企業の人権ベンチマーク、パイロット版の指標が完成

2016 / 6 / 7 | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝

伊勢志摩サミットでは、前回のエルマウサミットで討議された
責任あるサプライチェーン」について貿易の部分で一部言及されたのみで
進展がありませんでしたが
国際標準化機構で検討中のISO20400(持続可能な調達のガイドライン)は2017年に発行される見込みで、
2020年の東京オリンピック関連の調達への適用が予想されています。

ISO20400において主題のひとつである「人権」について
企業のサステナビリティ格付・ランキングが始まるようです。

2014年に「国連のビジネスと人権フォーラム」で発足した
「企業の人権ベンチマーク(Corporate Human Rights Benchmark)」というイニシアチブが
2016年11月発表の企業ランキングに使用するパイロット版の指標を発表しました。

これは世界規模で企業の人権に関する方針や取り組みのプロセス・実践状況を評価・格付けする初の取り組みで
人権ビジネス研究所、資産運用会社大手のCalvert Investmentsや責任投資の調査会社Vigeo Eiris、
人権NGOらが共同で開発したものです。

透明性と信頼性の高い指標をつくり出し、情報を一般公開することによって
市場の競争性を利用して企業の人権取り組みを加速化するとともに
各社を比較できるようにすることで
投資家や市民社会による企業への働きかけを促進することを目指しています。
(EIRISプレスリリースより)

グローバル企業100社をベンチマークする第1回目の調査では、農作物・アパレル・採掘業の3業種が対象で
日本企業では、Fast Retailingとイオンの2社が入っています。

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写真:評価項目とスコア配分(本レポートP41)

指標は、国連人権理事会の「ビジネスと人権に関する指導原則(ラギー・レポート)」に沿って
6項目で構成されており
Score1を満たさないと0点、Score1を満たすと1点、Score1と2の両方を満たせば2点となります。
また指標ごとに、GRI、SASB、SDGs、ILOの条約など、世界の幅広いイニシアチブやガイドライン等との共通項目が一目で確認できるようになっています。

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写真:本レポートP70

項目ごとの指標例は以下です。
ーーーーーーー
●ガバナンス・方針(10%)
・業界特有分野の人権尊重
・人権擁護者の尊重
・トップのコミットメント
・役員委員会での協議内容
・役員委員会への人権取り組みに対するインセンティブ

●デューデリジェンス(25%)
・人権尊重方針への取り組みに対するマネージャークラスへのインセンティブ
・企業全体のリスクマネジメント体制に人権リスク対応が組み込まれているか
・人権に関する教育制度
・取引先決定における対象企業の人権パフォーマンスの考慮
・人権リスクとインパクトの評価(特に顕著なリスク、業界特有のリスク)
・リスクの説明責任

●救済・苦情処理メカニズム(15%)
・従業員向け/外部向け苦情通報メカニズムの有無
・利用者がメカニズムの設計に関わっているか
・メカニズムの仕組みの公開
・報復的行動を禁止しているか
・対応と改善方法の公開

●取り組み状況(20%)
・最低賃金の支払い
・サプライチェーンのマッピング・開示
・死亡率、事故率、労働損失日数の開示
・土地の権利の特定方法
・女性の権利の認識
・サプライチェーンの労働時間
・先住民の権利尊重

●深刻な申し立てへの対応(20%)
・すべての疑惑に対して公的説明を行っているか
・適切な方針・アクションの有無

●透明性(10%)
・全指標から関連項目を考慮して評価
ーーーーーーー

今回の指標では、労働者が仕事を得るために料金を払うことを禁止する“No Fee”という活動や
雇用主が労働者の転職を妨げる行為まで取り上げている点や
国連指導原則報告フレームワークとの関連性の高さが特に評価されています。

11月にまたランキングの結果についてブログを書きます。

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