank CSR Report 2012 p23

Visible minoritiesとは、歴史的に
言語(英語と仏語)や宗教(カトリックとプロテスタント)の
目に見えない違いがあったカナダ独自の概念で、
イヌイットなどの先住民族(Aboriginal people)を除く、
目で見て違いがわかる非コーカサス・非白人を指します。

一方、ブラジル企業のレポートを見てみると、
Citibank Brasilでは、人種の内訳として
白人・黒人(黒色・褐色系)・黄色人種・先住民に分かれており、
マイノリティ・グループでは障がい者と外国人の比率が
開示されています。

citi
Relatorio de Sustentabilidade 2012 p44

また穀物メジャーBungeのレポートでは、
先住民の他にMulatto・ムラート(混血)の人たちの割合が示されています。

bunge
Sustainability Report 2012 Edition Brazil p86

中南米では、先住民・黒人・白人の混血の人の割合が多く、
上記2社ではPardo(混血を主とした褐色系の人々)と
Mulatto(ヨーロッパ系白人とアフリカ系黒人の混血)の情報を開示しています。

少し見ただけでも、地域によってマイノリティが指すものに
違いがあることがわかっていただけたかと思います。

最後のポイントですが、マイノリティを尊重するということは、
マイノリティに属する「個人」の経済的・社会的な地位向上だけでなく、
「集団」としての地位や尊厳の平等化に取り組むことが求められます。

どういうことかというと、
たとえばCSRレポートの中にマイノリティに属する人が写真で1人登場するだけではダメで、
集団に対して取り組んでいることを示すためにも、
数値としての職種に占める人数や割合を示すことが重要になります。

最後に日本に関してですが、
日本では、マイノリティが社会的弱者と同義に近い形で扱われることも多く、
部族やホームレス、ハンセン症などの患者が含まれることもありますが、
これは欧米での使われ方と一致しません。

日本企業がminority groupをどのように扱うか。

G4のガイドラインに沿えば、
まずはジェンダー・年齢層については開示を進める。

その上で、上記で見た企業のように、地域を特定した上で、
minority groupを定義し、取り組みを進め、
情報を開示するということになるかと思います。
(開示にあたっては、グローバル版で出すべき情報か、各国版で出す情報かの判断が入ります)

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【G4を読み解くキーワード】インテグリティ

Ugandan anti-corruption sign
photo by futureatlas.com

G4を読み解くキーワードシリーズ、前回のDecent Workに続いて、
第2弾のテーマはIntegrityです。

透明性やコンプライアンスとセットで
語られることが多いこの言葉。

G4ではEthics and Integrity(倫理とインテグリティ)とセットになっています。

インテグリティ(誠実さ)が何を指すのか
なかなか日本語にしにくい言葉ではあるのですが、
いくつか使用例を見てみると、

・グローバル・コンパクトでは、
原則10の「透明性と腐敗防止」に取り組む際の
キーワードとして用いられています。

企業の腐敗防止対策のベストプラクティス事例集
Corporate Sustainability with Integrity: Organizational Change to Collective Action

・あるいは東芝では
「社会に対して誠実に向き合い、積極的に責任を果たす」
「経営や財務の健全性を追求する」
という2つの視点で解釈をしています。

言葉の観点からの解説については、
詳しくは翻訳ブログをご覧ください。

G4では、Ethics and Integrityについて
3つの項目の開示を求めています。

——–
G4-56.考え方や行動規範について
・教育、研修の機会
・既存、新規の役員・社員や取引先の遵守状況
・担当役員の任命
・多言語化など、全従業員に伝わる仕組み

G4-57.内部/外部からの助言の仕組みや手段について
・助言を受ける社内窓口
・第三者から助言を受ける仕組み
・周知徹底の仕組み
・メカニズムへの利用しやすさ、アクセスのしやすさ
・機密性
・匿名性
・助言数、回答数、内訳
・利用者の満足度

G4-58.内部/外部からの通報の仕組みや手段について
・要素については2と同じ
——–

用語集の解説を見てみると、上記の助言/通報の対象となるのは
「illegal, irregular, dangerous or unethical practices 」であると説明されています。
Implementation Manual, p250)

法律で明文化されたものだけではなく、
それ以外の倫理的な一般通念なども
誠実かどうか判断される基準となります。

明確な基準があって、それを「守った」「守らない」という話ではなく、
助言や通報の仕組みが機能していることによって、
誠実であるということを初めて外部に説明することができます。

この背景には、欧米では前提として
企業は腐敗するものである、
という考え方があります。

日本では企業は本質的に倫理的であるべきであり、
腐敗対策をしていることを公表すること自体が
そもそも恥ずかしいとする考え方があるように感じます。

こうした個人の内面に頼るやり方の場合、
時には組織全体が内向きになり、
自浄作用がうまく働かなくなります。

日本は内部通報者に厳しい国と言われるのは、
そうした背景があります。
先日、内部通報者が著しい不利益を被ったとして
裁判に発展したオリンパスで、
内部通報を更にしにくい形に仕組みが変更されたとの報道もありました。

行動規範がある、ホットラインがある、
というだけでなく、それがちゃんと機能しているかということを、
仕組みと実績を開示してインテグリティを説明していく必要があります。

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