デジタル時代の人権リスクにどう対処? ICT企業の事例から学ぶ

2016 / 4 / 9 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

smartphone
photo by Christian Spannagel

今年2月、国内で初めて
ヘイトスピーチ動画に対する削除要請が法務省から出され、
ニコニコ動画など複数のサイトが応じました。

他にも類似の動画は無数にあり、もちろんこれだけでは何も解決しませんが、
具体的な動きに向けた一歩といえます。

(ネット上での人権侵害がどうなっているのか、
当事者にならないと実感が湧きにくいですが、その実態は深刻です。
私は安田浩一さんの「ネット私刑(リンチ) 」を読んで衝撃を受けました)

世界中でデジタル化が進むなか、好むと好まざるとにかかわらず、
ICT企業が人権侵害に関与するリスクが高まっています。

そうしたなか、英国のInstitute for Human Rights and Business(IHRB)が
進めている「Digital Dangers」というプロジェクトがあります。

Digital Dangers: Identifying and Mitigating Threats to Human Rights in the Digital Realm
http://www.ihrb.org/about/programmes/digital-dangers.html

ICTと人権の問題は、
表現の自由、プライバシー、政府との関係性、治安など
様々な要素が複雑に絡み合うため、
単純な解決策がないことに難しさがあります。

「Digital Dangers」は、
こうした「ジレンマ」を共通認識として持った上で、
ICT企業に対して自社が置かれている状況を隠さないよう呼びかけ、
一緒に経験を事例として研究・蓄積して
解決に向けた方向性を模索していこうとする試みです。

対象事例を特定後、許可を得てIHRBの研究者が企業に密着し、
ケーススタディとしてその経験をまとめます。

2015年にその第1弾として、3つの事例に関する報告書が発表されました。

1.2013年のケニア大統領選におけるヘイトスピーチへの対応(サファリコム)
Corporate Responses to Hate Speech in the 2013 Kenya Presidential Elections. Case Study: Safaricom (2013)

2.通信のベンダーとしてシステムの悪用・乱用にどう対処するか(エリクソン)
Human Rights Challenges for Telecommunications Vendors: Addressing the Possible Misuse of Telecommunications Systems. Case Study: Ericsson (2014)

3.安全とアクセスを巡るパキスタンにおけるモバイルネットワークの強制遮断(Telenor Pakistan)
Security V Access: The Impact of Mobile Network Shutdowns. Case Study: Telenor Pakistan (2015)

1は、ケニアの2007年の大統領選での暴動で多数の死者が発生した際に
ヘイトスピーチの拡散にSMSが利用されたことから、次の選挙に向けて
どのように企業と政府が取り組んだかに関するレポートです。

2は特定の個人や集団を監視するための政府からの圧力に対し、
エリクソンがどのような方針を打ち立てて対処をしたか。

そして3はテロ抑止を目的に一時的に通信回線を遮断する政府の措置が、
恒常化し過剰な抑制とならないためにはどうしていけばいいかについて
まとめられています。

ここではこれ以上の詳細は省きますが、いずれも難しい問題に対し
どういった判断のもと、どのような対応を行ったか、
今後の対応を考える上でとても参考になります。

このテーマは、今後、ICTが生活のあらゆる領域に広がっていくなかで、
今は「関係ない」と思っている企業にとっても
他人事ではない重要なテーマとなってくるはずです。

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