Interview: インドネシアのCSRの今

2018 / 1 / 10 | 執筆者:EcoNetworks


”人々の考え方を変えるためには、CSRの正しい理解を広めることが不可欠です。”

お話:Maria R Nindita Radyati氏
Trisakti 大学 CECT*エグゼクティブ・ディレクター、MM-CSR**ファウンディング・ディレクター
聞き手:野澤健

*: Center for entrepreneurship, Change, and Third Sector (CECT)
**: Master Degree program with specialisation in Corporate Social Responsibility

はじめに

インドネシアは、多数の島からなり、若年人口が多く、経済成長が著しい国。豊かな自然が急激な減少に見舞われている国。なかでも私の関心は、世界初といわれる、社会貢献への支出を企業に義務付けた法律がどのような成果を生んでいるのかという点でした。
そこでジャカルタ滞在の機会に、CSRを専門に学ぶ大学院で指導にあたられているマリア教授を訪ね、現地の状況について話を伺いました。

インタビュー

Q1. インドネシアにおけるCSRの状況について教えてください。

インドネシアには、国営企業と私営企業それぞれに対し、CSRを要求する法律があります(ただし法律では「CSR」という表現が使われているわけではありません)。

国営企業は純利益の4%を社会貢献に充てるよう、2003年成立のthe Law for State Owned Companies No.19により定められています。予算の半分はパートナーシップ・プログラムとして中小企業に低金利で提供し、残り半分は環境プログラムとしてごみ収集や植樹、健康や教育に関する活動に割り当てるよう定めています。

私営企業に対しては、2007年のthe Law for Private Limited Companies No. 40という法律があります。対象は天然資源の採掘に関わる企業となっていますが、条文には「自然資源に影響を与えるすべての企業」という文言があります。文字通りに解釈すれば、自然資源と無関係な企業はないため、あらゆる企業を対象にしている、と読み取るこができるわけです。法律では社会・環境活動を行い、そのために予算を割くことを求めています。さらに役員会に対してそうした活動を企画すること、年間報告に含めることが、その後にできた別の規定で求められるようになりました。

Q2. こうした法律は社会にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?

注目したいのは、先に挙げた規定は組織の外部に対する責任にのみ、焦点を当てているという点です。本来CSRでは、組織の内部に対する側面も重要なはずですが、すでに手遅れです。特に国営企業に対する法律によって、CSRとは、純利益の一部を拠出すること、という理解が広まってしまいました。CSRイコール、寄付や慈善事業、地域貢献のプロジェクトを行うことになってしまったのです。

もちろん良い面も存在します。国営企業は地域に多くの資金を供給しています。しかし多くのプロジェクトで、マネジメントはうまくいっていらず、リソースは有効活用されていません。さらに悪いことには、こうして供給される資金は人々に依存心を生み出します。コミュニティはCSRに依存するようになってしまうのです。さらに政府も、CSRを新たな資金源として考えるようになってしまいました。拠出する資金比率が異なるだけの同じような条例が、各地の地方政府でも制定されています。

Q3. 現状を変えるためにはどうしたらいいのでしょう?

人々の考え方を変えるためには、CSRの正しい理解を広めることが不可欠です。これがTrisakti大学にCSR専門の大学院を立ち上げた理由のひとつです。

学生は主に企業のマネジメント層です。講師陣には、CSR、リスク管理、ソーシャルビジネスの専門家を揃えました。多様なフィールドの知識や人々を1カ所に集めることは、インパクトを生み出していく上で非常に重要です。分野が異なると使用する言葉や活動の現場が異なるので、日常では出会う機会がありません。しかしここでは、お互いにつながり、協働する方法を学ぶことができるのです。

Q4. 日本企業の取り組みをどう見ていますか?

日本企業は優れた社内向けのCSRを実践しており、ほぼ完璧とすら言えます。しかし、社外に向けた部分では、まだまだ課題があります。特にコミュニティ活動に対する意識が低いと感じます。リスク管理の観点からも、考え方を変えて本気で取り組んでいくべきではないでしょうか。

たとえば工場を建てるケースを考えてみましょう。工場建設のために土地を買い取ったとすれば、それはすなわち地元住民の生活の糧を奪ってしまうことを意味します。そんな時、住民の方に単に補償金を渡すことは解決策とはなりません。土地は食糧を増やしてくれますが、お金は増えていきません。地域社会の人々は、会社に雇用を求め続け、この要求が満たされなくなると、彼らは抗議の声を上げ始めるでしょう。

こうしたケースでは、コミュニティが持続的に発展していけるようなプログラムを行い、地域社会の活力を育てていくことが何より大切です。そしてプログラムを成功させるためには、インドネシアにおいては地域ごとの文脈に注意する必要があります。なぜなら、私たちの国は民族や文化が本当に多様だからです。

 


勉強になるインプットと美味しいナシゴレンをありがとうございました!

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