Interview: ESG投資と日本企業への期待

2017 / 5 / 5 | 執筆者:EcoNetworks

“日本におけるESG取り組みが、さらに抜本的な変化を遂げることに期待しています。”

お話:Anthony Tursich氏
Trillium Asset Management
Portfolio 21 Global Equity Fundチーム

聞き手:野澤 健(ENW代表)

はじめに

2006年に国連責任投資原則(UNPRI)が発表されてESGに配慮した責任投資が拡大するに伴い、機関投資家による投資先企業との対話のあり方に関心が高まっています。特に欧米では、機関投資家が「目的を持った対話」(エンゲージメント)を投資先企業と行うことにより、その事業環境などについて相互理解を深め、当該企業の持続的成長を促す、という動きが活発化しています。

日本でも、金融庁が2014年2月に「責任ある機関投資家」の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)を公表して以降、責任投資に関する動きが加速しました。

こうした状況を背景に、2017年3月、Trillium Asset Management社のPortfolio21 Global Equity Fundチームが、日本企業への訪問を行うため来日しました。Trillium Asset Management社は、米国で1982年に設立して以来、環境、社会、ガバナンスを重視するESG投資に特化した運用を行ってきた投資機関です。

エコネットワークスは、企業とのコーディネート等をサポートしました。滞在中のスケジュールの合間を縫って、ESG投資と日本企業の在り方について、Anthony Tursich氏にお話を伺いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

来日したチームのみなさんと一緒に
(写真左から)Anthony Tursich氏、野澤、Emily Lethenstrom氏、James Madden氏

インタビュー

Portfolio 21 Global Equity Fundについて教えて下さい。

Portfolio 21 Global Equity Fundは、4億3,000万米ドル(約481億円)規模のファンドで、約100社のグローバル企業に投資しています。そのうち、総資産の約6%が、日本企業向けの投資です。私たちのチームはTrillium Asset Management社(以下、Trillium社)に属していますが、独自の戦略のもと、米国のポートランドを拠点に活動しています。
優れた財務パフォーマンスに加え、ESGパフォーマンスについても基準を満たす企業であるかどうかが、私たちの投資基準となっています。化石燃料、原子力、タバコ、兵器などを商品として直接取り扱う企業は投資対象から除外しています。

私たちは年に2、3回、世界中の企業を訪問し、インタビューを行います。目的は、企業に関する最新の情報を把握し、私たちの戦略が間違った方向に進んでいないか確認すること。今回の来日も、その一環です。さまざまな業界の企業、計14社を1週間で訪ねるスケジュールはなかなか大変でしたが、とても有意義な訪問となりました。

ESGをどのように捉え、投資行動に取り入れていますか。

ESGのなかでは、「E(環境)」の側面を最も重視しています。「S(社会)」と「G(ガバナンス)」は同程度の重要度でしょうか。環境の側面を重要視するのは、環境影響により、ビジネスと社会が多大な影響を被ると考えているからです。ビジネスを通じて、マイナスの影響を緩和し、プラスの影響を最大化することは、今や企業にとって不可避のテーマです。

Trillium社は企業に対し、株式を保有するだけでなく、その企業の変化に向けてしっかりとエンゲージする、という特長があります。私たちのチームは、優れたESGパフォーマンスと質の高い成長を兼ね備えた企業を探しています。一旦、投資を決定したら、長期的にその株式を保有し、投資先企業の持続的な成長を見守ります。

投資基準:
http://www.trilliuminvest.com/wp-content/uploads/2016/09/ESG-Criteria-09.16.pdf

企業のESGパフォーマンスの評価方法について教えて下さい。

MSCI All Country World Index やMSCI ESG レポートをベンチマークしています。 さらに、CDPのレポートや、各企業のアニュアルレポート、サステナビリティレポートなどから、関連データを収集し、独自の基準に基づいて評価を行っています。

しかし日本企業については、言語の壁もあることから、収集した情報が必ずしも正確でない、最新の情報に更新されていないといったケースがあります。今回訪問した企業でもそうでした。その企業が抱えていた問題に対し、すでに対策が講じられていたにも関わらず、MSCIのレポートにはそれが反映されていませんでした。なぜなら、その対策に関する情報開示は日本語のみで、英語では行われていなかったからです。

こうした観点からも、直接会って対話をすることは、私たちだけでなく、企業側にとっても重要だと言えます。対話を通じて、投資家側は正確な情報を把握して顧客と共有することができ、企業側はどの情報を英語で開示すべきかの判断基準を得ることができます。

日本企業の状況についてどのようにお考えですか。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則(PRI)にコミットしたことにより、日本のESG投資環境に大きな変化がもたらされました。今後は、さらに抜本的な変化を遂げることに期待しています。

日本の企業には、株主との対話に対し、もっとオープンになることを期待します。100%確実なこと以外は言いにくいといった日本の文化や考え方については理解していますが、私たちは必ずしも完璧な回答を求めているわけではありません。例えば、企業の戦略、問題点、それらを解決するための障壁、将来への展望など、企業についてより深く理解したいと考えているのです。対話は、相互理解と変化のための一つのプロセスです。今後ますます多くの日本企業とエンゲージできることを楽しみにしています。

最後になりましたが、今回私たちとミーティングの機会を設けてくださった企業の方々に感謝します。ありがとうございました!

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