Return to work ~ 病気からの復帰(第3回)

2016 / 10 / 17 | 執筆者:Futakuchi Kazuko

cafePhoto by Ivan Pavlovskyy

前回の末尾でお伝えしたレポート翻訳は、前年に創刊号を担当したプロジェクトでした。
その年はスケジュール調整まで、他のメンバーが担当してくれ、
ほぼ完成した日本語版の原稿を受領、翌週からいよいよ翻訳開始。
そんな7月の土曜日に、遅めの朝食を終えて着替えようとした時でした。
お休みの日なのに、ずっと考えてるのは、仕事のこと。

今年はさらに良いものを目指し、業務の改善も進めなくては。
それに、初めて翻訳コーディネーターを務めてくれるメンバーもリードしないと。
覚悟しているとはいえ、かなり緊張している自分がいました。
1年前、淡々とリードできていたことさえも、プレッシャーに感じます。

また、9月初旬に環境翻訳に関する講演のご依頼もいただいていました。
会社のプレゼンス向上にまたとない機会、
夫が金沢-東京の往復で同行してくれると言ってくれたこともあり
お引き受けしていました。加えて、この頃には、
秋以降のプロジェクトの見通しもついてきていました。

これから先のことが、いっぺんに押し寄せてきて、突然ひとりでいられなくなったのです。
自分をコントロールできなくなる。どうしようもなく怖い。
夫はこの日仕事で、夕方まで戻りません。
少し気分が落ち着かないかと待ってみましたが、やはり変わらないので、
趣味だったランニングを通して知り合った友人に思い切って電話しました。
入院中もたびたび会いに来てくれ、
日ごろからどこにも無理している所がなく、周りの人にやさしい人です。

彼女は予定をキャンセルして、1時間後ぐらいに行くから、と約束してくれました。

入院中ずっと支えてくれ、退院を誰よりも喜んでくれた家族。
これ以上心配をかけたくないという思いが先に立ち、口にできない弱音。
かといって仕事仲間に、仕事の不安を伝えたくない。
でも、彼女には抱えている思いも不安もありのまま打ち明けられました。

ひとしきり私の話を聞くと、彼女は「無理しなくていいんじゃない? 」と。
もう少し整理して、やらないという選択肢も考えたらと言ってくれました。
彼女のその一言で、何だかほっとしてしまい、
誰かにそう言ってほしかったんだ、そう気づきました。

その後もしばらく話をして、一緒に外でお昼を食べました。
実は少し食べられなくなりつつあったのですが、この日をきっかけに
またたくさん食べられるように。
知らず知らずのうちに、肩に力が入りすぎていたのでしょう。
心の中の「ねばならない」が「できるに越したことはない」にかわって、
気持ちに余裕もできて、翌週から予定通りにプロジェクトを進め、
無事に完了することができました。

     ◇ ◇ ◇

家族や仕事仲間は、距離が近すぎて言えないこともあります。
不安を漏らすと、迷惑や心配をかけてしまうと躊躇します。
そんな時に、仕事を離れた友達がいてくれることは大事です。

9月の講演では、自分の体験も最後にお話しして、
うれしいフィードバックもいただきました。

金沢に戻る電車で、たくさんの方が来てくださったよと彼女に報告すると、
どうだったかなと思ってた、よかったねと返事をくれました。

正直に弱音を吐けたからこそ、強くなれた。
大切な友人に心から感謝しています。

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