クローン家畜の安全性評価

2015 / 12 / 21 | 執筆者:Yurie Sato 佐藤百合枝

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Photo by Peter O’Connor aka anemoneprojectors

世界では、人口増加や新興国の経済発展にともなって
肉の需要が急激に伸びており、
米国農務省のデータによると 2012年の世界の食肉消費量は249万トンと
2000年比で3割近く増えています。*1

そんな中、中国のバイオテク企業Boyalifeが、
肉の需要量増加に対応するため、2016年の稼働に向けて動物クローン工場の建設を進めており
最初は年間10万頭分から、その後、年間100万頭まで生産を増やす計画です。*2

食用クローン動物、各国の安全性評価はどうなっているのでしょう?

米国食品医薬品局(FDA)では、輸入量には制限をかけているものの
「体細胞クローン技術を用いて生産された動物と
従来の繁殖方法で産出した家畜は安全性において同等」としています。*3
しかし、米国ではクローン家畜は、家畜の品種改良のための種畜として使われることが多く
食用として売られることは少ないため、
現在、販売の際に特別なラベル表示の義務はなく、*4
大量生産が始まれば、消費者から対応を求める声が大きくなることが予測されます。

欧州食品安全機関(EFSA)も、
クローン動物と、従来の家畜に違いは見つかっていないとしながらも、
クローン動物の生存率はどの生育段階でも通常より低く
クローンによって作成した卵子が移植された牛には妊娠・出産の際により多くの問題が起きることから*5
動物の健康や福祉の観点での懸念を繰り返し表明しています。*6
輸入に関しては2013年から、クローン動物の食品利用および輸入の禁止法案を検討中です。*7

日本の厚生省も、米国、欧州同様、クローン家畜は安全としており、
輸入に関しての規制は特にないようで
「引き続き国民に対する情報提供と必要な情報の収集を行う」としています。*8

中国政府は、クローン動物の生産量に制限は設けないとしていますが、
Boyalifeが安全性評価の実施や倫理性への懸念に対する説明など
課題にどう対応していくのか注目したいと思います。

——
参照
1: 世界の食肉需要の動向と飼料用穀物
http://mitsui.mgssi.com/issues/report/r1405x_matsuura.pdf
2: Boyalife プレスリリース”Animal cloning center to be built in Tianjin”
http://www.boyalife.com/english/new.asp?nlt=44&None=2
3: FDA, Animal Cloning
http://www.fda.gov/AnimalVeterinary/SafetyHealth/AnimalCloning/default.htm
4: China Will Start Cloning Cattle to Meet Rising Beef Demands
http://fortune.com/2015/12/01/china-cloning-cattle/
5:年間100頭の食用クローン牛を生産する米企業
http://www.afpbb.com/articles/-/3019254
6:EP wants animal cloning ban extended to offspring and imports
http://www.europarl.europa.eu/news/en/news-room/20150903IPR91517/EP-wants-animal-cloning-ban-extended-to-offspring-and-imports
7:Largest animal cloning factory can save species, says Chinese founder
http://www.theguardian.com/world/2015/nov/24/worlds-largest-animal-cloning-factory-can-save-species-says-chinese-founder
8:体細胞クローン家畜由来食品に関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/clone_kachiku.html

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