働く人の権利と基本的人権」カテゴリーアーカイブ

日本で、世界で、高まる「非正規雇用」への注目

Shaking hands
photo by Melissa Wiese

12月20日、政府から同一労働同一賃金ガイドラインの案が示されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

将来的に「非正規」という言葉をなくすことを目指し、
基本給や賞与他手当、福利厚生、教育訓練・安全管理の4項目について、
問題になる例、ならない例を整理しています。

女性活躍や働き方改革の推進と共に
やっと本格的な議論がスタートした感がありますが、
実は「非正規雇用」は国際的にも注目が高まっているテーマです。

昨年11月、国際労働機関(ILO)から
「非正規雇用(non-standard forms of employment、NSFE)」
に関する報告書が発表されました。

Non-standard employment around the world: Understanding challenges, shaping prospects
http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—dgreports/—dcomm/—publ/documents/publication/wcms_534326.pdf

実はこれ、非正規雇用をテーマとした初めての包括的な報告書になります。

背景にあるのは、非正規雇用の世界的な高まり。

非正規という働き方の形態は以前からあったものですが、
近年その割合が世界で増加しています。

背景には、国内の議論で出てくる雇用崩壊や規制緩和といった点に加え、
経済危機による若者の失業率の増加、
国際的な移民の増大、さらにはクラウドソーシングの発達など、
様々な要因があります。

ILOの報告書における「非正規」の4分類(報告書P8)
-一時雇用(季節労働や日雇いなど契約期間の定め)
-パートタイム(労働時間)
-直接雇用(派遣労働)
-偽装請負(個人事業主扱いなどの契約形態)

nsfe

「非正規雇用」に対してどう対応するか。
CSRの文脈でも重要なテーマです。

たとえば組織の社会的責任に関するガイドラインISO26000を見てみると、
場当たり的な労働をできるだけ回避することや
すべての労働者に対するディーセントな(人間らしい働きがいのある)
労働の提供などを求めています。

一方で情報開示という観点からは、
GRIのガイドラインをみても非正規に関する項目はありません。
(一部G4-LA2、GRIスタンダードのDisclosure 401-2では
正社員にのみ提供している給付についての開示要請はあります)

ただ、増えることはあっても、減ることは考えにくいこのテーマ。
今後の議論の高まりとともに、何かしらの要請は出てくるものと考えられます。

どのような項目が考えられるかについては、参考までに、
ISFJ日本政策学生会議という学生による政策提案でのフォーラムで、
過去に「非正規労働CSR」を提唱した論文を紹介します。

そこでは非正規労働に対する取り組みを測る指標として
以下のような項目を挙げています。

非正規労働に関する
-基本情報(割合、男女比、平均年齢、平均勤続年数)
-待遇・福利厚生(平均時給、賞与、退職金、保険、等)
-企業内制度(組合加入割合、教育制度、正社員登用)

政府として、社会全体として、対応が求められる大きなテーマですが、
「雇用関係」の在り方が今後変化していくことは確実であり、
企業としても従来の「正規と非正規」(で差があって当然)という考え方ではなく、
労働者保護と競争力向上の両面を踏まえた上で、
「人的資源」についてどのような考えを持ち、施策と発信を行うのか、
議論を進めていくことが求められます。

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Marks & Spencerの人権報告書を早読み

2016年6月、英小売大手のMarks & Spencerが初となる人権報告書を発行しました。

M&Sreport
M&S Human Rights Report 2016
https://corporate.marksandspencer.com/documents/plan-a-our-approach/mns-human-rights-report-june2016.pdf

高まる人権への関心に応え、これまで行ってきた
人権に関する取り組みを体系的に整理し報告しているもので、
昨年6月のユニリーバに続き、
国際的にも先行事例となります。

(関連記事:世界初のユニリーバ人権報告書 気になる中身とは?

Marks & Spencerは現代奴隷法への対応を機に、

・人権方針
・グローバル調達方針
・衣類、家庭用品、食品のサプライチェーンにおける苦情処理方針
・現代奴隷法に関するステートメント

をすべて改訂・新規に発表。
また、各国に散らばるサプライチェーンを
インタラクティブに開示するなど、
人権に関する取り組みと報告を強化しています。

supplier_map
http://interactivemap.marksandspencer.com/

気になる報告書の中身は、
人権に関するコミットメントから始まり、
7つの顕著な課題(salient issues)に関する報告、
ガバナンス体制、今後の取り組みと続き、
全部で60ページあります。

重要な課題として特定しているのは、以下の課題。

<7つの顕著な課題>
・強制労働
・結社の自由
・差別、女性の権利
・健康・安全
・生活賃金
・水・衛生
・労働時間

<その他4つの追加課題>
・児童労働
・土地の権利
・安定雇用
・プライバシー

salient
課題と事業との関係性 P13

それぞれの顕著な課題について、
課題認識、リスクの度合い、方針、デュー・ディリジェンスの事例、
対応事例、協働事例、ネクストステップを報告し、
監査の結果についても課題別に違反数を開示しています。

audit
監査の結果 P15

こうした先進的な人権報告書を読むことのメリットは、
「人権に取り組む」といったときに、
なにを、どこまでやったらいいのかという点が見えてくることです。

どこまで、とはいっても、そんなに簡単なものではもちろんなく、
先進的と言われている企業でさえ、まだまだ取り組みは道半ば。
ユニリーバもマークス&スペンサーも、
8年~10年単位のロードマップを描いて取り組んでいます。

plan
M&Sのロードマップ P9

担当者の方には、まずは、内容を一読してみることをお勧めします。

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デジタル時代の人権リスクにどう対処? ICT企業の事例から学ぶ

smartphone
photo by Christian Spannagel

今年2月、国内で初めて
ヘイトスピーチ動画に対する削除要請が法務省から出され、
ニコニコ動画など複数のサイトが応じました。

他にも類似の動画は無数にあり、もちろんこれだけでは何も解決しませんが、
具体的な動きに向けた一歩といえます。

(ネット上での人権侵害がどうなっているのか、
当事者にならないと実感が湧きにくいですが、その実態は深刻です。
私は安田浩一さんの「ネット私刑(リンチ) 」を読んで衝撃を受けました)

世界中でデジタル化が進むなか、好むと好まざるとにかかわらず、
ICT企業が人権侵害に関与するリスクが高まっています。

そうしたなか、英国のInstitute for Human Rights and Business(IHRB)が
進めている「Digital Dangers」というプロジェクトがあります。

Digital Dangers: Identifying and Mitigating Threats to Human Rights in the Digital Realm
http://www.ihrb.org/about/programmes/digital-dangers.html

ICTと人権の問題は、
表現の自由、プライバシー、政府との関係性、治安など
様々な要素が複雑に絡み合うため、
単純な解決策がないことに難しさがあります。

「Digital Dangers」は、
こうした「ジレンマ」を共通認識として持った上で、
ICT企業に対して自社が置かれている状況を隠さないよう呼びかけ、
一緒に経験を事例として研究・蓄積して
解決に向けた方向性を模索していこうとする試みです。

対象事例を特定後、許可を得てIHRBの研究者が企業に密着し、
ケーススタディとしてその経験をまとめます。

2015年にその第1弾として、3つの事例に関する報告書が発表されました。

1.2013年のケニア大統領選におけるヘイトスピーチへの対応(サファリコム)
Corporate Responses to Hate Speech in the 2013 Kenya Presidential Elections. Case Study: Safaricom (2013)

2.通信のベンダーとしてシステムの悪用・乱用にどう対処するか(エリクソン)
Human Rights Challenges for Telecommunications Vendors: Addressing the Possible Misuse of Telecommunications Systems. Case Study: Ericsson (2014)

3.安全とアクセスを巡るパキスタンにおけるモバイルネットワークの強制遮断(Telenor Pakistan)
Security V Access: The Impact of Mobile Network Shutdowns. Case Study: Telenor Pakistan (2015)

1は、ケニアの2007年の大統領選での暴動で多数の死者が発生した際に
ヘイトスピーチの拡散にSMSが利用されたことから、次の選挙に向けて
どのように企業と政府が取り組んだかに関するレポートです。

2は特定の個人や集団を監視するための政府からの圧力に対し、
エリクソンがどのような方針を打ち立てて対処をしたか。

そして3はテロ抑止を目的に一時的に通信回線を遮断する政府の措置が、
恒常化し過剰な抑制とならないためにはどうしていけばいいかについて
まとめられています。

ここではこれ以上の詳細は省きますが、いずれも難しい問題に対し
どういった判断のもと、どのような対応を行ったか、
今後の対応を考える上でとても参考になります。

このテーマは、今後、ICTが生活のあらゆる領域に広がっていくなかで、
今は「関係ない」と思っている企業にとっても
他人事ではない重要なテーマとなってくるはずです。

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オリンパス、アリさんマークの引越社の事例から考える

Téléphone ancien
photo by Frédéric BISSON

2月中旬、8年をかけて法廷闘争が行われていたオリンパスと
上司の不正を内部通報した社員の方との間に、
ついに和解が成立しました。

「内部通報で配転」和解 オリンパス、社員に解決金
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021802000266.html

上司が取引先から社員を引き抜こうとしていることを
コンプライアンス窓口に通報したところ、通報内容が上司に漏れ、
専門外の部署に不当に配置転換させられたとして裁判で争っていました。

和解では会社側が不当な人事があったことを認め、和解金1100万円を支払い、
社長メッセージで全社員に内容を通知するとしています。

内部通報者の保護が不十分な問題に対しては、現在
消費者庁が公益通報者の保護に関する検討会を開催し、
企業側が不当な対応をした場合の罰則規定も含めた議論が行われています。

適切に機能する内部通報者制度の整備は、人権保護に対する要請が高まるなか、
特に腐敗リスクの高い途上国で操業する多国籍企業にとっての重要テーマで、

・通報者が使いやすい制度をどう整備するか
・通報者の安全をどう担保するか
・通報内容の信頼性をどう高めるか

といった点が課題になっています。
たとえば鉱山会社のAnglo Americanでは、通報者にだけ番号が通知され、
その番号を入れると対応状況を確認できるシステムを導入しています。
BEST PRACTICES AND CHALLENGES FOR WHISTLEBLOWING SYSTEMS IN MULTINATIONAL COMPANIESより)

しかし実際にはこうした問題は途上国の話だけではなく、
足元の日本でも数多く起きています。

従業員が立ち上がり、会社の不当な行為に改善を求めている別の事例としては、
ネットで恫喝動画が200万回以上も再生されたことでも有名になった
アリさんマークの引越社の例があります。

これまで長年にわたって行われていた
長時間労働の強制や固定残業代制の悪用、
引越中の破損に対する従業員への弁償金請求などの問題が表面化。

現・元従業員の方たちが労働組合を結成して会社と闘う様子は
「ガイアの夜明け」でも放映されました。

私も番組を見ていましたが、
不当な圧力に屈せずに自らの権利を主張し、
闘う姿には心を打たれました。

従業員が泣き寝入りせずこうして声を上げることは、
会社にとってもよいことです。

労使間の一定の緊張関係はあった方がいいですし、
何よりも耳の痛いことがちゃんと上層部に伝わり
対処される風通しの良い社風は、
適切にガバナンスが機能するためにも必要不可欠だからです。

こうした声に真摯に向き合っていくことは、
会社にとっても長期的な利益につながっていくはずです。

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人権に配慮したIT・通信企業 栄えある1位に選ばれるのは?

Stand With Malala @ ICT Discovery
photo by ITU Pictures

表現の自由とプライバシーにもっとも配慮しているのは
どのインターネット・通信企業か?

11月3日に、Ranking Digital Rightsプロジェクトが取り組む
Corporate Accountability Indexの結果が発表されます。

対象となっているのは、AT&TやOrange、ボーダフォン、
Facebook、Google、Microsoftといった
16のインターネット・通信企業。

コミットメントや方針の有無など
表現の自由とプライバシーへの対応を
31の項目に沿って評価し、各社の人権対応を順位付けします。

インターネットや通信と人権には、密接な関係があります。

ジャーナリストや人権活動家にとってメールや携帯電話、SNSは
必要不可欠なツールとなりました。
そうした各種のコミュニケーションツールが
アラブの春や各地の民主化運動の起爆剤となっていることは周知のとおりです。

一方で、表現の自由やプライバシーの侵害など、
政府や企業によってルールが適切に守られなければ
人権を強力に抑圧するツールにもなりえるほか、
ビッグデータや忘れられる権利なども新たな問題として浮上しています。

たとえばミャンマーでは、2013年1月に政府が
通信の自由化を発表し、5~10%の携帯電話の浸透率を
2016年までに80%に高める目標を掲げています。

これを受けて複数のICT・通信企業が参入していますが、
人権NGOのHumar Rights Watchは市民の人権が守られるよう、
政府や企業に適切な対応を促すレコメンデーションを発表しています。

Reforming Telecommunications in Burma
Human Rights and Responsible Investment in Mobile and the Internet

こうした状況に対し、企業側も動いています。

インターネット・通信の分野は政府との関係性が強く
1社では対処しきれない領域のため、
業界全体としてガイドラインの検討に着手。

Facebook、Google、LinkedIn、Microsoft、Yahoo!といった
IT企業は、NGOや投資家とマルチステークホルダーグループ
Global Network Initiative(GNI)を形成し、2年をかけた議論の末、
表現の自由とプライバシーに関する方針を定めたガイドラインを発表しています。

guide1

通信企業も同様に、AT&TやNokia、Orange、Vodafoneなどの企業が
Telecommunications Industry Dialogueを発足。
2013年3月に基本原則が発表されました。

guide2

両者は連携していくことも確認しており、
業界全体としての取り組みが進められています。

そうした状況のなか、Corporate Accountability Indexでは
各社の取り組みがどのように評価されるのか。
結果に注目です。

~~11/10追記~~
ランキングが発表され、インターネットと通信のカテゴリーでそれぞれ
GoogleとYahoo、VodafoneとAT&Tが1位・2位にランクインしています。
https://rankingdigitalrights.org/index2015/
~~

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シェアリングエコノミー その拡大がひきおこす労働問題とは?


Photo by Ramit Batra

「シェアリングエコノミー」(共有型経済)という言葉を知っていますか?

「シェア」というとモノの共同利用が浮かびますが
モノだけでなく、提供者が所有するサービスや労働力などを
共有するビジネスのことを指します。

提供されるサービスの例としては
・自分の部屋を使わない間貸す
・マイカーをタクシーのように運転する
・空いた時間に家事代行を行う

などが挙げられます。

近年、利用者と提供者を結びつける「場」の運営をする企業が
欧米を中心に急成長しており
一般の登録ドライバーによる配車サービスを行う
米国のUber社の企業価値は6兆円を超えるそうです。*1

そんな中、PwCは
シェアリング・エコノミーにおける5つの市場(金融、人材、宿泊施設、運輸、音楽やビデオの配信)の規模が
2013年の約1兆8000億円から、2025年までに約40兆円以上へと成長するという予測を発表。

スクリーンショット 2015-08-17 18.10.52
写真はPwC報告から 
URL: http://www.pwc.co.uk/issues/megatrends/collisions/sharingeconomy/the-sharing-economy-sizing-the-revenue-opportunity.jhtml

シェアリングエコノミーは
モノの共有による社会全体の環境負担軽減や
地域でサービスを提供している場合には
コミュニティーを活性化するほか*2
パートタイマーや失業者に収入源や労働機会を与えるなど
さまざまな価値が期待されています。

しかし、このビジネスの仕組みは
「ギグ・エコノミー」(単発で仕事を発注する非正規労働経済)とも呼ばれ
最近労働面での問題が注目されています。

たとえば、サービス提供の場を運営する企業が
運転手などの労働者を「従業員」でなく「独立請負人」として雇うことで
「中間搾取」を行っているという批判が増えており
昨年は、時間外労働や労災、経費などの支払いを求める訴訟が複数の企業*3
を対象に起きています。

7月には、ヒラリークリントンが
「ギグ・エコノミーは労働機会を提供しイノベーションを促進しているが、職場の保障や良い仕事とはいかにあるべきかについて疑問を提起している」
「労働者を不当に自営業者扱いし、賃金を搾取することを厳しく取り締まる」*4
と発言したことが注目されています。

米国では、インターネットの普及や不安定な経済情勢などにより
雇われない働き方をする人が増えており(3人に1人がフリーランサー*5)
多様化する労働者を守る政策づくりが今後さらに必要になっていくようです。

——–
参照
*1: 「マイクロソフトがウーバーに124億円投資-500億ドルの企業価値」
http://www.bloomberg.co.jp/bb/newsarchive/NSE4W46JTSE901.html
*2: 「シェアリングエコノミー」
http://www.shinnihon.or.jp/shinnihon-library/publications/issue/info-sensor/2014-08-02.html
*3: 「Shackling the Sharing Economy」
http://www.wsj.com/articles/shackling-the-sharing-economy-1438552181
*4: 「Hillary Clinton takes aim at Uber during speech on ‘gig economy’」
http://www.cnet.com/news/hillary-clinton-takes-aim-at-uber-during-speech-gig-economy/
*5: 「In economic address, Hillary Clinton calls out ‘gig’ economy」
http://www.cnbc.com/2015/07/13/in-economic-address-hillary-clinton-calls-out-gig-economy.html

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ユニオンと労働NGO–日中にみる労働運動の変化


photo by DonkeyHotey

マタニティハラスメントや残業代未払いなどで
エステサロン「たかの友梨」を運営する不二ビューティーと
従業員側が争っていた問題で、
子育て中の社員が働きやすい制度
「ママ・パパ安心労働協約」が会社と組合側で結ばれました。

ママ・パパ安心労働協約の締結のお知らせ
-女性が安心して働き続けられる職場環境を労使で協力してつくります-
http://esthe-union.com/archive/mamapapa.pdf

組合側は、協約は育児と仕事の両立のハードルとなりがちな
「3歳の壁」と「小1の壁」を撤廃する内容で、
法令を大幅に上回っているとして評価しています。

今回、従業員側の代表となったのが「エステ・ユニオン」です。
日本で組合といえば、企業ごとに正社員が加入する企業別労働組合でしたが、
労働者の非正規化などに伴い、近年雇用形態を問わず
誰もが個人単位で加盟できる「ユニオン(合同労働組合)」が増えています。

首都圏の労働者が加入する「首都圏青年ユニオン」や
夜の世界で働く人々による「キャバクラユニオン」など、
様々なユニオンが名ばかり店長や過労死、残業代不払いといった
労働者の雇用環境や生活向上の問題に取り組んでいます。

経済の状況や企業と労働者の関係が変化してきたことで、
労働運動に取り組む主体も変わってきています。
そしてその傾向は、中国でも同様です。

先日取り上げたユニクロを展開するファーストリテイリングの
中国サプライヤーの労働環境をめぐる問題で、
会社側が提案した解決策の1つに、
「工場における従業員代表者の民主的な選出と団体交渉権行使の支援」
があります。

中国にも工会と呼ばれる労働組合がありますが、
国公認の団体しか認められておらず、代表者も
多くは民主的な選挙で選ばれているわけではないため、
労働者側ではなく会社や党側に立つ組織となっているというのが実態です。

そうした状況に対し、工会(組合)を越えて、
労働者が運動を起こす事例が増えています。
日本ではたまにしか報道されませんが、近年
中国では毎日のように労働争議やストライキが発生しています。

そのきっかけとなったのが、
2010年にホンダの部品工場の南海ホンダの事件です。
労働者による、非合法なはずの自主的なストライキが発生し、
大幅な賃上げで決着しました。

参考:
IDE-JETRO「中国・出稼ぎ新世代の闘い:富士康連続自殺事件とホンダ工場ストライキをめぐる動向 」

労働者の権利意識が高まり、労働運動が活発化する中、
「労働NGO」と呼ばれる非公式な労働者団体が
集団交渉やストの中心となって、
工会(組合)の再編や労働者の権利確保に取り組んでいます。

そうしたNGOの台頭に対して、政府は国家体制に組込もうと体制内化し、
独立性を弱めながらもNGOが提供するサービスを利用しようと
試みるなどの動きを見せています。
・・・と複雑な中国の状況は一言ではとても言い表せません。

中国のNGOの状況に関心のある方は、以前
日中働き方ワークショップでご一緒したCSネット代表の
李妍焱(リ・ヤンヤン)さんの著書
中国の市民社会――動き出す草の根NGO (岩波新書)」が
とても詳しく参考になります。

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ユニクロの中国サプライヤー工場の人権問題を考える


photo by Taichiro Ueki

「UNIQLO労働者に尊厳を!搾取工場にNO!」と書かれ
掲げられる横断幕。

日本企業の中国サプライヤー工場における労働問題がここまで
国内で話題になったのは、初めてのことではないでしょうか。

今年1月11日。
香港を拠点とするNGO SACOMと、
日本のNGO ヒューマンライツ・ナウにより、、
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの
中国取引先工場での労働状況に関する調査報告が発表されました。

中国の縫製/織物工場における労働者の権利を確保するための早急な行動を
ブランドとサプライヤーに求める

両団体は工場2社への2ヶ月間の潜入調査と聞き取りを実施。
労働時間や作業環境、管理実態に関して調査が行われ、
長時間労働や低い基本給、
高温の作業所や有害化学物質による健康リスク、
罰金制度を伴う管理システムや
機能していない労働組合といった問題を指摘しました。

そうしたNGO側の指摘に対し、
ファーストリテイリングも動きます。
報告書発表後すぐ、事実関係が一部確認されたとし、
改善を約束する声明を発表しました。

中国のユニクロ取引先工場における労働環境の改善に向けた弊社行動計画について

両NGOとファーストリテイリングとの会談の場ももたれ、
その内容はこちらで確認することができます。

今回の事件、これまでの経緯から、多くの示唆が得られます。

●人権問題への注目度のこれまでにない高まり
YahooニュースのHRN事務局長の伊藤さんの記事は1.1万回以上シェアされ、
250万以上のアクセスがあったそうです。
柳井社長のコメントもテレビで放映されています。

●サプライヤー監査の難しさ
CSRレポートにも取り上げられるなど
比較的しっかりとやっていたはずの工場で起きてしまった今回の問題。
二重記録に監査の重複、出稼ぎ労働者の稼ぎたいという意思、
他工場との競争環境など、難しい理由は色々ありますが、
モニタリングがどうして十分に機能しなかったのかの
徹底した検証が求められます。

●人権NGOの役割の重要性
潜入調査を通じて実態を把握し、声なき声を社会に伝える人権NGO。
欧米に比べ日本ではまだ十分に社会に認知されているとは言えませんが、
人権NGOが果たす役割の重要性が再確認されました。

●ファーストリテイリング側の迅速な対応
ここまでのスピード感を持って企業側が対応したのは、
問題を深刻に捉えている証といえます。
労働環境の改善については今後の進捗を
しっかりと確認していく必要がありますが、
解決に向けたオープンな姿勢は評価されるべきと思います。

●ビジネスモデルそのものへの疑義
今回取り上げられたのは2社の工場の問題ですが、
事の本質はファストファッションという業態に内在しており、
「安さ」のしわ寄せが労働者にきている結果ではないかという点です。
ビジネスモデルそのものが問われているともいえるかもしれません。

ファーストリテイリングが提示した改善策の1つに、
工場における従業員代表者の民主的な選出と団体交渉権行使の支援があります。

近年労働争議が頻発し、まさに過渡期にあるといえる中国の労働問題。
今度2月20日に中国の労働組合と労働NGOの動向に関する
報告会が開催されますので、関心のある方は是非行かれてみてはいかがでしょう。

明治大学招聘研究者講演会「中国における労働問題の現在~官製労働組合と労働NGOの動向を中心に~」
http://www.meiji.ac.jp/cip/info/2014/20150220_of_copy6t5h7p00000hwqrd.html

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「おもてなし」ブームの表裏 CSRの観点から


photo by Nori Norisa

近年ブームの「おもてなし」。

元々観光業やサービス業を中心に使われていた言葉でしたが、
2020年東京五輪の招致活動以降、
あらゆるところで耳にするようになっています。

経済産業省では、

1.社員の意欲と能力を最大限に引き出し
2.地域・社会との関わりを大切にしながら
3.顧客に対して高付加価値・差別化サービスを提供する

経営を「おもてなし経営」と定義し、
地域のサービス事業者が目指すモデルの1つとして
2012年度からおもてなし経営企業の選出を行っています。

東京都では、2014年9月に発表した
東京都長期ビジョン(仮称)中間報告」において、
2020年の姿として、おもてなしの精神が
全世界に発信されている状態を目指しています。

それに連動する形で、第一生命保険と都市緑化機構は
緑の環境デザイン大賞」の25周年を記念し、
花と緑で観光客を迎える「おもてなしの庭」を
テーマとした緑化プランの助成事業を実施。

都内の事業を対象に、2020年まで毎年、
2020万円を上限として整備費を助成するとしています。

でもこうしてあちらこちらで持ち上げられている「おもてなし」は、
労働面からみると必ずしもいい点ばかりではありません。

ということに気づかされたのは、
ブラック企業VSモンスター消費者」という本の中での、
若者の労働問題に取り組むPOSSEの今野さん、坂倉さんと
都市社会学者の五十嵐さんとの対談でした。

企業の文脈で「おもてなし」が使われると、
=「顧客第一主義」と解釈され、
ともすると、お客さまの要望に対して
自発的に際限なく対応することが
求められることにつながってしまう。

これはある意味、職務範囲の限りない拡大であり、
本来仕事は職務に対する対価として賃金をもらうものであるはずが、
職務範囲が曖昧な日本でこれをやると、無限に広がりやすく、
長時間労働など労働者にとっての過剰な負担となっていく・・・

顧客満足を高めるために、
これが必要だからこれをしなさいと
職務を具体的に定義・指示することが企業の役割であるはずが、
「おもてなし精神」という曖昧な表現で済ませ、
あとは現場の労働者の判断にすべて任せてしまうというのは
本来企業が果たすべき責務の放棄であるといえます。

先日行った社員とのステークホルダー・ダイアログの中での
長時間労働をテーマにした議論の中でも、
職務の明確化とお客さまからの要望への対応は
重要なキーワードとして挙がっていました。

「おもてなし(顧客第一主義)」と「長時間労働」。
実は関係が深いテーマです。

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店舗の6割が深夜営業中止 すき家問題から見えてくること


photo by byran…

「月500時間の勤務」
「ほぼ全員が24時間連続勤務を経験」

今年7月31日に「すき家」を運営する
ゼンショーホールディングスに対して提出された、
第三者委員会からの労働環境改善に関する調査報告書。

そこには現場の過酷な労働実態が明らかにされています。

「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会「調査報告書」
http://www.sukiya.jp/news/tyousahoukoku%20A_B.pdf

すき家では以前から、従業員の労働環境が問題視されていましたが、
今年春先に問題が深刻化。

業界全体として人手不足の状況にあるなか、
学生が就職を機に退職する春先に
大雪や新商品の投入などの影響によって
現場の負荷がさらに増加したことで、2月~4月で
123店舗が一時休業や時間帯休業に追い込まれる事態となりました。

そうした中、労働環境改善を目的に第三者委員会が設置され、
上記の調査報告書が提出され、一般にも公開されています。

その後同社は、従業員に特に負担の大きい
深夜の営業時間帯を1人で切り盛りする
ワンオペレーション(ワンオペ)については、
9月末までに中止し深夜時間の複数勤務体制を確立すると宣言。
http://www.zensho.co.jp/jp/news/company/docs/20140930skrelease.pdf

体制が確立できていない全店舗の6割は、
10月1日以降0時~5時までの深夜営業を中止することになりました。

一方、「ブラック企業対策プロジェクト」の有志により
10月11日に行われた調査では、
都内の2店舗でワンオペが確認されたとしています。
http://www.bengo4.com/topics/2163/

これまで長らく放置されたきた問題の根は深く、
すぐの解決では容易ではありませんが、
外部の声にしっかりと向き合いながら、
真摯に改善に取り組んでいくことが期待されます。

また深夜営業における労務管理の問題は、
飲食やコンビニなど業界全体が共通して抱えているものでもあります。

今回の問題を機に、業界全体として
改善に向けた動きにつながっていくことが臨まれます。

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企業と子どもの人権 初の枠組み発表


photo by Julien Harneis

ビジネスが子どもの人権に与えうる様々な影響に着目した、
企業と子どもの人権に関する初の枠組みが発表されました。

「子どもの権利とビジネス原則(Children’s Rights and Business Principles)」
http://ungcjn.org/common/frame/plugins/fileUD/download.php?type=contents_files&p=elements_file_1369.pdf&token=0c1948d2929dc8cd2036a96bba5ac018beb327c3&t=20140609082352

childright
概要より

策定に参加したのは、グローバル・コンパクト・ジャパン、
日本ユニセフ協会、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの3団体。

これまで企業と子どもの関わりといえば
児童労働の文脈で語られることがほとんどでしたが、
企業が取り組むべき10の原則ごとに

・ビジネスが及ぼす負の側面
(子どもの権利を尊重する企業の責任)
・子どもの権利推進のための本業等を通じた取り組み
(子どもの権利を推進する企業のコミットメント)

の両面から方策が示されています。

<すべての企業が取り組むべき10の原則>
1.子どもの権利を尊重する責任を果たし、子どもの権利の推進にコミットする

2.すべての企業活動および取引関係において児童労働の撤廃に寄与する

3.若年労働者、子どもの親や世話をする人々に働きがいのある
人間らしい仕事を提供する

4.すべての企業活動および施設等において、子どもの保護と安全を確保する

5.製品とサービスの安全性を確保し、それらを通じて子どもの権利を推進するよう努める

6.子どもの権利を尊重し、推進するようなマーケティングや広告活動を行う

7.環境との関係および土地の取得・利用において、子どもの権利を尊重し、推進する

8.安全対策において、子どもの権利を尊重し、推進する

9.緊急事態により影響を受けた子どもの保護を支援する

10.子どもの権利の保護と実現に向けた地域社会や政府の取り組みを補強する

この中には、「子どもの権利を尊重する」「子どもの権利を推進する」
という表現がよく出てきます。
児童労働は防止するということは直感的に納得できても、
子どもの権利をなぜそこまで?と思う人も多いかもしれません。

しかし報告書の序章にあるように、世界のほぼ1/3は18歳未満の子どもです。
また子どもは、現在または将来の消費者・従業員および従業員の家族・
地域社会の構成員として重要なステークホルダーであり、
最も脆弱な立場におかれている存在であることを考えると、
子どもたちの権利尊重・推進に特別の注意を払う必要があることは
納得できるのではないかと思います。

先日、子どもを中心とした開発に取り組む
NGOのプラン・ジャパンを取材で訪ねました。
子どもを開発の中心に据えることで、時間はかかるけれども、
子どもたちが主体的に地域に関わるようになり、
親を巻き込み、自身が大人になってからも積極的に地域に関わり、
また将来生まれてくる子どもたちにもそうした経験を与えるようになるなど、
いい影響が連鎖していくとのことでした。

日本企業はCSR活動の一環として、
子どもたちへの教育に力を入れていることが多いです。

子どもの権利尊重・推進の観点から一度自社の活動を捉えなおすことで、
活動に新たな広がりを持たせたり、
新しい意味づけを与えられたりするのではないでしょうか。

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企業の人権侵害訴訟 被害者を阻む壁

3D Judges Gavel
photo by Chris Potter

過剰なノルマにより、子どもも含め一家全員が
従事させられる強制的な労働。

十分な安全が確保されず、命の危険を伴う
炭坑や農薬を扱う作業。

農園を造成するために、違法な手段で
強制的に行われる土地収奪。

こうした人権侵害に抗議する手段の一つに、
被害者が企業を訴える人権侵害訴訟があります。

ロンドンに拠点を置くNPO
Business & Human Rights Resource Centreが
人権侵害訴訟の世界的動向についてまとめた年次報告書を発表しました。

Barriers worsen for victims seeking justice – New briefing highlights human rights lawsuits against companies over alleged abuses in over 25 countries
http://business-humanrights.org/Links/Repository/1023629/link_page_view

今年で2回目となる報告書では、
被害者が法的手段に訴えることの難しさを指摘しています。

人種やジェンダー差別による壁。
被告側の人的・経済的資源の不足。
親会社の子会社に対する責任を追及するハードル。
集団訴訟の仕組みの未整備。

また、今年4月に米国の連邦最高裁判所が下した判決の影響により、
多国籍企業の国外での人権侵害について、本国で
訴えることが難しくなってきていることが指摘されています。

米国には、外国人不法行為請求権法(Alien Tort Claims Act, ATCA)という、
米国内でモノやサービスを提供する会社であれば
米国外での人権侵害について訴えられるという法律があり、
近年多国籍企業の人権侵害について多くの訴えが起こされていました。

しかしロイヤル・ダッチ・シェルのナイジェリアでの問題について、
不起訴とする判決が出たことにより、人権侵害の被害者が
米国の裁判所にアクセスがしにくくなると懸念されています。

参考:
米国連邦最高裁判所、多国籍企業の国外での人権侵害に対する管轄権を制限
http://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2013/04/post-84.html

さらには、国や企業が個人を狙い撃ちにして起こす
SLAPP訴訟のリスクも増加しています。

国連のビジネスと人権に関する指導原則は、
国家に対し被害者が実効的な救済へのアクセスができるよう、
適切な措置をとることとしていますが、現状はまだまだ不十分です。

それでも、こうした訴訟は各地で起こされており、
同センターのサイトには、各国の約90の人権訴訟事例が
データベースにまとめられています。

人権侵害に対する企業の法的な説明責任(Corporate Legal Accountability)に関して、
制度が十分に整えられ、被害者がしっかりと救済される仕組みを作っていくことが求められています。

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【G4を読み解くキーワード】日本企業 ディーセント・ワークとどう向き合う?

tuc stand-up for decent work 34
Photo by Philosophy Football

Decent work(ディーセント・ワーク)という言葉を聞いて、
その意味や何を指すかを具体的にイメージできる方は
どのくらいいるでしょうか。

G4にも出てくるこの言葉。
非常にわかりにくいコンセプトです。

ILOのディーセント・ワークの説明映像を見ると、
なんとなくその意図するところがわかるかと思います。
http://www.ilo.org/public/english/dw/ilo-dw-japanese-web.swf
(すごく特徴的な画です。。。!)

翻訳ブログでは、言葉の観点からの理解を試みていますが、
ここでは企業がどのようにこのコンセプトに向き合っていけばよいのかについて
考えてみたいと思います。

ディーセント・ワークは、99年に登場し、
現在はILOの21世紀の目標として位置づけられ、
その実現に向けた取組みが進められています。

ILOによるディーセント・ワークのより詳しい説明
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/downloads/dc1.pdf
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/downloads/dc2.pdf

各国はディーセント・ワーク国家計画を策定して
推進していくことになっています。
計画の策定状況をこちらでみることができますが、
名前が上がっているのはほとんどが途上国。

確かに最近のILOのリリースなどを見ても
貧困や児童労働、若年失業者、家事労働者などの文脈で
語られることが多く、日本とは距離のある言葉のようにも思えます。

しかしこのコンセプトが包含するテーマは、
失業、社会保障、労働者としての権利、男女平等、病気・障がい、
移民、若者など、多岐に渡ります。

最近の日本の文脈に照らせば、
非正規雇用。過労死。ブラック企業。
女性の社会進出。高齢者雇用。メンタルヘルス。外国人労働者など。
決して遠い話、新しい話ではありません。

さらには、ILOは持続可能な開発の両輪として、
環境の持続可能性とディーセント・ワークの両方を
実現する必要があるとしており、
サステナビリティを語る上で企業としては
無視できないコンセプトです。

No sustainable development without environmental sustainability and decent work
http://www.ilo.org/ilc/ILCSessions/102/media-centre/news/WCMS_216400/lang–en/index.htm

ただ、企業としてなかなか正面からは
ディーセント・ワークという言葉を扱いにくいかもしれません。

確かにCSRレポートなどでもほとんど登場しないのですが、
たとえば韓国のLGは、マテリアリティレポートでDecent workのページを設け
労使関係や労働時間、苦情処理や監査の仕組みを
この項目の中で報告しています。

そもそも日本は労働分野に関しては世界的にも遅れている国と見なされています。
批准しているILOの条約・勧告は全体の4分の1程度で、
労働時間や差別待遇などの条約は批准していません。

ディーセント・ワークは現在進行形のコンセプトで、
実現に向けてこれから実態をつくっていく段階ではありますが、
今後もますます注目が高まっていくことは確実で、
グローバルに展開する企業は今後、
ディーセント・ワークへの考え方が厳しく問われてくると考えられます。

世界の潮流に対する視点と、日本に対して注がれている視点。
両方の観点を踏まえて、
ディーセント・ワークへの考え方と取組みを
整備していくことが求められています。

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病気で休める制度の充実を 米国の病気休暇導入議論

日本では風邪をひいたとき、
有給休暇を消化するのが一般的です。

多くの海外の国では、有給休暇とは別に、
病気になったときに数日休むことができる
病気休暇(Sick Leave)という制度があります。

日本でも外資系企業などでたまに見られますが、
海外では法律で定められているところも多くあります。

米国では今回、連邦議会に自身あるいは家族の看病のために
7日間の病気休暇を義務付ける法律、
健康家族法(Healthy Families Act)が、
再提出されました。

Paid Sick Days Legislation Introduced in Congress
http://asbcouncil.org/press-release/paid-sick-days-legislation-introduced-congress

これまでも何度か議論はされてきたのですが、
米国では、ポートランドやシアトルなど、
近年州レベルでの導入の動きは進み始めた一方、
国レベルでの病気休暇の法的な規定はありません。

実は有給休暇そのものを規定する連邦法もなく、
企業が福利厚生の一環として独自に
導入していることが多いというのが実態です。

そのため、
企業従業員総数の3人に1人が有給病欠がなく、
仕事や報酬に響くことを懸念して
インフルエンザが流行しても職場に通って逆に
感染が拡大しているとの報告や、
特に制度が整っていない低所得労働者とその家族・子どもたちが
恩恵から除外されているという報告も見られます。

福利厚生、生産性向上、コスト増加、労働者の基本的権利など
様々な観点からの議論がありますが、
気軽に休んでも業務に支障がでないような体制を構築するためには、
余裕をもったスケジュール組みや相互補完できる人材体制などが必要であり、
結果的に強い組織をつくることにつながるのではないでしょうか。

私はもっと日本でも病気休暇の導入が議論されてもよいと思います。

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家事労働者も労働者! 2013年に家事労働者条約発効

家事労働者の労働者としての基本的な権利を保護する
「家事労働者条約」が2013年9月5日に
発効されることとなりました。

掃除や洗濯、子どもの世話など、
家庭内の雑事全般を担うのが家事労働者です。

女性の家事労働者をメイドと言ったりもしますが、
言葉の響きとは裏腹に、その労働実態は過酷です。

家の中という外部から隔離された環境であること。
女性や子ども、移民など立場の弱い人がなることが多いこと。
使用者が一般の家庭であること。

などの状況により、
労働・社会保障法の適用対象外になりがちで、
過酷な労働を強いられています。

今回発効した条約の正式名称は
「家事労働者の適切な仕事に関する条約(仮訳)」。
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/st_c189.htm

条約では、家事労働者を労働者と認定し、

一般の労働者と等しい労働時間、
最低でも連続した24時間の週休、
現物払いの制限、
雇用条件の明示、
結社の自由や団体交渉権

などの権利を認めています。
また、児童や移民など追加的なリスクにさらされる
可能性がある労働者については、
特別の保護措置も規定しています。

日本では家事労働者を利用している割合が低いですが、
ILOの最近の推計では、家事労働者は世界全体で約5,300万人。
ただし目につかないことも多いため、最大で1億人はいるとされています。
家事労働者の約83%を女性や少女が占め、移民の割合も多いです。

2011年のILO総会で採択され、
現在批准しているのはウルグアイ、フィリピンの2ヶ国。
さらに多くの国の批准が待たれます。

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