ショートターミズムと中長期的な価値創造 望ましい企業と投資家の関係とは?

2014 / 5 / 7 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa


photo by SalFalko

SRIや統合報告をめぐる議論の中でよく出てくるテーマの1つに、

中長期的な価値創造を見据えた情報開示
vs投資家のショートターミズム(短期志向)

があります。

SRIに携わっている投資家と企業の方々との対話を
ご支援することがありますが、その中で必ず、
非財務情報など中長期的な価値創造を見据えた
情報開示を進める上での難しさとして、現実問題として
投資家の多くが短期の財務数値にしか関心を示さない、
という問題が話題に上ります。

短期志向の傾向は当面は続き、すぐになくなることはありませんが、
政府としても企業の持続的な成長につながる
資本市場の望ましいあり方を考えようと、経産省が2013年に
「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」
プロジェクト
を設置しました。

この度、その中間報告が発表され、短期志向の問題についても触れられています。

「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト(伊藤レポート)中間論点整理
http://www.meti.go.jp/press/2014/04/20140425007/20140425007-2.pdf

報告書では、日本市場の短期志向の特徴として、
欧米とは異なる特有性を持っており、
中長期的な視点から主体的判断に基づいて
株式銘柄の選択を行う投資行動をとる層が薄いことが
特に問題であると指摘しています。

その他の特有性の例としては、

・長期にわたって株価上昇の期待が低い状態が続いた結果、
短期に投資機会を追求することが経済合理的であった。
長期投資を促すには、企業の収益性、株価上昇が長期的に高まって行くという
期待を持たせなくてはいけない。

・日本の投資コミュニティにおいて、
短期志向化を促すインセンティブが働いている。
たとえば、母体組織や会計上の要請から短期実績で評価する、
ローテーション人事により長期経営へコミットがしにくい、
報酬体系が長期パフォーマンスとの連動が薄い、など。

・投資家が長期的な投資判断をするための情報が企業側から効果的に開示されていない。

・短期志向を助長する制度の存在。
安い手数料で高速売買できるインフラ整備、適時開示を目指した
四半期開示がもたらした意図せざる結果、など。

中長期的な価値創造に視点を向けていくためには、
企業側の情報開示と、投資家との対話が不足しており、
今後のあるべき方向性として、
企業と株主の「協創」が持続的成長の基礎条件との認識のもと、
より一層の対話促進が重要としています。

非財務情報を含む中長期的な情報開示については、
統合報告に向けた取り組みがそのための
有効な手段の1つになりうるとの認識を示しており、
統合報告に対する社会の要請は今後一層高まっていきそうです。

レポートは5月20日まで情報提供・意見を募集し、
今年初夏に最終報告が公表される予定です。

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