需要拡大が続くパーム油

2017 / 2 / 24 | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝


Photo by Marufish

お菓子や洗剤、化粧品など
世界の消費財の半分に使われている「パーム油」。
世界で一番多く消費されている植物油です。

世界のパーム油生産の8割以上を占めるインドネシアやマレーシアでは、
パーム油の原料「アブラヤシ」の農園開発による熱帯林伐採や
農園での人権問題が問題になっており
WWFなどが中心となって
2004年に、認証制度を通して持続可能なパーム油の生産・利用を促進する
「RSPO:持続可能なパーム油のための円卓会議」を設立しました。

2月に発表されたRSPOの2017年レポートでは
「2016年、パーム油の持続可能性において著しい進歩がみられた」とし
主な成果として以下を報告しています。

・保全した森林面積が、2015年から9%増え、サッカー場20万面分に
・小規模農家の認証が2015年比で50%増加
・2009年以降、41件の労働関連の苦情処理が完了
・会員のうち40社が毒性の強い農薬(パラコート)の使用をやめ、33社が使用停止を検討中

しかし、90年以降、サッカー場3,400万面分の森林がアブラヤシ農園に転換されていることを考えると、
RSPOによって保全されている森林はごく一部です。

また、パーム油生産を目的とする野焼きが原因で発生する火災が熱帯雨林で多発しており、
2015年にはインドネシアで起きた火災が
10万人の寿命を縮めたという衝撃のニュースがありました。*

この報告書では
火災の環境・健康被害の重大さを認識し
RSPO会員に関係のある火災の取り締まりを厳格化する準備はできているとしながらも
具体的な対策については言及しておらず
パーム油の生産地以外が原因となることも多いとして
主に地域全体のガバダンス強化が必要であることを指摘するにとどまっています。

社会の注目が高まる児童労働や強制労働については、
2015年、米国環境調査機関による不正監査の指摘を受けて
監査を厳格化しており、
取り締まりを強化していくとしていますが、
2016年に国際NGOに指摘された
RSPO会員のWilmar(世界のパーム油の40%を生産)が多くの子どもを雇用していた件や、
PepsiCoが強制労働で起訴された事件については触れておらず
監査の厳格化がどれくらい機能しているのかは疑問です。
(2017年レポートで強調されている苦情処理の件数が限定的なことに対する
批判もあります)

急激な増加を続けるパーム油の需要は、
2016年には、供給が需要に追いつかず5ヶ月連続で価格が上昇しており、
生産拠点をインドネシアやマレーシアに加え、
中南米やアフリカに増やすことを計画する生産者も出てきています。

RSPOに参加する企業数やRSPO認証の実効性が限定的な中、
1月には国際NGO Ceresが企業のパーム油調達に関する報告ガイダンスを発行しました。

生産地での火災発生や、児童労働発生により取り締まりを受ければ
生産量にも大きな打撃を与えることから
投資家が企業の事業リスクを評価するツールになることが期待されています。

実効性のある監視の仕組みの拡大にあわせて
各企業が取り組み強化をしなければ
需要が増え続けるパーム油を持続的に生産していくことはできません。

——
※熱帯雨林の火災:
熱帯の低湿地には、
木や葉が地表に積み重なった「熱帯泥炭地」が存在し、
火災が起こると大量の炭素が排出されるため
インドネシアは、生態系からの排出を含めると世界第4位のCO2排出国となっています。

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