アプリが移民労働者を支援? 労働者の声を活用したエシカルリクルートの実現

2019 / 7 / 1 | 執筆者:岡山 奈央 Nao Okayama

 

近年、労働力不足を背景に、東南アジアにおける移民労働者が増加しています。

移民労働者はブローカー等の斡旋機関を通して仕事を得るケースが多く、派遣先国の言葉がわからないなど労働者の立場の弱さを利用した人権侵害が横行していることから、世界中のNPO/NGOや国際機関などから批判の声が上がっています。

一部の海外先進企業は、サプライヤー向けのガイドラインを設け、移民労働者の労働環境の改善や、労働者の権利保護に関する規定を盛り込むなどの対応を進めていますが、こうした雇用者側からのアプローチに頼っている限り、本当に現場の状況が改善されているのか、ほかに潜んでいる問題はないか、正確かつタイムリーに把握することはなかなか容易ではありません。

そのような中、労働者の声を直接集めるための方法として、スマートフォンのアプリを活用した取組が広まりつつあります。

タイのNGO Issara Instituteでは2017年に、米国のUSAIDおよびウォルマート財団の支援のもと、タイで働くミャンマーやカンボジアからの移民労働者のための通報支援アプリを開発しました。

アプリ「Golden Dreams」の画面

このアプリを使用することで、労働者はIssaraチームからの支援を24時間無料で受けることができます。労働者からの苦情はIssaraチームを通して雇用主に伝えられ、雇用主は改善のためのアクションプランを求められます。

そのほかに、労働者はアプリを通して以下のようなサービスを利用することができます。

・移民労働者に関する最新のニュースや法規制についてのお知らせ受信
・地域ごとの雇用主、斡旋機関に関する情報、病院やNGOなどの支援機関に関する情報検索
・雇用主、斡旋機関、支援提供機関に関するレビューや評価の投稿、情報の交換

タイで働くミャンマー出身の労働者のうち90%以上がスマートフォンを所持しているということから、大多数の現場の声を集約し、状況改善、人権侵害の予防に役立てることが期待されます。

 

アプリを活用した強制労働防止のための取組はタイ以外の国でも進められています。

インドネシアでは水産業における人身取引が後を絶たないことから、海洋水産省(KKP)はIOMと協力し、水産業における強制労働検出のための多言語対応アプリを開発。雇用主に質問するのではなく、労働者に直接質問することで、より迅速に問題を把握することができるということです。
IOMとインドネシア政府が海域における人身取引の犠牲者救済のためのアプリ開発
(2019年4月, IOM)(英語)

 

アプリを活用した取組では、スマートフォン自体を雇用主に取り上げられてしまう、苦情投稿が発覚し、雇用主や斡旋機関から報復行為を受ける可能性がある、などの懸念は残るものの、これまで一方的に抑圧されてきた労働者の権利を保護するための手段として、また、企業がエシカルなサプライチェーンを構築するためのツールとして、今後大きな役割を担う可能性を秘めています。

グローバルにサプライチェーンを展開する大手企業だけでなく、今後外国人労働者の受け入れが進むことが想定される国内の中小企業の間でも、こうした取組が広まることを期待しています。

(岡山奈央/プロジェクトマネジャー・リサーチャー)

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