「おもてなし」ブームの表裏 CSRの観点から

2015 / 1 / 8 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa


photo by Nori Norisa

近年ブームの「おもてなし」。

元々観光業やサービス業を中心に使われていた言葉でしたが、
2020年東京五輪の招致活動以降、
あらゆるところで耳にするようになっています。

経済産業省では、

1.社員の意欲と能力を最大限に引き出し
2.地域・社会との関わりを大切にしながら
3.顧客に対して高付加価値・差別化サービスを提供する

経営を「おもてなし経営」と定義し、
地域のサービス事業者が目指すモデルの1つとして
2012年度からおもてなし経営企業の選出を行っています。

東京都では、2014年9月に発表した
東京都長期ビジョン(仮称)中間報告」において、
2020年の姿として、おもてなしの精神が
全世界に発信されている状態を目指しています。

それに連動する形で、第一生命保険と都市緑化機構は
緑の環境デザイン大賞」の25周年を記念し、
花と緑で観光客を迎える「おもてなしの庭」を
テーマとした緑化プランの助成事業を実施。

都内の事業を対象に、2020年まで毎年、
2020万円を上限として整備費を助成するとしています。

でもこうしてあちらこちらで持ち上げられている「おもてなし」は、
労働面からみると必ずしもいい点ばかりではありません。

ということに気づかされたのは、
ブラック企業VSモンスター消費者」という本の中での、
若者の労働問題に取り組むPOSSEの今野さん、坂倉さんと
都市社会学者の五十嵐さんとの対談でした。

企業の文脈で「おもてなし」が使われると、
=「顧客第一主義」と解釈され、
ともすると、お客さまの要望に対して
自発的に際限なく対応することが
求められることにつながってしまう。

これはある意味、職務範囲の限りない拡大であり、
本来仕事は職務に対する対価として賃金をもらうものであるはずが、
職務範囲が曖昧な日本でこれをやると、無限に広がりやすく、
長時間労働など労働者にとっての過剰な負担となっていく・・・

顧客満足を高めるために、
これが必要だからこれをしなさいと
職務を具体的に定義・指示することが企業の役割であるはずが、
「おもてなし精神」という曖昧な表現で済ませ、
あとは現場の労働者の判断にすべて任せてしまうというのは
本来企業が果たすべき責務の放棄であるといえます。

先日行った社員とのステークホルダー・ダイアログの中での
長時間労働をテーマにした議論の中でも、
職務の明確化とお客さまからの要望への対応は
重要なキーワードとして挙がっていました。

「おもてなし(顧客第一主義)」と「長時間労働」。
実は関係が深いテーマです。

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