携帯電磁波、化学物質、農薬ー早期の警告どう向き合うか、EU報告書

2013 / 4 / 2 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

warning sign
photo by Robert Couse-Baker

EUの独立機関である欧州環境庁が、
健康や環境に関する潜在的な課題に関して
予防原則の観点から最新の知見をまとめた報告書
“Late lessons from early warnings: science, precaution, innovation”
(早期警告からの遅すぎる教訓:科学、予防、革新)
を発表しました。
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2

これは2001年に発表された初版の改訂版で、
20ほどの具体的な事例を取り上げ最新の研究成果について報告しています。

前回に引き続き取り上げられている問題では、
・タバコ
・農薬のDDT
・塩化ビニル
・気候変動による影響
・農薬によるミツバチの減少
・化学物質による生物のメス化

などの事例が、一方、
近年新たに急速に問題になりつつある問題としては、

・携帯電話の電磁波
・GM(遺伝子組み換え)作物
・ナノテクノロジー
・外来種

などが取り上げられています。

たとえば電磁波の問題についてみてみると、
近年の大きな動きとして、2011年にWHO(世界保健機関)が発がんリスクを
発がん性があると疑われるグループ2Bに分類したことが紹介されています。

報告書では携帯電話業界の影響調査の努力不足について指摘しており、
EUでは研究資金の比重が製品開発に大きく偏っていて、
過去10年で潜在的な被害の調査に使われたのは1%に過ぎないとしています。

また2012年には、世界で初めて、
イタリアの最高裁が労働災害保険機関(INAIL)に、
仕事で1日5~6時間以上、12年にわたって携帯電話を
同じ耳の側で利用していた影響で脳に腫瘍が発生したと主張していた
労働者に補償を命じた判決についても触れています。

低用量暴露による発がんリスクについては依然不明な点も多く、
研究手法やデータも限定的で、
携帯電話と腫瘍との直接の関連が示されたわけではありませんが、
2001年に同様のリスク分類がなされた超低周波電磁界
(高圧送電線や家電などによる50または60ヘルツの磁界)については、
「因果関係があると断定できるほど科学的証拠が固まったわけではないが、
何らかの対策を必要とするほどには十分な証拠とみなせる」
という見解をWHOが発表しています。

害の証拠がない≠害がない証拠、という前提の下、
こうした「早期の警告」に対してどのように向き合っていくのか。
政府や企業の姿勢が問われています。

[参照]
国立がんセンター「携帯電話と発がんについての国立がん研究センターの見解
NPO市民科学研究所「国際がん研究機関「携帯電話電磁波の発がん2B評価」の意味
一般社団法人電波産業会「携帯電話使用と腫瘍に関するイタリア最高裁判所の労災認定の判決について」

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