二口芳彗子 インタビュー (その4)

2011 / 8 / 12 | 執筆者:EcoNetworks

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硲:働き方に関して、一番よく考えることはどういうことですか? 
また、働き方に関する課題は何ですか?

二口:ENW流にある、「短い時間で濃く働く」ことです。仕事の他にも
やりたいことがたくさんありますし、家事などやらなくてはいけないこと
もたくさんあります。その中で、仕事に充てることのできる時間を
割り出して、今日これだけの時間が使えて、これだけのことを
終わらせなくてはいけない、というときに、いかに効率よく進めるかを
考えます。「効率」というのはあまりいい言葉ではないのかもしれませんが、
やっぱり大事です。私の仕事は、投げて待って受け取って作業して、
というパターン。原稿が来て、それを翻訳者さんに送って、それを
受け取るまでに待っている時間があって、翻訳を受け取るタイミングが
あって、それをチェックして納品するタイミングがあって、というように、
いわゆるボールのパスです。この間にいかに多くのボールを手に出来るか、
自分の手が空かないようにということを考えます。女性は家事でそういう
やり方をある程度しなければならないので、仕事でも同じことができると
思います。この10分、15分で何ができる、ということを考えて、
スパンと仕事を入れて、次に行く、というように。人にもよると
思いますが。

硲:仕事の合間にTwitterでつぶやかれているのをよく見ますが、
それもリズムをつくる工夫でしょうか?

二口:SNSは向いている人とそうでない人がいると感じています。
私自身は、何か一つ区切りを付けたり、煮詰まったたりしたときに、
Twitterのタイムラインを眺めて、戻ってくると何かが見えるということ
があります。そういう意味で上手く利用させてもらっています。
性格的に、私は視野がすごく狭いと自覚しています。そのせいで、
思考が固まりがちです。そうなっている自分に気づいたら、いったんその
問題から目をそらす、というのは、私にとって大事なプロセスなのです。
Twitterでいろいろなニュースや発言を見て、ふっと戻ってくると、
「そうか、こういうやり方もあるな」と思えることが時々あります。

硲:今後、個人として、プロフェッショナルとして、社会の一員として、
どのような未来を描かれていますか?

二口:3.11を境に、「責任」ということをますます考えるように
なりました。地震や津波は抗いようのないものですが、
原発事故に関しては、大人全員に責任があると思っています。
日本とか海外とかいう枠をとっぱらって、私たちの世代がなんとか
しなくてはいけなかった問題です。私は「はだしのゲン」を
ボランティアで英訳するチームの一員として、原爆によって苦しめられた
人の話を聞く機会がたくさんありました。自分の活動を通して、
原子力に対して「NO」と言い続けてきたつもりだったのです。しかし、
全然できていなかったのだと、3月11日の後、すごく落ち込みました。
だけど、そんなことを言っていても何も生まれてこないので、これから
どうしたらいいのかを考えて、行動していきたいと思います。

プロとしては、自分の領域は「翻訳」だと思っていましたが、最近は
「コミュニケーション」という言葉を意識するようになりました。
「伝える」、「聴き取る」、ことは大事で、国内外問わず、そのお手伝いが
できたらと思っています。

それから、エコネットワークスを、家庭の理由で仕事に割ける時間が
限られている女性が無理のないレベルで働ける場にしていきたいと
思っています。女性は結婚や出産や介護など、家族の出来事の中で、
どうしても仕事に割ける時間が限られます。「どうせできるわけないよ」と
仕事をあきらめている優秀な女性が多いのでは、と思っていて、
「もしやりたいのなら、やってみない?」と歓迎できる場所を作りたいと。
そしていずれは、例えば障害を持っておられる方も参加できて、
「社会の一員としてこういう仕事をしている」と胸を張っていただける
ような場にできればいいなと思っています。

個人としては、今年から始めたランニングが、最近とても楽しいですね。
今までデスクワークばかりだったので、家事や自転車での移動以外に
運動をしていなくて、「何とかしたいな」と思っていたときに、Twitterで
ランナーさんたちと出会い、いつの間にか自分も走り出していました。
これまで私は、歳を重ねるほど、自分を試す機会が減っていて、何でも
わりとすんなりできてしまうし、できることしか選ばなくなって
しまいがちでした。ちっとも変わっていない自分が気になっていたときに、
ランニングチームのみんなが自分をぎりぎりまで追い込んで、
記録を達成したり、初めてのハーフマラソンを達成したり、
と昨日までできなかったことを達成する、その姿がとても感動的でした。
「そういう経験をここのところしていないな」と思って、
私も走り始めました。最初は歩いてばかりで落ち込んでも、その次は
不思議なことに前よりも楽に長い距離を走れるようになるんです。
自分の中で何かが変わっていくのを、身を以て体験できるので、
すごく面白いと思っています。ランニングって、自分を作りかえている
ような気がするのです。

私の家は犀川(さいがわ)のそばにあって、いつも河原で練習しています。
きれいな緑地があって、季節ごとの花を眺めながら、走るのは楽しいです。
最近は水面でつばめが一生懸命に飛ぶ練習をしていて、かわいらしい
その姿に励まされています。

それから、赤ちゃんを連れている母親や、脚のリハビリをされている方、
ゲートボールをしている元気なお年寄りなど、河原ではいろいろな方の
人生を垣間見ることができます。練習は毎回1時間くらい、週2、3回
走っています。

9月~11月まで、毎月一回10キロのレースに出ようと思っています。
最後の11月のレースでベストが出るように持っていくのが、今の目標
です。

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